相続手続きは専門家に相談!司法書士・弁護士・税理士の業務範囲を徹底解説
相続手続きには、不動産の名義変更(相続登記)、遺産分割、相続税の申告など、多岐にわたる業務が発生します。しかし、必要な書類や手続きのルールは複雑であり、専門的な知識が求められるため、自分だけで対応するのは困難です。
特に、2024年4月から相続登記が義務化され、不動産が含まれる場合は、司法書士への依頼するケースが増えています。さらに、相続財産の種類や相続人の状況によっては、弁護士や税理士といった他の専門家のサポートが必要になることもあります。
この記事では、相続手続きに関わる司法書士・弁護士・税理士の業務範囲を詳しく解説し、どの専門家に何を依頼すべきかを分かりやすく説明します。
相続手続きに関わる主な専門家
相続手続きは、財産の種類や状況によって関わる専門家が異なります。相続財産に不動産が含まれている場合は「司法書士」、相続人同士のトラブルが発生している場合は「弁護士」、相続税の申告が必要な場合は「税理士」など、それぞれの役割があります。
どの専門家に何を依頼すべきかを理解することが、相続手続きをスムーズに進めるポイントです。
次の項からは、それぞれの専門家が担う業務範囲について詳しく解説します。
司法書士の業務範囲(相続登記・書類作成の専門家)
司法書士は、相続に関する書類作成や登記業務の専門家であり、不動産の相続が発生した場合は必ず関わることになります。
以下では、司法書士の業務範囲について、詳しく解説します。
司法書士が対応できる業務
司法書士が代行できる相続手続きは、主に以下の4つです。
①相続登記(不動産の名義変更)
相続財産の中に不動産が含まれている場合、不動産の名義を変更する「相続登記」を行います。
相続登記は2024年4月1日から義務化されており、相続のスタートから3年以内に必ず申請する必要があります。また、相続登記は弁護士や税理士にはできない手続きのため、自分で行えない場合は必ず司法書士を利用しなければなりません。
②遺産分割協議書の作成サポート
遺産分割協議書の作成は、専門的な知識がないとなかなかできないものです。
法的に有効な協議書作成を支援するためには、司法書士の力を借りるのもいいでしょう。ただし、相続財産に不動産が含まれない場合は、司法書士は協議書の作成に携わることができません。そのためこうしたケースでは、行政書士に依頼するのもおすすめです。
③相続人の調査・財産の調査
法定相続人がどの範囲におよぶか、また、相続財産がどれくらいあるかの調査も、司法書士に依頼することができます。
④遺言書の作成や遺言執行のサポート
司法書士には、法的効力を持つ遺言書の作成サポートも依頼できます。さらに、遺言執行者への任命もできるため、遺言内容に忠実な相続手続きが可能です。
司法書士に依頼すべきケース
司法書士に依頼すべきケースは、以下2点の条件に当てはまる場合です。
- 不動産が遺産に含まれている
- 遺産分割協議においてトラブルが発生しておらず、書類だけを作成してほしい
反対に、既に相続トラブルが発生している場合は、最初から弁護士に依頼しておくのがおすすめです。
弁護士の業務範囲(相続トラブル・争いの解決)
弁護士は、相続トラブルの解決や交渉を専門とする法律のプロです。相続人同士で意見がまとまらない場合や、遺産の分配をめぐる争いが発生した場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。
以下では、弁護士の業務範囲について、詳しく解説します。
弁護士が対応できる業務
弁護士が代行できる相続手続きは、主に以下の4つです。
①遺産分割協議の代理・交渉
遺産分割協議において、遺言の有効性などを巡って相続人間の話し合いがまとまらないケースはよく見られます。そんな時、弁護士に依頼することで法的な観点からアドバイスしてもらえます。
②遺留分侵害額請求の対応
「遺留分」とは、一定の権利を持つ相続人(遺留分権利者)について、被相続人の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことです。何らかの理由で遺留分を侵害された場合、弁護士に依頼することで請求することができます。
また、反対に請求をされた側においても、弁護士に依頼することで代理人となり、手続きを進めてもらうことができます。
③相続放棄の手続き
相続放棄は書類の用意や裁判所での手続きなどが発生するため、全て任せたい場合は弁護士に依頼するのがおすすめです。債権者への対応などもトータルに対応できるため、スムーズな相続放棄が可能となります。
④訴訟の対応
遺産分割や遺産の使い込みなどのトラブルが発生した場合、法律の専門家である弁護士が間に入ることで、スムーズにトラブルが解決できます。また、実際に裁判に発展した場合も弁護士を立てることで、代理人として対応してもらうことができます。
弁護士に依頼すべきケース
弁護士に依頼すべきケースは、以下いずれかの条件に当てはまる場合です。
- 遺産分割協議がまとまらない
- 遺留分を侵害された、または請求された
- 相続に関する裁判になりそうな場合
- 相続人と連絡が取れない場合
法的なトラブルが起こった場合や、トラブルが発生しそうな場合は、弁護士に相談すると良いでしょう。
税理士の業務範囲(相続税の申告・節税対策)
税理士は、相続税の申告や税務対策の専門家です。相続税の申告が必要な場合は、税理士への相談を検討しましょう。
以下では、税理士の業務範囲について、詳しく解説します。
税理士が対応できる業務
税理士が代行できる相続手続きは、主に以下の4つです。
①相続税の計算・申告
基礎控除額を超える相続が発生した場合、相続税の計算や申告代行を依頼することができます。
②財産評価・税務相談
不動産などの価値を評価するためには、さまざまな資料を集めたり、複雑な計算をしたりする必要があります。税理士に依頼することで、適切な評価額を算定してもらえます。
③節税対策のアドバイス
税務に関する相談は、税理士しか対応することができません。そのため、節税対策を専門家に任せたい場合、税理士に相談しましょう。また、相続前であっても生前贈与などの相談ができるため、早めに利用するのもおすすめです。
④相続税還付の手続き
土地などの評価額が見直されることで、納め過ぎていた相続税が返ってくる可能性があります。こうした手続きを税理士に依頼することで、相続税が還付される可能性があります。
税理士に依頼すべきケース
税理士に依頼すべきケースは、以下の条件に当てはまる場合です。
- 相続税の申告が必要な場合
- 節税対策を考えたい
- 相続税の税務調査が入る場合
相続額が基礎控除を超え、相続税が発生する場合は税理士へ相談するのがおすすめです。反対に、相続税が発生しない場合は税理士ではなく、司法書士や弁護士などを利用すると良いでしょう。
まとめ
相続手続きをスムーズに進めるためには、司法書士・弁護士・税理士の役割を理解し、適切な専門家を選ぶことが重要です。
特に、相続登記の義務化により、司法書士の重要性は今後ますます高まります。相続手続きを円滑に進めるために、まずは司法書士に相談し、必要に応じて弁護士や税理士のサポートを受けるのが最も効率的です。