おひとりさま相続|身寄りのない方の財産はどうなる?生前にできる対策
「自分には身寄りがないけれど、亡くなった後の財産や家はどうなるのだろう?」
「頼れる家族がいない場合、葬儀や入院時の手続きは誰にお願いすればいいのだろう?」
配偶者や子供がおらず、親や兄弟姉妹もすでに亡くなっている、あるいはお付き合いがない「おひとりさま」が増えています。
自分に万が一のことがあった際、遺された財産のゆくえや死後の手続きに強い不安を抱えている方は少なくありません。
本記事では、身寄りのない方の財産が辿る法的プロセスから、生前に準備しておくべき「4つの安心対策」まで詳しく解説します。
身寄りのない「おひとりさま」の財産は最終的にどうなる?
法律上の相続人(配偶者・子・親・兄弟姉妹およびその代襲相続人である甥姪)が誰一人としていない場合、亡くなった方の財産は自動的に誰かのものになるわけではありません。
国の定めた法的手続きを経て処理が進められます。
法定相続人が一人もいない場合の手続き(相続財産清算人の選任)
おひとりさまが亡くなり、法定相続人が存在しない(または全員が相続放棄した)場合、利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた人、特別縁故者など)や検察官の申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任します。
相続財産清算人は、故人の口座や不動産を調査・管理し、未払いの医療費や公共料金、借金などの清算作業を行います。
1. 特別縁故者(とくべつえんこしゃ)への財産分与
債務の清算が終わった後、故人と深いゆかりのあった人がいる場合、家庭裁判所に申立てを行うことで「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」として認められる可能性があります。
具体的には「内縁の配偶者」「長年にわたり療養看護に努めた人」「生前に密接な生活関係があった友人」などが該当します。
裁判所が特別縁故者と認めれば、清算後に残った財産の一部または全部が分与されます。
2. 誰にも引き継がれなかった財産は「国庫帰属(国のもの)」へ
相続人が現れず、債務などの清算や特別縁故者への財産分与を行った後にも相続財産が残っている場合、その残りの財産は原則として国庫に帰属します。
特定の友人や団体に財産を遺したいと考えていても、遺言などで意思を残していなければ、その人や団体が当然に財産を受け取れるわけではありません。
財産だけじゃない!おひとりさまが直面する「3つの不安・壁」
おひとりさまの問題は、死亡後の財産のゆくえだけではありません。
生前の体調変化から没直後の手続きまで、直面しやすい3つの大きな壁が存在します。
1. 病院への入院や施設入所時の「身元保証」の壁
病院への入院や高齢者施設への入居に際して、緊急連絡先や費用の支払い、退院・退所時の対応などを担う「身元保証人」や「身元引受人」などを求められることがあります。
親族など頼れる人がいない場合、こうした手続きを誰に依頼するかが課題になることがあります。
2. 自分の死後の葬儀・供養・遺品整理(死後事務)の不安
自分が亡くなった後、誰が通夜や告別式を行い、火葬や納骨の手配をしてくれるのかという問題です。
また、住んでいた賃貸住宅の退去手続きや荷物の処分(遺品整理)、公共料金の解約、スマホ等のデジタル遺品の消去など、多岐にわたる「死後事務」を行ってくれる人がいないという切実な不安が生じます。
3. 自分の意志とは違う形での「財産の国庫帰属」
前述の通り、事前の対策がない限り、財産は国庫帰属となります。
「生涯をかけて築いた財産を自治体やNPOに寄付したい」「親しい友人に譲りたい」という明確な想いがあっても、法的な書類を残していなければ、その意思が汲み取られることはありません。
おひとりさまが生前に進めるべき「4つの安心対策」
こうした不安や壁を解消し、自分らしい最期を迎えるために、おひとりさまが生前に行っておくべき「4つの法的スキーム」を紹介します。
1. 「遺言書」を作成して財産の譲り先(遺贈)を指定する
自分の財産を誰に引き継ぎたいかをあらかじめ決めておくために、最も有効な手段が「遺言書(特に公正証書遺言)」の作成です。
遺言書の中で「特定のお世話になった知人に財産を与える」または「応援したい団体や自治体に寄付する(遺贈)」旨を明記しておけば、財産の国庫帰属を防ぎ、自分の希望通りに財産を届けることができます。
2. 「死後事務委任契約」で葬儀や遺品整理の代行を依頼する
死後事務委任契約(しごじむいいんけいやく)とは、自分が亡くなった後のさまざまな手続き(医療費の清算、葬儀・納骨の手配、部屋の引き払いや遺品整理など)を、生前のうちに信頼できる第三者(司法書士、行政書士、弁護士、専門法人など)へ委任しておく契約です。
この契約を結んでおくことで、親族がいなくても自分の希望通りの葬儀や供養を実行してもらうことができます。
3. 医療・施設手続きをスムーズにする「身元保証(身元引受)契約」
親族に代わって、病院への入院時や高齢者施設への入居時に身元保証人となってくれる専門機関や法人の「身元保証サービス」を活用する方法です。
万が一の際の緊急連絡先としての対応や、搬送・駆けつけ、死亡時の遺体引き取りまでを含めて契約しておくことで、生前の生活の安心を確保できます。
4. 認知症など判断力低下に備える「任意後見制度」
将来、高齢になって認知症などで判断能力が低下した際に備え、あらかじめ自分で選んだ後見人(任意後見人)に、財産管理や介護サービス・生活面の手続きを代行してもらう契約です。
認知症になった後でも自分の意志に基づいた生活支援を受けられるようになります。
【実践】おひとりさま生前対策の進め方とロードマップ
何から手をつければよいか分からない方は、以下のステップで準備を進めていくのがおすすめです。
ステップ1:自分の財産と人間関係の整理(エンディングノートの活用)
まずは現在所有している預貯金、不動産、有価証券などの資産状況や、万が一の際に連絡してほしい知人の連絡先などを「エンディングノート」に書き出してみましょう。
現状を可視化することで、自分に必要な対策(遺言書の要否や死後事務の範囲など)が見えてきます。
ステップ2:専門家(司法書士・弁護士・専門法人など)への相談
おひとりさまの生前対策は、遺言書や各種契約書の作成など、法的に厳格な手続きが求められます。
「身元保証」「任意後見」「死後事務委任」「遺言」をワンストップでトータルサポートしてくれる司法書士や弁護士、信頼できる一般社団法人などの専門家に相談しましょう。
ステップ3:公正証書での契約作成と定期的な見直し
遺言書や死後事務委任契約、任意後見契約などは、改ざんや無効のリスクを防ぐため、公証役場で「公正証書」として作成するのが実務上の鉄則です。
契約作成後も、自分の気持ちや健康状態の変化に応じて、定期的に内容を見直していくと安心です。
まとめ:おひとりさまこそ「生前対策」で自分らしい終活を
身寄りのないおひとりさまが何の対策もせずに亡くなった場合、財産は最終的に国庫帰属となり、死後の手続きや葬儀においても周囲に負担がかかるリスクがあります。
自分の意思で財産の行き先を決め、最期まで自分らしく安心して暮らすためには、遺言書の作成、死後事務委任契約、身元保証、任意後見といった生前対策を組み合わせることが極めて有効です。
将来への不安を解消するためにも、まずはエンディングノートの作成や、相続・終活に詳しい専門家への相談から一歩を踏み出してみましょう。
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