不在者財産管理人とは?基礎知識をわかりやすく解説

「家族が突然いなくなってしまったけど、残された財産はどうすればいいの?」

「行方不明の人が持っている不動産を、勝手に処分していいのだろうか…」

もし、あなたがこのような状況に直面しているなら、「不在者財産管理人」という制度が解決策となるかもしれません。

これは、行方不明の人の財産を守り、管理するために不可欠な役割を担います。

この記事では、不在者財産管理人の基礎知識から具体的な手続きまで、わかりやすく解説していきます。

不在者財産管理制度の概要

不在者財産管理制度は、行方不明となった人の財産が放置されることで生じる様々な問題を解決するために設けられました。

以下では、この制度の概要について詳しくご紹介します。

不在者とは何か?

民法上の不在者とは、従来の住所や居所を離れてしまい、当面戻ってくる見込みのない人を指します。

生死が不明でなくても、連絡が取れず財産の管理ができない状態であれば、不在者と見なされる可能性があります。

制度の目的

この制度の最も重要な目的は、不在者の財産が誰にも管理されず、価値が下がったり、他者に不当に処分されたりするのを防ぐことです。また、不在者の財産に関わる利害関係者(債権者や家族など)の権利を守る役割も担います。

不在者財産管理人の役割

不在者財産管理人は、家庭裁判所から選任され、不在者の財産を代理で管理・保存する役割を担います。

具体的には、不動産の維持管理や家賃収入の受け取り、税金の支払いなどを行います。

なぜ、この制度が重要なのか?

不在者財産管理人制度を利用しないと、不在者の財産は放置されてしまいます。

例えば、不在者の名義のままの家屋が朽ちてしまったり、家賃収入が途絶えたり、固定資産税が滞納されたりするなど、様々な問題が発生するリスクがあります。

不在者財産管理制度は、このようなリスクから財産を守るための重要なセーフティネットなのです。

不在者財産管理人を選任する具体的な手続き

不在者財産管理人は、家庭裁判所に申立てを行い、選任してもらう必要があります。

申立ての要件と申立人

不在者財産管理人の申立ては、不在者の財産管理の必要性がある場合に、利害関係者が行うことができます。

利害関係者とは、不在者の配偶者や相続人、債権者などを指します。

申立てから選任までのステップ

申立てから不在者財産管理人が選任されるまでには、いくつかのステップがあります。

ステップ1:必要書類の準備と家庭裁判所への申立て

まずは、申立書と必要書類を揃え、不在者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

ステップ2:裁判所による事実関係の調査・審問

申立てを受け付けた後、家庭裁判所は不在の事実や財産状況について調査を行います。必要に応じて、申立人や関係者から話を聞く審問が行われることもあります。

ステップ3:管理人の選任と職務開始

調査の結果、不在者財産管理の必要性が認められれば、家庭裁判所が管理人を選任する審判を行います。審判が確定すると、管理人は正式に職務を開始します。

申立てに必要な主な書類

申立てには、以下のような書類が必要となります。

  • 不在者の戸籍謄本(出生から現在まで)
  • 不在者の住民票除票
  • 不在を証明する資料(行方不明届の写し、捜索願など)
  • 不在者財産に関する資料(不動産登記簿謄本、預貯金通帳の写しなど)

不在者財産管理人の職務内容と報酬・費用

不在者財産管理人は、家庭裁判所の監督のもと、不在者の財産を管理します。その職務の範囲と、報酬について見ていきましょう。

管理人の職務はどこまで?

管理人の職務は、大きく分けて通常業務と重要な財産処分行為に分かれます。

通常業務

通常業務は、財産の保存や管理です。具体的には、財産目録の作成、不動産の維持修繕、家賃収入の受け取り、公共料金や税金の支払いなどが含まれます。これらの行為は、家庭裁判所の許可なく行うことができます。

重要な財産処分行為

不動産の売却や、不在者のために多額の借入れをするなど、財産に大きな影響を及ぼす行為は、必ず家庭裁判所の許可が必要です。許可なくこれらの行為を行うことはできません。

報酬と費用は誰が払う?

管理人の報酬や、手続きにかかる費用は、原則として不在者の財産から支払われます。もし財産が足りない場合は、申立人が負担することになります。

報酬の支払い方法

報酬は、家庭裁判所が不在者の財産状況や管理の複雑さを考慮して決定し、その金額が財産の中から支払われます。

報酬額の目安

報酬額に明確な基準はありませんが、管理する財産の額や内容、職務の期間などに応じて個別に判断されます。

混同しやすい「失踪宣告」「相続財産清算人」との違い

不在者財産管理人とよく似た制度に、「失踪宣告」や「相続財産清算人」があります。

以下では、それぞれの違いを解説していきます。

失踪宣告との決定的な違い

不在者財産管理と失踪宣告は、根本的な目的が異なります。

不在者財産管理人

不在者財産管理人は、不在者が生存していることを前提に、財産を管理・保存する役割を担います。不在者が戻ってくる可能性を考慮した制度であると言えます。

失踪宣告

「失踪宣告」は、生死不明の人が死亡したとみなすための制度です。

失踪宣告が認められると、不在者は死亡したものとして扱われ、相続が開始されます。

制度の目的と効果の比較

不在者財産管理人と、失踪宣告の違いを以下の表にまとめました。

 不在者財産管理人失踪宣告
前提不在者が生存している不在者が死亡したとみなす
目的財産の管理・保存相続の開始
効果管理人の権限は限定的不在者の財産は相続人に移る

相続財産清算人との違い

相続財産清算人と不在者財産管理人は、その対象者と目的が全く異なります。

不在者財産管理人

行方不明者の財産を管理・保存します。

相続財産清算人

亡くなった方で、相続人がいない場合の財産を管理・清算します。

対象者と目的の根本的な違いを解説

不在者財産管理人は、「生きている人(行方不明)」の財産を守るための制度です。

一方、相続財産清算人は、「亡くなった人」の財産を清算し、最終的に国庫に帰属させるための制度です。

不在者財産管理人に関するよくある質問(FAQ)

以下では、不在者財産管理人についてよく聞かれる質問をQ&A形式でまとめました。

Q1:不在者が生きて帰ってきたらどうなりますか?

不在者が生きて戻ってきた場合、管理人の権限は消滅します。

それまでに管理人が行った行為は原則として有効であり、財産は不在者本人に返還されます。

Q2:管理人が選任されるまでの間、財産はどうすればいいですか?

管理人が選任されるまで、利害関係者は財産に手を加えることができません。

勝手に財産を処分すると、損害賠償を請求される可能性があります。早めに家庭裁判所へ申立てを行いましょう。

Q3:不在者に借金がある場合、管理人は返済しなければなりませんか?

はい、管理人は不在者の財産の中から、正当な債務の弁済を行う必要があります。

Q4:管理人は誰が選ばれますか?

裁判所が弁護士や司法書士など、法律の専門家の中から選任するのが一般的です。

まとめ

不在者財産管理制度は、行方不明の方の財産を守り、管理を円滑に進めるための重要な法的手段です。この制度を利用することで、無用な財産トラブルを避け、関係者の権利を保護することができます。

ただし、その手続きは複雑であり、ご自身の状況に合わせて進める必要があります。

不安や疑問を抱えたまま、この問題に一人で向き合う必要はありません。

このような法律上の問題は、専門家の知識と経験が大きな力となります。

もしお悩みでしたら、まずは弁護士や司法書士といった法律の専門家にご相談ください。プロの視点から、あなたの状況に最適な解決策を一緒に探してくれるでしょう。

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