公正証書遺言と自筆証書遺言の違いとは?メリット・デメリットを徹底比較!
遺言とは、亡くなった方が生前に自分の遺産相続についての意思を示すため、非常に重要なツールです。遺言書がないことで相続人同士のトラブルが発生するケースは珍しくないため、こうしたトラブルを回避するためにも、早めの遺言書作成が大切となります。
遺言書にはいくつか種類がありますが、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」 が最もよく利用される形式です。
本記事では、それぞれの遺言書の特徴や違いを解説していきます。各遺言書のメリット・デメリットを理解し、自分に合った遺言書を選びましょう。
公正証書遺言と自筆証書遺言とは?基本を解説
遺言書の中でも実務上、よく用いられるのが「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」です。
どちらも有効な遺言書ですが、作成方法や手続きに大きな違いがあります。まずは、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言は、公証役場で公証人の立ち会いのもと作成される遺言書です。
法律の専門家である公証人が作成するため、「法的に無効になるリスクがほぼない」のが大きな特徴です。
また、作成後は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクもなく、「遺言書が見つからない」ということもありません。また、相続時には家庭裁判所の「検認」が不要なため、すぐに相続手続きができるという特徴があります。
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言は、自分一人で作成できる最も手軽な遺言書です。紙とペン、印鑑があれば誰にでもすぐに作成できるのが特徴です。
作成に際して費用がかからず、公証人や証人を用意する必要がなく、誰にも内緒で作成できる遺言書と言えるでしょう。
ただし、法的な不備があると無効になる可能性になるリスクがある遺言書でもあります。
公正証書遺言と自筆証書遺言の違いを比較(メリット・デメリット)
「自分の場合は、どちらの遺言書を作成すべき?」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
以下では、それぞれの遺言書のメリット・デメリットを比較し、どんな人に向いているのかを詳しく解説します。
公正証書遺言のメリット・デメリット
公正証書遺言のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- 無効になるリスクがほぼない
- 紛失・偽造・改ざんの心配がない
- 家庭裁判所の検認が不要(相続手続きがスムーズ)
公証人が関与するため、「どう遺言書を作成していいか分からない」という人にも、法律に則った形式で作成することができるのがメリットです。
デメリット
- 作成費用がかかる
- 証人2名が必要
- 公証役場へ行く手間がある
作成費用は遺産額によって異なりますが、額が大きければ大きいほど費用がかかります。
また、証人2名は相続人を指定できないため、内容を相続人以外に秘密にしたい場合も不向きかもしれません。
自筆証書遺言のメリット・デメリット
自筆証書遺言のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- 誰にも知られずに作成できる
- 紙とペンさえあれば、手軽に作成可能
- 公証人の費用がかからないため、コストがかからない
- 内容の変更が簡単にできる
自筆証書遺言は、なんといっても手軽に作成できるのが最大のメリットです。
また、遺言の内容に変更が生じた場合、書き直したり再作成することで簡単に変更できるのも大きな利点と言えます。
デメリット
- 書き方を間違えると無効になる(法的要件を満たす必要あり)
- 紛失・偽造のリスクがある
- 家庭裁判所の検認が必要(相続手続きに時間がかかる)
自筆証書遺言書のデメリットは、正しい書式に則っていないと無効になったり、相続トラブルに発展するリスクがあることです。また、自宅で保管する場合は発見されないリスクがあるため、注意が必要です。
ただし「遺言書保管制度」を使い、法務局で預かってもらう場合、改ざんのリスクや発見されないリスクは最小限に抑えられる上、家庭裁判所の検認は不要となります。
公正証書遺言と自筆証書遺言の作成方法&費用
遺言書を作成する際には、それぞれの手続きを正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、公正証書遺言と自筆証書遺言の作成方法と費用について解説します。
公正証書遺言の作成手順
公正証書遺言の作成手順は、以下の通りです。
1.遺言内容を決める
遺言内容は、事前に弁護士や司法書士などの専門家にも相談可能です。
2.公証役場での手続き予約
公証役場に電話し、手続きの日時を予約しましょう。相談の際には1で用意した遺言内容をメモしておき、希望の内容を伝えます。
3.証人2名を用意
証人2名を用意します。信頼できる知り合いや、弁護士・司法書士といった専門家に依頼するケースもございます。
4.公証人と面談し、遺言書を作成
公証人と遺言内容を相談し、それに沿った内容で遺言書を作成してもらいます。
5.署名・押印し、公証役場に保管
出来上がった内容を確認し、署名・押印したら完了です。その後は手数料を支払い、公証役場に保管してもらいます。
公正証書遺言の作成費用
公正証書遺言の作成費用は、財産の額によって変動します。
例えば、全体の遺産額が1000万円程度の場合は2万円~3万円程度となります。
ただし、病気などで公証役場まで行けない場合、公証人に出張をお願いすることも可能です。しかし、その場合は手数料が1.5倍かかるほか、別途交通費や日当がかかります。
自筆証書遺言の作成手順
自筆証書遺言の作成手順は、以下の通りです。
1.遺言内容を自筆で記載
紙とペンを用意し、自筆で遺言の内容を記載します、この時、代筆をお願いしたり、パソコンで作成してしまうと無効になります。(財産目録に関しては、パソコンでの作成が可能です)
2.日付・氏名・押印を忘れずに記入
日付は年月日まで記載します。押印を忘れてしまうと無効になってしまいます。
3.封筒に入れて封印(推奨)
作成した遺言書を封筒に入れ、綴じ代のところにまたがるように印鑑を押す(押印)することで信用度が高くなります。法律の要件として必要なものではありませんが、改ざんのリスクなどが少なくなるため、可能であれば対応しましょう。
4.法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば安全
2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管できる制度がスタートしました。この制度は、預けた遺言書を法務局で画像データ化して保存してもらうため、遺言書の紛失リスクや改ざんリスクを軽減し、円滑な相続が可能となります。
自筆証書遺言の作成費用
紙とペンがあれば作成できるため、ほぼ無料で作成することができます。
また、法務局で保管する場合も、保管費用は3900円と、非常に低コストで預けることができます。
公正証書遺言と自筆証書遺言、どちらを選ぶべき?
公正証書遺言と自筆証書遺言には、それぞれにメリット・デメリットがあり、目的や状況によって最適な選択肢は異なります。ここでは、どんな人にどちらの遺言書が向いているのかを整理し、あなたに最適な遺言書の選び方を解説します。
公正証書遺言が向いている人
公正証書遺言書が向いている人は、以下の通りです。
- 相続トラブルを避けたい人
- 高額な財産がある人
- 法的に確実な遺言を残したい人
高額な財産を遺している場合、相続トラブルが発生しやすくなります。「法的効力がしっかりとした遺言書を作成したい」という方は、公正証書遺言の作成を検討しましょう。
自筆証書遺言が向いている人
自筆証書遺言が向いている人は、以下の通りです。
- 手軽に遺言書を作成したい人
- 費用をかけたくない人
- 定期的に内容を変更する可能性がある人
公正証書遺言は、金銭的にも時間的にもコストが大きいのが特徴です。また、公正証書遺言は修正にもコストがかかるため、内容変更の可能性がある人も手軽に作り直せる自筆証書遺言を利用するのがおすすめです。
まとめ
遺言書の形式は、「確実に実行してほしい」場合は公正証書遺言、「手軽に作成したい」、「費用をできるだけ掛けたくない」という方は自筆証書遺言がおすすめです。
紛失や改ざんのリスクを避けるためには、公正証書遺言を利用するか、自筆証書遺言の法務局保管制度を活用すると良いでしょう。
「自分にはどちらが合っているか分からない」という場合は、専門家に相談し、遺言作成を含めて依頼するのも有効な手段です。 早めに遺言書の準備をして、大切な財産をスムーズに相続できるようにしましょう。