相続した不要な土地は手放せる?相続土地国庫帰属制度を解説

「親から引き継いだ地方の山林、誰も使い道がないのに固定資産税だけが引き落とされ続けている」

「売却しようと不動産会社に相談したけれど、値がつかないと断られた」

このように、処分できない「負の不動産」を抱え込んでしまう相続人が後を絶ちません。

こうした事態を解消すべく、国がいらなくなった土地を引き取る窓口として新設したのが「相続土地国庫帰属制度」です。

本記事では、制度の概要から、必要となる具体的な費用までを徹底的に噛み砕いて解説します。

相続土地国庫帰属制度とは?いらない土地を国に返す新ルール

日本の歴史において、「一度手に入れた土地を個人の都合で国に返す」という手続きはこれまで認められていませんでした。

しかし、管理されない土地の増大が社会インフラの妨げになることから、法改正によって誕生したのがこの画期的な引き取りシステムです。

不要な土地の所有権を国に「引き取ってもらう」仕組み

相続土地国庫帰属制度とは、相続または相続人に対する遺贈によって取得した不要な土地を、法務局へ申請して国に引き渡すことができる仕組みです。

審査を無事に通過すれば、承認後に負担金を納付すると、土地の所有権が国庫に帰属します。

制度が導入された背景と利用するメリット

地方の過疎化や世代交代が進むなか、所有者が分からず放置される「所有者不明土地」が全国で急増したことが制度発足の背景にあります。

この制度を利用する最大のメリットは、将来にわたる維持・管理の手間や、毎年課される固定資産税の手続きから完全に解放される点です。

自分の代で綺麗に処分を終わらせることで、子供や孫の世代へ「厄介な遺産」を押し付けずに済むようになります。

誰が申請できる?制度を利用できる人の対象要件

国が個人の資産を引き受けるという特殊な手続きであるため、誰でも自由に申し込めるわけではありません。

対象となるのは「相続や遺贈」で土地を取得した人

この制度を申請できるのは、原則として「相続」または「遺言によって財産を譲り受けた(遺贈)」個人に限られます。

そのため、売買などで取得した土地は原則として対象外です。

ただし、共有地で共有者の中に相続等により持分を取得した人がいる場合は、共有者全員で共同申請できる場合があります。

共有名義の場合は「全員共同」での申請が必要

親族間で土地を複数人の共有名義として引き継いでいる場合は、手続きに特別なルールが適用されます。

相続人とそれ以外の人が共有しているケース

例えば、その土地の数分の一を相続で取得した人がいれば、残りの持分を生前売買などで取得した人が混ざっていたとしても、グループの中に一人でも「相続取得者」がいれば制度の対象に含まれます。

共有者全員の同意のもと、足並みをそろえて申請するルール

ただし、特定の誰か一人だけの判断で「自分の持分だけを国に返す」ということは不可能です。

共有名義の土地を国庫に帰属させるためには、名義人全員が同意したうえで、全員が共同の申請人となって一丸で手続きを進めなければなりません。

どんな土地でも引き取ってくれる?却下・不承認となる「厳しいNG条件」

この制度を検討するうえで、最も大きな壁となるのが「国が受け取りを拒否する条件」の多さです。

法務局の窓口ではじかれる「却下条件」と、その後の審査で落とされる「不承認条件」を解説します。

申請した時点で即シャットアウトとなる「却下要件」

提出した瞬間に不合格となり、本格的な現地の調査すら行われない形式的なNG項目です。

建物が建っている土地(更地でなければならない)

土地の上に少しでも建物がある土地は申請できません。

ただし、樹木や工作物などがある土地でも、それだけで直ちに対象外になるわけではなく、通常の管理・処分を妨げるかどうかで判断されます。

担保権が設定されている土地や、境界がはっきりしない土地

銀行の抵当権がついている土地や、隣の土地の所有者と「ここからここまがウチの敷地だ」と境界線をめぐってトラブルが起きている土地も却下されます。

他人の権利が絡まない、完全にクリーンな土地である必要があります。

国の審査によって引き取りが拒否される「不承認要件」

書類が受け付けられた後、法務局の担当者が現地を視察したうえで「国での維持が難しい」とNOを突きつける条件です。

崖地や、著しい土壌汚染がある土地

一定の勾配・高さの崖があり、通常の管理に過分な費用や労力がかかる土地や、かつて工場などがあり有害物質が染み込んでいる土地は不承認となります。

国が引き取ったあとに多額の安全対策費用がかかるためです。

通路や有毒な物質の埋設など、他人の権利や管理の妨げになるものがある土地

近隣住民の生活道路(私道)として使われている土地や、地下に産業廃棄物や建物基礎など、通常の管理・処分のために除去が必要な有体物がある土地も、国の今後の管理を邪魔するものとして拒否されます。

国庫帰属までにいくらかかる?必要な費用と負担金の目安

「不要な土地を引き取ってもらうのだから、お金をもらうか、せめてタダだろう」と思われがちですが、実際には申請者側がまとまった費用を支払う必要があります。

最終的にかかる金銭の現実を把握しておきましょう。

申請時にかかる「審査手数料」

まず、法務局へ書類を提出して審査をスタートしてもらうための実費として、土地1筆につき1万4,000円の収入印紙を支払います。

この手数料は、審査の結果「不承認」となって引き取りを断られた場合でも、一切返金されません。

承認された後に納める「10年分の管理費用(負担金)」

審査がすべて完了し、国から「引き取りを許可します」と言われた段階で、最後に「負担金」というお金を支払います。

これは、国がその土地を今後10年間にわたって見回り、草刈りなどを維持していくための管理コストを、申請者が一括で先払いする仕組みです。

一般的な宅地や農地の場合

負担金は土地の種目や区域、面積によって異なります。

宅地・田畑・雑種地等では20万円が基本となるケースがありますが、市街化区域等の宅地や農地などでは面積に応じて算定されます。

ただし、市街地の中にある広い敷地などの場合は、面積が増えるにつれて負担金が上乗せされる変動制がとられています。

山林や原野などの場合

最も処分に困る広大な山林は面積に応じて負担金が算定されるため、何千平方メートルもあるような大規模な土地をまとめて国に返す場合は、その広さに比例して負担金が数十万円からそれ以上に加算されていく算定式が適用されます。

手続きはどう進める?申請から完了までの具体的な流れ

法務局という国の機関を相手にするため、手続きは非常に厳格かつ段階的に進行します。

申請から手放すまでの全体像を3つのステップで確認しましょう。

ステップ1:事前の相談と必要書類の準備

申請前には、土地を管轄する法務局で事前相談を行うのが安心です。

まずは、土地がある都道府県の地方法務局へ、対面またはオンラインによる事前相談の予約を入れます。

そこでアドバイスを受け、基準をクリアできそうであれば、土地の図面や戸籍謄本、申請書といった必要書類を完璧に整えて提出します。

ステップ2:法務局による書類審査と現地の調査

書類が受理されると、法務局による長期の調査が始まります。

提出された資料に嘘がないかをチェックするだけでなく、法務局の担当官が実際に山奥や現地まで赴き、境界線に問題はないか、地中にゴミが埋まっていないかを実地検分します。

この審査には、概ね半年から1年程度の期間がかかります。

ステップ3:承認通知と負担金の納付

厳しい審査をパスすると、手元に国からの「承認通知書」と負担金の「納付書」が届きます。

通知を受けた日の翌日から30日以内に、指定された負担金を金融機関で一括で支払わなければなりません。

負担金を期限内に納付すると、土地の所有権が国庫に帰属し、すべての手続きが完了します。

まとめ:いらない土地の処分は「事前の条件チェック」から

相続土地国庫帰属制度は「地方の不要な土地」を、国という確実な受け皿に引き渡せる、これまでにない救済制度です。

しかし、ゴミがなく境界がはっきりした更地でなければならないという「厳しい要件」や、10年分の「負担金の先払い」など、手放すためには相応の資金と労力が必要なのも事実です。

まずは自分の抱えている山林や土地がこの制度に適合する状態なのか、一度相続実務に詳しい司法書士などの専門家に相談し、試算から始めてみてはいかがでしょうか。

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