遺産分割協議書の正しい書き方とは?必要項目や注意点もご紹介!

遺産相続の際に、「遺言書がない、または遺言書に不備があり、無効になってしまった」といったトラブルは珍しくありません。遺産分割協議書を作成することで、遺言書がない場合でも無用な相続トラブルを避けることができ、相続の手続きがスムーズになります。

しかし、遺産分割協議書には「こうでなくてはいけない」というフォーマットがないため、自分で作成するのは骨の折れる作業です。そこで本記事では、遺産分割協議書の正しい書き方や、作成にあたっての注意点などをご紹介します。

遺産分割協議書とは

遺言書がある場合は、その遺言書に従って相続手続きを進めるため、遺産分割協議書は必要ありません。

しかし、生前に遺言書を作成していないケースなど、故人の遺志が分からない場合は、相続人全員で「遺産分割協議」という話し合いを行い、誰がどんな財産を相続するかを決めることができます。その話し合いの結果をまとめ、相続人全員が合意したことを証明するのが、「遺産分割協議書」です。

遺産分割協議書は、実印の押印等をすることで法的効力を持つ書類として扱われ、相続トラブルを避けることができます。

遺産分割協議書をつくるメリット

遺産分割協議書の作成には、相続をスムーズに進めるためのメリットが多くあります。

以下では、主なメリットを3つご紹介します。

①遺言書がなくても法定相続と違う遺産分割ができる

遺言書を残さずに被相続人が亡くなってしまった場合や、遺言書に不備があった場合は、原則として法定相続割合に沿った遺産分割となります。

しかし、相続人による遺産分割協議を通して、協議書としてまとめることで、「できるだけ故人の遺志に沿った相続を実現したい」、「相続トラブルを回避したい」という想いを叶えることができます。

②トラブルを避けられる

相続において、法定相続人の間で一度合意したことを「やっぱり取り消したい」というトラブルが起きることがあります。

しかし、遺産分割協議書を作っておけば、合意があった証明となりますので、決定が覆されることはありません。

相続トラブルは親族間同士の関係悪化にもつながるため、無用なトラブルを起こさないためにも、遺産分割協議書を作成した方がいいと言えるでしょう。

③手続きをスムーズに進められる

各資産の名義変更などの際に、遺産分割協議書があると非常にスムーズに進めることができます。

名義変更は非常に厳しく審査がされるため、遺産分割協議書があるメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

遺産分割協議書の作り方

遺産分割協議書は、専門家に依頼して作ることもできますが、特別なフォーマットはないため、自分で作成することもできます。

以下では、遺産分割協議書の詳しい作り方についてご紹介します。

① 法定相続人と相続財産を確定させる

まずは被相続人の「出生~死亡までの連続した戸籍標本」を確認し、法定相続人を特定します。

次に、被相続人が所有している財産(預貯金・不動産・有価証券など)や債務・ローンなどを調べ、相続対象となる財産を確定させましょう。

この時、マイナスの財産の方が多ければ、相続放棄をすることも可能です。その際は3ヵ月の期限がありますので、早めに手続きを開始することが大切です。

②遺産分割協議を行う

法定相続人と財産が全て確定したら、「誰がどの財産をどれだけ相続するか」を話し合う、遺産分割協議を行います。

この時、全員の合意があれば法定相続割合通りではなく、自由に遺産分割をすることが可能です。

しかし、必ずしも法定相続人が近場に住んでいるとは限らないため、電話やWebツールを使って話し合いをしても問題ありません。

その場合は最終的に協議書を郵送し、順番に署名捺印をする方法をとると良いでしょう。

③協議で決まった内容を、遺産分割協議書にまとめる

協議内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名捺印をします。

協議書には、亡くなった方(被相続人)と相続人の関係や、その人がどの財産をどれだけ相続するのか、具体的に記す必要があります。

また、遺産分割協議書に、作成期限はありません。しかし相続税の申告は10か月以内という決まりがあるため、その前までに協議書の作成を進めると申告がスムーズです。

④実印を押印し、印鑑証明書を添付する

最後に相続人全員の署名と捺印をし、完成です。捺印は実印を用いて、かすれなどがないようしっかりと押しましょう。

また、預貯金口座の名義変更や、不動産の登記変更などには、遺産分割協議書とともに印鑑証明もセットで提出する必要があります。

そのため、相続人全員の印鑑証明も忘れずに添付することがポイントです。

遺産分割協議書をつくる際の注意点

遺産分割協議書は、決まったフォーマットがあるわけではありません。また、手書きではなくパソコンを使用してもいいため、作成自体は手軽に行うことができます。

しかし、遺産分割協議書は、書かないと無効になってしまう項目もあるため、作成の際には注意が必要です。

以下では、遺産分割協議書をつくる際の注意点をご紹介します。

必要事項を記載する

遺産分割協議書は、必須項目がいくつかあり、一つでも抜けてしまうと不備書類となってしまいます。

自分で作成する場合は、しっかりとチェックしながら作っていきましょう。

① 日付

分割協議書には、作成の日付を記載する必要があります。

この時、日付は相続人が協議した日または、最後に捺印をした日付を記載しましょう。

② 被相続人の名前・死亡日・住所など

まずは「誰の遺産を相続するのか」という情報を正確に記載する必要があります。

氏名や死亡日、最後に住んでいた場所の住所や本籍地など、個人を特定できる情報を記載しましょう。

③相続人全員が遺産分割内容に合意していること

相続人の氏名、被相続人との関係性(妻・長男・長女など)を記載し、「全員が遺産分割協議を行い、その内容に合意している」という文章を記載しましょう。

この文言を忘れてしまうと、一方的に誰かが決めた内容だとして、書類の効力を失ってしまうかもしれません。

④相続財産の具体的な内容

洗いだした相続財産の内容を記載しましょう。

土地や不動産、預貯金など、財産の種類とその内容を記載し、土地であれば面積や住所、預貯金の場合は口座情報などを併記します。

書き漏れがあると、その財産に関する分割協議は無効になってしまうため、必ずチェックしましょう。

⑤誰が何を相続するかの明確な情報

遺産分割協議書は、明らかになった財産を「誰がどれだけ相続するか」を明確に記す必要があります。

この時、負債やローンといったマイナスの財産についても、明確な金額や契約内容を記載し、誰が相続するのかを記載しましょう。

⑥相続人全員の氏名・住所・実印

書類の最後には、相続人それぞれの住所、氏名を記載し、実印で捺印します。

複数枚の分割協議書を作る際には、全ての書類で捺印する必要があるため、注意しましょう。

⑦新たな財産が見つかった場合の対応

こちらは必須の内容ではありませんが、今後追加で新たな財産や債務が見つかった場合、誰が相続するのか等を記載しておくと、トラブルを回避しやすくなります。

限られた時間の中で、亡くなった方の財産を全て洗いだすことは、なかなか難しいのが実情です。そのため、後日分割協議をやり直す必要がないように、「後日見つかった財産は、●●が全て相続する」、「法定相続割合に従って相続する」など、あらかじめ決めておくことで手続きがスムーズに進みます。

相続人の人数分をコピー、捺印する

それぞれの相続人が協議書を使って財産の名義変更などを行います。

そのため、遺産分割協議書は人数分を用意し、それぞれに捺印し、全ての書類が法的な効力を持つようにしましょう。

必ず相続人全員で協議を行う

相続人が一人でも不在のままで協議した場合は、分割協議書も無効になります。

必ず相続人全員が揃った状態で協議を行いましょう。

まとめ

遺産分割協議書は、必ず作らなくてはいけないものではありませんが、スムーズに遺産整理を行う際に欠かせないものです。

ポイントを押さえれば自分で作成することも可能ですが、相続の手続きを円滑に進めたいのであれば、専門家のアドバイスを受けるのもおすすめです。

もし不安な点がある場合は、司法書士などのプロの意見を参考にしたり、作成を依頼するのも良いでしょう。