遺言書の正しい保管方法とは?安全に保管するポイントを解説

遺言書は、あなたの意思を確実に伝え、財産や権利を適切に分配するための重要な文書です。しかし、遺言書が適切に保管されていないと、紛失や改ざんのリスクが生じ、最悪の場合、遺言そのものが無効となる可能性もあります。そのため、できるだけ公正な第三者に保管してもらうことが大切です。

本記事では、遺言書を安全かつ確実に保管するための方法やポイントをわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてみてください。

遺言書を保管する重要性とは?

遺言書は、自分の財産を適切に分割するために欠かせないものです。

しかし、遺言書がいくら法的に効力を持ち、内容に満足できるものであっても、適切に保管されていなければ意味がありません。

特に自宅での保管では、紛失や火災などでの消失のリスクがあるほか、家族や関係者が遺言書を見つけられず、故人の意思が反映されない相続となってしまう可能性があります。

安全かつ確実に保管できる方法を選ぶことで、遺言の内容が法的に確保され、残された家族の混乱を防ぐことができます。

遺言書の保管方法3選

遺言書の保管方法は、大まかに分けて以下の3つがあります。

それぞれにメリット・デメリットがありますので、詳しくご紹介します。

①自宅での保管

自宅での保管は、最も手軽に行える方法で、一般的に費用もかからないのがメリットです。

一方、自宅での保管は遺言書が紛失したり、他人に勝手にみられた理、災害や火災などで破損してしまうリスクがあります。

また、遺言書の存在が誰にも知られていない状態だと、遺言書が見つからないままになることもあり得ます。

自宅で保管する場合は、信頼できる人に保管場所を伝えておいたり、耐火金庫の使用を検討するなどの対策も必要です。

②法務局での遺言書保管制度を利用する

2020年7月10日から始まったのが、法務局に遺言書を預けることができる「自筆証書遺言保管制度」です。

封がされていない、法務省令で定める様式に沿って作成された自筆証書遺言であれば、非常に安いコストで預かってもらうことができます。

申請の流れは、以下の通りです。

預けられる保管場所を調べる保管申請書を作成する住民票の写しと、マイナンバーカードや運転免許証などの身分証明書を用意する保管の申請を予約する遺言書保管所に来朝し、保管申請をする保管証を受け取り、終了

遺言者の死後、遺族や相続人が請求することで預けた遺言書を取り出すことができます。

また、遺言書保管制度では、法務局の窓口で遺言書の形式について、間違いがあれば指摘してもらうことができるため、安心感があります。

③公証役場での保管(公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が作成し、公証役場で保管されるため、最も信頼性の高い方法とされています。

遺言書の形式などに精通した公証人が作成することで、遺言書の不備を防ぐことができ、第三者機関で保管することで紛失などのリスクも避けられます。一定の費用はかかってしまうものの、安全性を重視したい方にはピッタリの保管方法です。

申請の流れは、以下の通りです。

①公証役場へ電話またはメールで予約を取り、公証人への遺言の相談または遺言作成を依頼する
②相談内容のメモや必要資料を提出する
③遺言公正証書案の作成・修正をする
④遺言公正証書の作成日時を決める
⑤遺言当日までに証人を2名用意する
⑥当日は、公証人へ遺言の内容を口述し、署名捺印をする

作成時に遺言執行者を指定している場合、遺言者が死亡すると相続人に通知を行う義務があるため、より確実に遺言内容を執行してもらえることとなります。

公正証書遺言は弁護士などの専門家のサポートを受けることもできますが、公証人へ直接依頼することも可能です。

遺言書の保管にかかる費用はどれくらい?

遺言書の保管にかかる費用は、保存方法によって異なります。

以下では、保存方法別の費用の詳細についてご紹介します。

①自宅での保管は無料

自宅での保管は、一般的にコストがかかりません。

ただし、「遺言書の内容を事前に知られたくない」という方が金庫などを購入する場合は、その分の料金がかかります。

②法務局での保管は3900円

法務局に保管の申請をする際にかかる費用は、3900円です。

遺言者が負担する費用は原則、この3900円のみですが、相続人や遺族が閲覧を請求する場合は、別途1400円~1700円の手数料がかかります。

また、遺言書の内容を変更する際にも、追加の手数料はかからないため、非常に手軽な額で保管してもらえることには間違いありません。

③公証役場での保管は数万円~数十万円

公正証書遺言は公証役場で保管されますが、保管料自体は無料となっています。しかし、公正証書遺言を作成する際には、手数料がかかります。

この手数料の金額は「公証人手数料令」という政令で法定されており、財産の価額によって決定されます。

具体的には、以下の通りです。

目的の価額手数料
100万円以下5000円
100万円を超え200万円以下7000円
200万円を超え500万円以下      1万1000円
500万円を超え1000万円以下1万7000円
1000万円を超え3000万円以下2万3000円
3000万円を超え5000万円以下2万9000円
5000万円を超え1億円以下4万3000円  
1億円を超え3億円以下4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

財産の金額にもよりますが、安くても数万円、高いと数十万円かかる見込みです。

よくある質問

以下では、遺言書の保管に関するよくある質問をまとめています。

ぜひ参考にしてみてください。

遺言書はどのタイミングで作成・保管すべき?

遺言書は、思い立った時が作成のタイミングです。特に、結婚や出産、離婚などのライフイベントを迎えた際や、財産状況が大きく変化した時に作成・更新を検討すると良いでしょう。

また、遺言書を作成したら、同時に安全な保管場所を選びましょう。年齢に関係なく、早めに準備をしておくことで、もしもの時のトラブルを防ぐことができます。

すでに遺産分割を行った後に遺言書が見つかったら?

遺産分割後に遺言書が見つかった場合、その遺言書が有効であれば、原則として遺言の内容が優先されます。そのため、再度遺産分割が行われる可能性があります。このような事態を避けるためにも、遺言書の保管場所は、家族などに対して明確にしておくことが重要です。

遺言書の保管に関する注意点

遺言書の保管方法はさまざまなものがあり、それぞれメリットやデメリットを考慮しながら選ぶことが大切です。

以下では、遺言書の保管に関する3つの注意点をご紹介します。

信頼性のある場所で保管する

遺言書の保管場所を選ぶ際には、何よりも「信頼性」を重視して選ぶことが大切です。

「信頼できる人だから」と、友人や知人といった知り合いに遺言書を預けるのは、その人が先に亡くなるリスクや、確実に執行してくれるかどうかの信頼性の面からお勧めはできません。

できるだけ公的機関などを利用し、安全に保管できる場所を選びましょう。

保管場所や内容を家族に伝えておく

遺言書の存在や保管場所を信頼できる家族に知らせておくことは、非常に大切です。

もし遺言書が見つからなかったり、保管場所が分からない場合、遺言が無効トンる恐れがあります。

法務局や公証役場で保管している場合でも、家族や相続人にその旨を伝えておくことで、スムーズに手続きを進められるでしょう。

遺言書は複数保管しない

遺言書を複数作成して保管することは、基本的に推奨されません。

複数の遺言書が存在すると、内容が異なる場合に法的なトラブルを招く可能性があります。一般的には、最新の日付の遺言書が有効となりますが、相続人間で混乱を引き起こす恐れがあるため、必要があれば古い遺言書を破棄し、最新のものだけを保管するようにしましょう。

まとめ

遺言を確実に執行するためには、適切に保管することが大切です。

信頼性の高い保管方法を選び、定期的に内容を見直すことで、家族や相続人が混乱することなくスムーズに遺産分割を進めることができるでしょう。

また、遺言書の作成や保管について不安な点がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家のサポートを受けるのもオススメです。

遺言書作成の第一歩として、ぜひ一度相談してみてください。