焼失や記載漏れで戸籍が取れない場合の相続手続き|相続財産清算人とは?
相続手続きにおいて、被相続人の戸籍が取得できない場合、相続人の特定が困難となり、手続きが進まないことがあります。このような場合、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申立てることで、遺産の管理・清算を行うことが可能です。
本記事では、戸籍が取得できない場合の相続手続きと、相続財産清算人の役割について詳しく解説します。
相続人の戸籍が取得できないケースとは?
相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、相続人を特定する必要があります。
しかし、以下のような理由で戸籍が取得できない場合があります。
戸籍の焼失・廃棄
火災や災害により戸籍が焼失した場合、相続人の特定が困難となります。
また、古い戸籍の場合は保存期間が過ぎてしまい、役所が廃棄してしまっているケースも、同様に戸籍謄本が辿れなくなる場合があります。
これらのような場合、『滅失証明書』や『焼失証明書』または『告知書』などを役所で発行してもらうことで、戸籍謄本の提出を免除されることがあります。
しかし、相続人の存在・不存在が明らかでないため、正規の手順で相続手続きを進めることができません。
こうした場合は、家庭裁判所へ「相続財産清算人」の選任を申立てることができます。
戸籍の記載漏れ
まれに、役所による戸籍の記載漏れがあり、戸籍を辿れなくなるケースも考えられます。
こうした場合は、役所に問い合わせをし、修正の手続きを踏む必要があります。
ただし、場合によっては修正内容がはっきりとせず、相続人の存在が明確化できないことも考えられます。
このようなケースでも、家庭裁判所へ「相続財産清算人」の選任を申立てることで、被相続人の債務を支払うなど、財産の適切な処理が可能となるのです。
相続人の所在不明
相続人の存在ははっきりしているものの、所在が不明で連絡が取れない場合、相続手続きが進まないことがあります。このような場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申立てる必要があります。
相続財産清算人とは?
相続財産清算人は、相続人が存在するかしないかがはっきりしない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合に、家庭裁判所によって選任される者です。
相続財産清算人は、被相続人の遺産を管理・清算し、債権者への支払いや特別縁故者への分与を行います。
相続財産清算人の選任手続き
相続財産清算人の選任手続きは、以下のように進められます。
申立てができる者
相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申立てることができるのは、利害関係人または検察官です。利害関係人には、被相続人の債権者や特別縁故者などが含まれます。
必要書類
相続財産清算人の選任申立てには、以下の書類が必要です。
- 申立書(裁判所のホームページからダウンロード可能)
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで、取得可能な範囲で)
- 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の子が死亡している場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 被相続人の直系尊属が死亡している場合、死亡の記載がある戸籍謄本
- 被相続人の兄弟姉妹が死亡している場合、その出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 代襲者としての甥・姪が死亡している場合、その甥又または姪の死亡の記載がある戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続財産を証明する資料(通帳のコピー、不動産登記事項証明書など)
- 申立人が利害関係者の場合、利害関係を証明する書類
- 相続財産清算人の候補がいる場合、その住民票除票または戸籍附票
家庭裁判所による審理と選任
家庭裁判所は、提出された書類を審査し、相続財産清算人の選任が適切であると判断した場合、選任を行います。選任後、相続財産清算人は、遺産の管理・清算を開始します。
相続財産清算人の業務内容
相続財産清算人の主な業務は以下のとおりです。
遺産の管理・換価
相続財産清算人は、被相続人の遺産を管理し、必要に応じて換価(売却)します。不動産の売却には、家庭裁判所の許可が必要です。
また、不動産の売却価格は不動産鑑定士への依頼などを通じ、公正な価格で申請し、売却しなければなりません。
債権者への支払い
相続財産清算人は、被相続人の債務を把握し、債権者への支払いを行います。支払いは、相続財産の範囲内で行われます。
特別縁故者への分与
相続人が存在しない場合、被相続人と特別な関係にあった者(特別縁故者)に対して、家庭裁判所の審判により、相続財産の全部または一部を分与することができます。
残余財産の国庫帰属
債権者への支払いおよび特別縁故者への分与を行った後、残った財産は国庫に帰属します。
相続財産清算人にかかる費用は?
相続財産清算人を選任してもらうには、いくつかの費用が発生します。手続きを進めるうえでの「金銭面の目安」を把握しておくことはとても重要です。
申立て時の費用
申立てにかかる費用は、以下の通りです。
- 収入印紙:800円程度
- 郵便切手:数百円~1,000円程度(家庭裁判所によって異なる)
- 戸籍や住民票などの取得費用:1通あたり300~750円程度
- 官報公告料:5,075円
また、司法書士や弁護士に依頼する場合は、別途報酬が発生します。費用相場は月数万円程度ですが、この金額は相続財産から支払われます。
よくある質問(FAQ)
制度にまつわる疑問や、不安になりやすいポイントについて、分かりやすくお答えします。
Q1. 戸籍が一部しか取れないけど、申立てできるの?
可能です。ただし「戸籍が一部取得不能な事情(焼失・廃棄・不明等)」を説明できる証拠(役所の回答書など)を添えると、裁判所の理解が得やすくなります。
Q2. 清算人が選ばれると、もう遺族は財産に関われない?
基本的には、相続人がいないと確定してから清算人が選任されるため、原則として相続人は関われません。ただし、後から相続人の存在が判明した場合は、状況に応じて手続きが調整されることがあります。
Q3. 清算人が選ばれると遺産はすべて国庫に帰属する?
必ずしもそうではありません。
債権者への返済や、特別縁故者への分与が済んだあと、残った財産がある場合のみ国庫に帰属します。
まとめ|戸籍が取得できない場合は専門家に相談を
相続手続きにおいて、被相続人の戸籍が取得できない場合、相続人の特定が困難となり、手続きが進まないことがあります。
このような場合、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申立てることで、遺産の適切な処理を行うことが可能です。
相続財産清算人の選任手続きや業務内容は複雑なため、弁護士や司法書士など、専門家に相談することをおすすめします。
ゼヒトモ内でのプロフィール: 司法書士法人アレスコ事務所, ゼヒトモの司法書士サービス, 仕事をお願いしたい依頼者と様々な「プロ」をつなぐサービス