外国人の相続で注意すべきポイントとは?手続きの流れや必要書類を徹底解説!

外国人が関わる相続は、日本国内で行う通常の相続手続きと比べて、法律や税務、必要書類の違いなど、注意すべき点が数多くあります。特に、国籍や居住地、財産の所在国によって適用される法律が異なるため、手続きが複雑になることもしばしばです。この記事では、外国人が日本国内外で相続を行う際に押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。初めて相続を検討する方にも役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

外国人の相続とは?基本的な仕組み

外国人が関わる相続は、「国際相続」と呼ばれ、通常の相続手続きとは異なり、国籍や居住地、財産の所在などの要素によって適用される法律や手続きが変わります。ここでは、相続の基本的な仕組みや外国人が関わる場合の特徴、適用される法律について詳しく解説します。

国際相続の基本的なルール

日本の法律では、被相続人の本国法(国籍のある国の法律)が相続全般に適用されるのが原則です。

たとえば、日本人が亡くなり、その人が被相続人となった場合は、相続人の中に外国人がいたとしても日本の相続法に基づいて手続きが進められます。

一方、アメリカ国籍の被相続人であれば、アメリカの相続法に基づいて手続きが進められることになります。ただし、遺言書の有効性については、日本の方式のほか、外国の方式でも有効性が認められる場合があります。

また、不動産に関しては、不動産が存在する国の法律が優先されるのが一般的です。

外国人が関わる相続の特徴

外国人が関わる相続には、以下の特徴があります。

  • 被相続人の国籍や居住地が手続きや適用法に影響を与える。
  • 財産が複数の国にまたがる場合、それぞれの国で異なる手続きが必要となる。
  • 書類の翻訳や公証が求められる場合が多く、手続きが複雑になる。

関係者の国籍や、財産のある場所によって、細やかにルールが定められており、さまざまなケースを想定した上で手続きを進める必要があります。

外国人が日本で相続する場合のルール

外国人が日本国内で相続を行う場合、日本の法律や制度が適用されるため、国内独自のルールや注意点を理解しておくことが重要です。以下では、日本で相続する際の基本的な法律や注意点について説明します。

国際私法(法の適用に関する通則法)に基づくルール

国際私法では、被相続人の本国法が原則として適用されます。ただし、日本国内の不動産に関しては例外的に日本の法律が優先されます。たとえば、相続人の権利や不動産の登記などは、日本の民法や不動産登記法に基づいて進められるため、相続人が外国籍であっても、日本人と同様の手続きを踏む必要があるのです。

相続における日本独自の注意点

日本の相続手続きでは、戸籍制度を活用して相続人を確定します。しかし、外国人には戸籍が存在しないため、家族関係証明書や出生証明書を提出する必要があります。また、これらの書類は翻訳や認証が必要になるケースが多いです。

日本人が海外の財産を相続する場合の注意点

亡くなった方(被相続人)が外国人で、相続人が日本人の場合、亡くなった方の国の法律に基づいて相続が進められます。特に、日本国外の財産を相続する場合は、各国で適用される法律や手続きが異なるため、複雑さが増します。ここでは、具体的な注意点について解説します。

国によって異なる相続手続き

海外での相続手続きは国ごとに異なるルールが適用されます。たとえば、アメリカでは州ごとに相続法が異なるため、遺言書の有効性や財産分配の基準が変わります。手続きを進める際には現地の専門家と連携することが重要です。

翻訳や公証の必要性

海外での相続手続きでは、日本語の戸籍謄本や財産目録を現地の言語に翻訳し、公証人による認証を受ける必要がある場合があります。この手続きには時間と費用がかかるため、早めの準備が必要です。

課税の違い

国ごとに相続税や贈与税の課税ルールが異なります。また、日本と相続人の居住国間に租税条約が締結されている場合、二重課税を防ぐための特別な規定が適用される場合があります。

外国人の相続に必要な書類と注意点

相続手続きでは、事前の準備と書類の正確な収集が欠かせません。ここでは必要な書類一覧や注意点を詳しく解説します。

必要書類一覧

外国人が関わる相続に必要な書類で注意が必要なものは、以下の通りです。

  • 戸籍謄本
  • 住民票の写し
  • 印鑑証明書

それぞれ注意すべき点を、詳しく解説します。

戸籍謄本

日本人同士の相続の場合、被相続人の戸籍謄本はもちろんですが、相続人の戸籍標本も必要となります。しかし、外国人には戸籍がないため、被相続人との関係を証明する何かしらの書類が必要となります。

戸籍制度のない国の場合は、出生証明書や婚姻証明書、死亡証明書、宣誓供述書など、代わりになる書類を用意する必要があります。

住民票の写し

不動産登記などでは、相続人の住所を証明するために住民票が求められます。

現在は外国籍の人であっても住民票は発行されるため、居住地の役所に行けば申請が可能です。しかし、海外に在住しており日本で住民登録をしていない場合は、「宣誓供述書」を現地の公証人に依頼し、取得する必要があります。

印鑑証明書

遺産分割協議がされた場合、協議書に印鑑登録をした実印の押印が必要です。

協議書と共に印鑑証明書を添付しますが、日本に在住している場合は外国人であっても印鑑の登録も可能です。

一方、海外に在住している外国人が相続人となった場合、印鑑登録そのものの制度がなく、サインで対応することとなります。その際にはサインが本当に本人のものかどうかの「署名証明」を現地の公証人へお願いする必要があります。

相続税はどうなる?課税ルールの詳細

外国人の相続の場合、「相続税が発生するのか」など、細かい課税ルールに関して分からない方も多いかもしれません。

結論から言えば、相続税は財産の所在国や相続人の居住地により、課税方法が変わります。ここでは、課税ルールの詳細を説明します。

相続税が発生するケース

日本国内の財産は原則として課税対象となります。

被相続人が日本居住者である場合、国外財産も課税対象になる可能性があります。

非居住者の相続税の特例

非居住者が相続する場合、日本国内の財産のみ課税対象となります。ただし、具体的な内容は専門家に確認することをおすすめします。

租税条約による二重課税の防止

租税条約が適用される場合、二重課税を回避するための控除や免除が受けられます。これにより、相続人の税負担が軽減される場合があります。

外貨は日本円に換算する

相続財産の中に、外貨建ての財産が含まれていた場合、それらを被相続人が亡くなった日のレートに換算し、計算します。

相続税の申請の際には、この日のレート証明書が必要になるため、通常の相続手続きよりも手間やコストがかかる可能性があります。

外国人の相続で特に注意すべきケース

外国人が関わる相続では、いくつかの特殊なケースに注意が必要です。

複数国の法律が絡む場合

財産が複数の国にまたがる場合、それぞれの国で別個の手続きが必要になります。

遺言書が複数存在する場合

異なる国で作成された遺言書がある場合、どれが有効かが争点になることがあり、相続手続きが長引く可能性があります。作成された時期などによって有効性が左右されるため、注意が必要です。

相続人が複数国に居住している場合

相続人が複数の国に分散している場合、手続きが長期化する可能性があります。

遺産分割協議は電話やメールでも可能なため、こうしたツールを上手に活用することが大切です。

まとめ

外国人が関わる相続は、国際的な法律や税務の知識が必要であるため、複雑になりがちです。スムーズに手続きを進めるためには、専門家に相談しながら適切な準備を進めることが重要です。迷ったらまずは弁護士や司法書士といった専門家に相談し、安心して相続手続きを完了させましょう。