自筆証書遺言の保管申請とは?申請方法・手数料・注意点をわかりやすく解説

自筆証書遺言は、自宅で気軽に、無料で作れる遺言書とあって、非常に人気です。

しかし、

「自筆証書遺言は自宅で保管すると不安」「検認って面倒そう…」

というお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

そんなお悩みを解決するのが、法務局の「自筆証書遺言保管制度」です。2020年7月にスタートしたこの制度を利用すれば、検認が不要になるだけでなく、遺言の紛失や改ざんリスクも避けられます。

本記事では、保管申請の方法や費用、注意点まで、実際に活用したい方に向けてわかりやすく解説します。

自筆証書遺言の保管申請とは?

せっかく作成した自筆証書遺言ですが、そのままにしておくと紛失や破損、改ざんのリスクがあり、故人の意思に沿った相続が反映されない可能性があります。

こうした事態を回避できるよう、2020年から「自筆証書遺言保管制度」がスタートしました。

以下では、自筆証書遺言の保管申請について、詳しくご紹介します。

法務局で遺言を預けられる制度

法務局の「自筆証書遺言保管制度」は、遺言者が自筆で作成した遺言書を、法務局に預けて保管してもらう制度です。

法務局では画像データ化して保管するため、改ざんや紛失といったリスクがなく、故人の意思通りの相続が実現できます。また、死亡時には相続人に対して通知がいくため、相続人が遺言書の存在を知らないままでいる、ということもありません。

対象となる遺言書の形式・条件

この制度で保管できるのは、自筆証書遺言です。

遺言書は、民法第968条に基づき、全文を自書し、日付と氏名を記載し、押印する必要があります。

また、法務局が定める様式に従い、A4サイズの用紙を使用し、余白を確保するなどの条件があります。保管申請をする際には、こうした書式についてのチェックがされます。

保管申請のメリットとデメリット

自筆証書遺言の保管申請には、多くのメリットがありますが、いくつかの注意点も存在します。

ここでは、制度の利点と限界について詳しく解説します。

主なメリット

自筆証書遺言の保管申請には、以下のようなメリットがあります。

検認不要になる

自筆証書遺言は、自宅で簡単に作成できる遺言書である一方、遺された遺族が開封するためには、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。

しかし法務局に保管された自筆証書遺言は、この検認手続きが不要となり、相続手続きがスムーズに進められます。

紛失・改ざんのリスクがなくなる

法務局で厳重に保管されるため、遺言書の紛失や改ざんのリスクが大幅に減少します。

相続人が法務局で内容確認できる

相続人は、遺言者の死亡後、法務局で遺言書の内容を確認することができます。

書式チェックがされるため、無効リスクが低くなる

法務局の職員が遺言書の形式を確認するため、形式不備による無効のリスクが低減します。

注意したいデメリット

一方で、保管申請には以下のようなデメリットもあります。

公証人による内容確認はない(内容の有効性は自己責任)

法務局では遺言書の形式のみを確認し、内容の有効性については確認しません。

そのため、内容に不備があった場合でも、そのまま保管される可能性があります。

一部手続きは予約制・本人出頭が必須

保管申請は、原則として遺言者本人が法務局に出頭し、予約が必要です。

代理人による申請は認められていません。

保管されても通知されない

遺言書が法務局に保管されていても、相続人に自動的に通知されるわけではありません。

そのため、遺言者は家族に遺言書の存在を伝えておく必要があります。

保管申請の流れと必要書類

自筆証書遺言の保管申請を行うには、いくつかのステップと必要書類があります。

ここでは、申請の流れと必要な書類について詳しく解説します。

保管申請の手続きの流れ

保管申請の手続きは、以下のステップで進められます。

① 保管場所の法務局を調べる

遺言者の住所地、本籍地、または所有する不動産の所在地を管轄する法務局を調べます。

② 電話またはオンラインで事前予約

保管申請は予約制のため、電話またはオンラインで事前に予約を行います。

③ 遺言書や申請書を作成する

保管する遺言書を、形式に沿って作成します。

遺言書はA4サイズ、余白を上部に5ミリ、下部に10ミリ、左に20ミリ、右に5ミリの余白を確保しましょう。

また、法務局のホームページから、申請書をダウンロードし、あらかじめ記入を済ませておくことをおすすめします。

④ 本人が法務局へ出頭(代理不可)

申請は遺言者本人が法務局に出頭して行う必要があります。

代理人による申請は認められていません。

⑤ その場で形式チェック+保管完了

法務局の職員が遺言書の形式を確認し、問題がなければ保管申請が完了します。

申請に必要な書類と持ち物

保管申請には、以下の書類と持ち物が必要です。

  • 自筆証書遺言書の原本
  • 保管申請書(法務省HPからダウンロード可)
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 住民票の写し(本籍地の記載があるもの)
  • 手数料(収入印紙3,900円分)

申請日に焦らないよう、事前に準備しておきましょう。

自筆証書遺言の保管申請に関するよくある質問(FAQ)

自筆証書遺言の保管申請に関して、よくある質問をまとめました。

Q1. 保管してもらった後に内容変更したいときは?

保管された遺言書の内容を変更したい場合は、保管の撤回手続きを行い、遺言書を返却してもらった上で、新たに作成し、再度保管申請を行う必要があります。

Q2. 相続人はどうやって遺言の有無を知るの?

遺言者の死亡後、相続人は法務局に遺言書の有無を確認することができます。

また、遺言者が指定した場合、法務局から通知が届く制度もあります。

Q3. 保管された遺言はいつまで有効?

保管された遺言書は、遺言者の死亡後50年間、法務局で保管されます。

その間、相続人は遺言書の閲覧や証明書の交付を受けることができます。

まとめ|確実に意思を伝えるなら「保管申請」が安心

自筆証書遺言は、自分の想いや財産の分け方を“自分の言葉”で遺すことができる、非常に自由度の高い方法です。

しかしその一方で、「書式の不備による無効」「相続人による紛失・改ざんのリスク」「見つからず無視される可能性」など、注意すべき落とし穴も多く存在します。

自筆証書遺言の保管をすれば、家庭裁判所の「検認手続き」が不要になるうえ、内容の存在も記録として残るため、遺された家族が「どこにあるのか分からない」「本当に本人が書いたのか?」といった不安に直面することも減ります。

重要なのは、ただ書いて満足するのではなく、「どうやって確実に意思を届けるか」という“出口”までを考えること。

保管申請を通じて、大切な遺言書を安全に残し、相続人の手続きの負担を減らしながら、想いをしっかりと形にしておきましょう。

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