遺言執行者の任務とは?|役割・手続き・注意点を徹底解説
自分が亡くなった後のことを考え、「遺言書」を残す人は多くなってきました。その遺言書を残す場合に、よく一緒に指定されるのが「遺言執行者」です。
遺言執行者は、被相続人の遺言内容を実現するために重要な役割を担います。しかし、その任務や手続きについて正確に理解している方は少ないかもしれません。
本記事では、遺言執行者の基本的な任務から選任方法、注意点までを詳しく解説します。
遺言執行者とは?
まずは、遺言執行者とはそもそもどのような存在なのか、その基本的な定義と果たす役割について見ていきましょう。
遺言執行者の定義と役割
遺言執行者とは、被相続人の遺言内容をスムーズに実現するために選任される人物です。遺言書に記載された内容を法的に実行し、相続手続きを進める役割を担います。
預貯金の解約や、不動産などの名義変更など、一定の権限を持つことでスムーズに手続きを進めることができます。
遺言執行者の必要性
遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要となり、手続きが複雑になる可能性があります。特に遺言内容に特定の指示がある場合や、相続人間で意見の相違がある場合には、遺言執行者の存在が重要です。
遺言執行者の任務内容
遺言執行者が実際にどのような業務を担うのかを、時系列に沿って詳しく見ていきます。まずは、任務開始時に必要な対応から確認していきましょう。
任務の開始と通知義務
遺言執行者は、就任を承諾した時点で任務を開始し、遅滞なく相続人に対して遺言の内容を通知する義務があります(民法第1007条)。
まずは被相続人の戸籍謄本を遡り、相続人を全て確定させるところからスタートします。
相続財産の調査と目録作成
遺言執行者は、相続財産の内容を調査し、財産目録を作成します。これにより、相続人や関係者が遺産の全体像を把握できます。
この時、不動産や預貯金などのプラスの資産だけでなく、借金などのマイナスの資産も調査する必要があります。
遺言内容の実現
遺言書に記載された内容を実現するために、遺産の分配や処分を行います。手続きの内容は遺言の内容や財産により異なりますが、例えば、不動産の名義変更や預貯金の払い戻し、分配などが含まれます。
報告義務
遺言執行者は、任務の遂行状況について相続人に報告する義務があります。これにより、相続人は手続きの進捗状況を把握できます。
また、遺言書の内容を全て遂行した後は、その旨を相続人に書面等で報告し、対応を完了させます。
遺言執行者の選任方法
遺言執行者は自動的に任命されるわけではなく、明確な手続きを経て選ばれます。ここでは、その選任方法について確認しましょう。
遺言による指定
被相続人が遺言書で遺言執行者を指定することができます。この場合、指定された人物が遺言執行者となります。
家庭裁判所による選任
遺言書に遺言執行者の指定がない場合や、指定された人物が辞退した場合などには、家庭裁判所に申し立てることで新たに選任してもらえます。
遺言執行者を選任するには、事前に候補者を決めておき、利害関係人(相続人、債権者など)が申立てを行うのが一般的です。
申立てに必要な書類
遺言執行者を選任するには、以下の書類を家庭裁判所に提出する必要があります。
- 申立書(裁判所のホームページからダウンロード可能)
- 遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本
- 遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票
- 遺言書の写しまたは遺言書の検認済証明書の写し
- 遺言執行者候補者が遺言者の親族である場合には、親族関係のわかる戸籍謄本
申立てに必要な費用
遺言執行者の選任申立てには、遺言書1通につき800円分の収入印紙代がかかります。
また、連絡用の郵便切手代が必要になることがあります。(切手代は家庭裁判所によって異なります)
遺言執行者の資格と報酬
遺言執行者には誰でもなれるわけではありません。任務を担うにふさわしい条件や、報酬の扱いについて整理しておきましょう。
資格要件
遺言執行者には、未成年者や破産者など、法律上の制限があります。また、遺言内容によっては、特定の専門知識を持つ人物が適任とされることもあります。
報酬
遺言執行者の報酬は、遺産の中から支払われるのが一般的です。報酬の額は、遺言書に記載されている場合や、相続人との合意によって決定されます。
また、行政書士などの専門家に依頼をした場合は、遺産総額の1~3%程度が報酬の相場となります。
遺言執行者の辞任と解任
状況によっては、遺言執行者が職務を離れることもあります。ここでは、辞任や解任が行われるケースと、その手続きについて解説します。
辞任について
遺言執行者は、就任前であれば自由に辞退できます。ただし、就任後に辞任する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。病気や長期出張、仕事の多忙さなど、「正当な理由」が認められれば辞任が認められます。
解任について
遺言執行者が任務を怠ったり、不適切な行為を行った場合、利害関係人は家庭裁判所に解任を申立てることができます。
選任の時と同様、遺言者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをしましょう。
よくある質問(FAQ)
遺言執行者に関する制度は、初めて関わる人にとって分かりづらい部分も多いものです。ここでは、実際に相談が多い疑問や、現場でよく起こる誤解についてQ&A形式でまとめてみました。
Q1. 遺言執行者は必ず選任しなければならないのですか?
遺言執行者の選任は必須ではありませんが、遺言の内容によっては選任が必要な場合があります。
Q2. 遺言執行者がいない場合、遺言の内容は実現できないのですか?
遺言執行者がいない場合でも、相続人全員の協力があれば遺言の内容を実現することは可能です。しかし、手続きが煩雑になる可能性があります。
Q3. 遺言執行者に専門家を指定するメリットは何ですか?
弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者に指定することで、手続きがスムーズに進み、相続人間のトラブルを防ぐことができます。
まとめ
遺言執行者は、被相続人の遺言内容を実現するために重要な役割を担います。その任務には、相続財産の調査や管理、遺言内容の実現、相続人への報告など、多岐にわたる業務が含まれます。
遺言執行者を適切に選任し、任務を遂行することで、相続手続きを円滑に進めることができます。
遺言書の作成や遺言執行者の選任については、専門家に相談することをおすすめします。
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