任意後見と成年後見の違いとは?特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説!

高齢化社会が進むにつれ、判断能力が低下した場合の財産管理や生活支援の仕組みとして注目されているのが「任意後見制度」と、「成年後見(法定後見)制度」です。

これらはどちらもサポートを目的とした制度ですが、仕組みや活用方法には大きな違いがあります。

本記事では、「後見制度の違いについて知りたい」という方向けに、それぞれの特徴や違い、選び方のポイントを詳しく解説します。

任意後見と成年後見とは?基本を理解しよう

任意後見と成年後見は、いずれも認知症や知的障害などによる判断能力の低下に備え、後見人が本人の生活をサポートするための制度です。

大まかな仕組みは同じなものの、この二つの制度は利用するタイミングや手続きの方法に大きな違いがあります。まず、それぞれの基本的な仕組みを見ていきましょう。

任意後見制度とは?

任意後見制度は、本人の判断能力が低下する前に、自ら信頼できる後見人を選び、契約を結ぶ制度です。後見人に任せたい内容を自由に決めることができ、自分の希望に沿った支援を受けられる点が特徴です。契約は公正証書で行い、将来の安心感を得るために活用されています。

成年後見制度とは?

成年後見制度は、判断能力がすでに低下した状態の人をサポートするために家庭裁判所が後見人を選任する制度です。後見人が財産管理や生活支援を行いますが、任意後見制度と比べて、本人の意思が反映されにくい点がデメリットとなる場合もあります。

任意後見と成年後見の違いを比較

任意後見と成年後見の違いは、制度の発動時期や後見人の選び方、監督の仕組みなど多岐にわたります。それぞれのポイントを具体的に比較してみましょう。

制度の発動時期の違い

任意後見は判断能力が低下する前に契約を結び、判断能力が低下した際に契約内容に沿って運用がスタートします。

一方、成年後見は判断能力が低下した後に家庭裁判所が介入して後見人を選任します。事前準備ができるかどうかが大きな違いです。

後見人の選び方の違い

任意後見制度では、事前に本人が信頼できる人を後見人に選びます。一方、成年後見制度では家庭裁判所が後見人を選任するため、必ずしも本人の希望通りにはなりません。

監督の仕組みの違い

任意後見には、必ず家庭裁判所が選任する任意後見監督人がつきます。成年後見でも必要に応じて後見監督人がつきますが、必ずしもつくとは限らず、制度の透明性に差が出る場合があります。

契約内容の自由度の違い

任意後見では契約内容を柔軟に設定でき、財産管理から生活支援まで本人の希望に沿った内容を設計できます。成年後見では法律に基づいて後見人が業務を行うため、自由度は低くなります。

任意後見と成年後見のメリット・デメリット

任意後見制度と成年後見制度には、それぞれメリット・デメリットがあります。両者の特徴を理解し、自分に合った制度を選ぶことが大切です。

任意後見のメリット

任意後見の大きなメリットは、判断能力が低下する前に自分の意思で後見人を選び、契約内容を自由に設定できる点です。これにより、財産管理や生活支援を希望通りに進めることが可能になります。

また、事前に準備を行うことで、将来の不安を軽減し、家族や周囲の人々にとっても安心できる環境を整えることができます。

任意後見のデメリット

一方で、任意後見にはいくつかのデメリットもあります。契約を公正証書で作成するための費用や、契約発動後に必要となる任意後見監督人への報酬など、一定のコストがかかります。また、判断能力が低下した際に契約を発動させるには、家庭裁判所での手続きが必要となり、運用の開始まで手間や時間がかかる場合もあります。

さらに、任意後見には「取消権」がないのもデメリットの一つです。「取消権」とは、例えば「不必要な高額商品を買わされてしまった」といった際に、本人の代理で取り消すことができる権利です。

こうしたケースでは、成年後見では売買契約を取り消すことができます。しかし、任意後見は「本人の意思」を最大限尊重する制度のため、本人が決定した事項に関して取り消しを行う事ができないのが特徴です。

成年後見のメリット

成年後見制度のメリットは、すでに判断能力が低下している場合でも支援を受けられる点です。家庭裁判所が後見人を選任し、管理を監督するため、不正のリスクが低く、透明性のある制度運用が期待できます。特に、財産管理が複雑な場合や、家族に適任者がいない場合には、信頼性の高い専門家が後見人となれることもメリットの一つです。

また、前述の「取消権」も成年後見制度では発動できるため、万が一高額商品の購入などをしてしまった場合にも、後見人が契約を取り消すことができます。

成年後見のデメリット

一方で、成年後見には、自分で後見人を選べないという制約があります。家庭裁判所が選任するため、必ずしも本人や家族の希望通りの後見人が選ばれるわけではありません。また、財産管理や支援内容に自由度が少なく、本人や家族の意向を細かく反映することが難しい場合があります。

任意後見と成年後見、どちらを選ぶべき?

任意後見と成年後見のどちらを利用すべきかは、本人の状況や家族構成、将来の不安などによって異なります。ここでは、選択のポイントを具体的に解説します。

判断能力が低下する前なら任意後見

まだ判断能力が十分にある段階で、自分の意思を反映した契約を結びたい場合には、任意後見制度が最適です。

任意後見制度は、発動前であれば取り消しや内容の変更もできるため、早めに結んでおくのも良いでしょう。

判断能力が低下した後なら成年後見

すでに判断能力が低下している場合には、成年後見を利用するしか選択肢がありません。家庭裁判所が後見人を選任するため、緊急時にも対応できます。

ケースバイケースで選択を考える

財産の規模や生活の状況に応じて、専門家に相談しながら制度を選ぶことが重要です。

例えば、信頼できる家族がいて、その人に財産管理をスムーズに行ってほしい場合、事前に任意後見契約を結んでおくと安心です。

一方、信頼できる親族がいなかったり、財産管理が複雑になってしまう場合は、成年後見によって家庭裁判所の判断を仰ぐ方が良いケースもあります。

任意後見と成年後見に関するよくある質問(Q&A)

任意後見制度や成年後見制度について、よくある質問を以下にまとめました。

Q1. 任意後見契約を結んだ後、成年後見制度を利用することはできますか?

任意後見契約が発動していない場合には可能です。ただし、状況や契約内容によるため、専門家に確認することをおすすめします。

Q2. 任意後見人が家族でないといけないですか?

いいえ。弁護士や司法書士などの専門家を選ぶことも可能です。その場合は一定の報酬が必要なため、事前によく確認しておきましょう。

Q3. 成年後見人はどのように選ばれますか?

家庭裁判所が、適性を考慮して選任します。信頼できる親族や専門家が選ばれることが一般的です。

まとめ

任意後見と成年後見は、それぞれ異なる特徴を持つ制度です。事前に準備したい方には任意後見、すでに判断能力が低下している方には成年後見が適しています。どちらを選ぶか迷った場合は、司法書士や弁護士といった専門家に相談し、適切なサポートを受けると良いでしょう。