後見制度支援預金とは?メリット・デメリットから手続き方法まで徹底解説

「家族が認知症になったけど、財産管理はどうしたらいいんだろう?」

「成年後見人になったけど、不正を疑われるのが不安…。」

このような悩みを抱えている人も、多いのではないでしょうか。

本記事は、大切な家族の財産を守り、後見人としての責任を果たすための重要な制度「後見制度支援預金」について、基礎からわかりやすく解説します。

後見制度支援預金とは?基礎知識をわかりやすく解説

成年後見制度を利用する際に、被後見人の大切な財産を守るための仕組みとして、後見制度支援預金があります。

これは、家庭裁判所の関与のもと、後見人が管理する金銭の一部を特別な口座で管理する制度です。

後見制度支援預金について

後見制度支援預金とは、後見人が被後見人の金銭を管理するにあたり、日常的な支払いに必要となる最低限の金額以外を、家庭裁判所の許可がなければ原則として引き出せない特別な預金口座に預け入れる制度です。

これにより、後見人による不正な財産流用を未然に防ぎ、被後見人の財産を確実に保全します。

なぜ後見制度支援預金が必要なのか?

後見制度支援預金が必要とされる最大の理由は、後見人の不正防止です。後見人には、被後見人の財産を管理する重大な責任がありますが、残念ながら不正な使い込みはゼロではありません。

この制度を利用することで、後見人の金銭管理に透明性を持たせ、被後見人の財産をしっかりと保護することができます。

また、後見人にとっても、親族からの疑義を避け、自身の法的リスクを低減できるというメリットがあります。

後見制度支援預金のメリット・デメリット

後見制度支援預金は、被後見人の財産保護を目的としていますが、後見人にとっても多くの利点があります。

ここでは、双方にとってのメリットと、知っておくべきデメリットを詳しく見ていきましょう。

メリット:後見人・被後見人双方にとっての利点

後見制度支援預金は、後見人・被後見人の双方にとって、安心につながる多くのメリットをもたらします。

後見人のメリット

後見人にとっては、財産管理の透明性が高まり、親族などから財産管理に関して疑義をかけられるリスクを減らせます。

また、財産管理に家庭裁判所が携わるため、公平性の高い財産管理ができ、後見人の負担を減らすことにも繋がります。

不正を未然に防ぐことで、後見人自身の法的リスクを低減できるのも大きな利点です。

被後見人のメリット

被後見人にとっては、大切な財産が不正に流用されることなく、安全に守られることが最大のメリットです。

これにより、将来にわたる生活基盤がより確実なものとなります。

デメリット:知っておくべき注意点

後見制度支援預金には、いくつかの注意すべきデメリットも存在します。これらの点を十分に理解した上で、利用を検討する必要があります。

後見人のデメリット

金融機関が管理する預金を引き出す際には、原則として家庭裁判所の許可が必要となるため、急な医療費など、突発的な支出に対応しにくい場合があります。

また、全ての金融機関がこの制度を取り扱っているわけではないため、希望する金融機関に確認する手間がかかることもあります。

被後見人のデメリット

被後見人自身に直接的なデメリットは少ないものの、資金の柔軟な利用が難しいという側面があります。

緊急時の対応が遅れる可能性があることを理解しておく必要があります。

後見制度支援預金の手続き方法と必要書類

実際に後見制度支援預金を利用するためには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。ここでは、その流れと、準備すべき主な書類について解説します。

後見制度支援預金を設定するまでの流れ

後見制度支援預金を利用するには、まず後見人として選任された後、家庭裁判所の指示に従って手続きを進めます。

ステップ1:家庭裁判所への後見等開始の申立て

成年後見制度の利用を開始するために、まず家庭裁判所に申立てを行います。

ステップ2:後見人の選任後、家庭裁判所への申立て

後見人として選任された後、被後見人の財産状況を報告し、後見制度支援預金を利用したい旨を家庭裁判所に申し立てます。

ステップ3:金融機関で手続き

家庭裁判所から発行される指示書などに基づき、指定された金融機関で後見制度支援預金の口座開設手続きを行います。

必要となる主な書類

金融機関での手続きには、以下のような書類が必要となります。

  • 裁判所が発行した指示書(3週間以内のもの)
  • 後見人・被後見人の本人確認書類
  • 印鑑証明書
  • 金融機関所定の申込書類
  • 初回預入金 など

金融機関によって別途必要書類が変更する場合もあるため、事前に確認が必要です。

後見制度支援預金と後見制度支援信託の違い

後見制度支援預金と似た制度に「後見制度支援信託」があります。

これら二つの制度は、家庭裁判所が後見人の財産管理を支援するという点で共通していますが、いくつかの重要な違いがあります。

両者の共通点

後見制度支援預金と後見制度支援信託は、どちらも後見人による財産管理をサポートし、被後見人の財産を不正から守ることを目的としています。

また、どちらの制度を利用する場合も、家庭裁判所の監督のもとで手続きが進められます。

後見制度支援信託との比較

後見制度支援預金と後見制度支援信託は、預ける財産の種類や金額、費用面で違いがあります。

それぞれの特徴を理解することで、どちらがより適しているかを見極めることができます。

後見制度支援預金

主に金銭を対象とし、比較的少額の管理に向いています。

信託報酬はかかりませんが、振込手数料などは別途発生します。

後見制度支援信託

主に金銭のみが対象となりますが、有価証券などは個別の事案により売却や換金が適切かどうか判断され、信託金として加算される場合があります。

こうした背景があり、高額な財産の管理に向いているとされています。

ただし、信託銀行に財産を預けるため、信託報酬が発生したり、専門職後見人への報酬が発生します。

後見制度支援預金に関するよくある質問(FAQ)

以下では、後見制度支援預金についてよく聞かれる質問をQ&A形式でまとめました。

Q1. 後見制度支援預金はどの銀行でも利用できますか?

いいえ。この制度を取り扱っている金融機関は限られています。

利用を検討する際は、事前に金融機関に確認することをお勧めします。

Q2. 預金を引き出すのにどれくらい時間がかかりますか?

家庭裁判所への申立てから許可が下りるまで、およそ1週間から2週間程度かかるのが一般的です。

Q3. 信託報酬はかかりますか?

後見制度支援預金に信託報酬はかかりません。

専門職後見人が選任されていない場合、その報酬も発生しません。

まとめ

後見制度支援預金は、被後見人の大切な財産を確実に守るための、非常に有効な手段です。

後見人にとっても、財産管理の透明性を高め、自身の法的リスクを低減できるというメリットがあります。

この制度の利用は、安心して成年後見制度を運用していく上で、重要な選択肢の一つと言えるでしょう。

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