異母兄弟の相続権|相続に関するルールと注意点
相続の際にトラブルになりやすい事例として、「亡くなった被相続人に再婚歴があり、異母兄弟(または異父兄弟)がいることがわかった」というケースが挙げられます。
本記事では、そういった異母・異父兄弟の相続についての基本的なルールや注意点について、分かりやすく解説します。
異母兄弟の相続権はどのくらいあるのか?
異母兄弟がいたことが後から分かった場合など、相続権はどうなるのか気になる人も多いかもしれません。
ここでは、異母兄弟の相続権についてや、相続権が認められる条件についてご紹介します。
異母兄弟の相続権は法律で認められている
異母兄弟の相続権は法律で定められており、実の兄弟姉妹と同様に法定相続人の一人として認められています。
ただし、これはあくまでも認知されている子どもの場合に限られます。逆に言えば、婚外子であっても認知をしていれば相続権が認められます。
認知には3種類ある
子どもの認知には、以下の3種類があります。
任意認知
父親が子どもの出生時に戸籍を届け出る、または出生後に認知届を役所に提出することでできる認知です。
強制認知
母や子が調停や裁判を起こし、強制的に認知をさせる方法です。
死後認知
父親の死後、3年以内に子どもの方から認知請求を行い、認知させる方法です。
死後認知請求で初めて「異母兄弟がいる」ということを知るケースもあります。
異母兄弟の相続分は実子と異なる?
異母兄弟の相続権は法律上認められており、親が亡くなった場合は異母兄弟にも遺産分割協議に参加する権利があります。
また、相続割合についても実子と同じだけ認められます。
例えば、父親が婚前にAという子どもを認知し、その後別の人と結婚してB、Cという子どもが生まれた場合、AにもB、Cと同じだけの相続分が発生します。
この父親に配偶者がいる場合、法定相続では配偶者が2分の1の財産を相続し、残りの2分の1をA、B、Cの3人で等分に(6分の1ずつ)相続します。
一方、両親が亡くなっている状態で、Bが死亡すると、兄弟姉妹に相続権が発生します。
このケースでは異母兄弟であるAにも相続権が認められますが、相続割合は両親が同じ兄弟姉妹の2分の1に留まります。
親が亡くなった時、実子かどうかの差で相続分に変化はありませんが、兄弟姉妹間で亡くなった場合の相続では変化がありますので、注意が必要です。
異母兄弟の相続でよくあるトラブル
異母兄弟の相続では、しばしば相続分を巡ってトラブルになることがあります。
以下では、異母兄弟の相続でよくあるトラブル事例をご紹介します。
遺産分割協議での感情的な対立
異母兄弟間では、遺産分割協議での対立が起こりやすいです。特に、被相続人が遺言書を残さずに亡くなった場合、異母兄弟同士で相続分の主張が異なることが多く、協議が難航することがあります。
異母兄弟間で信頼関係が希薄な場合、協議が感情的になりやすく、法定相続分を巡る争いに発展するケースも少なくありません。
異母兄弟の一方が遺産を多く受け取ったり、相続手続きで主導的な立場に立ったりする場合、他の兄弟姉妹から反発が強まることもあります。
遺言書の有無による影響
遺言書があるかどうかは、異母兄弟の相続に大きな影響を与えます。遺言書がない場合、法定相続分に基づいて遺産が分割されるため、異母兄弟も法的に認められた相続権を行使します。しかし、遺言書がある場合は、その内容に従って遺産が分配されるため、異母兄弟が全く相続できない場合や、相続分が大きく変わることもあります。
遺言書を作成する際には、異母兄弟を含めた相続人間の公平性を考慮し、具体的な財産分配方法を明記することが、相続時のトラブルを避けるポイントとなります。
異母兄弟の相続トラブルを防ぐためにできること
上記のようなトラブルを避けるためには、事前に何かしらの対策を講じておく必要があります。
以下では、異母兄弟の相続トラブルを防ぐための具体的な対策をご紹介します。
事前に遺言書を作成する
もっとも手軽かつ確実な方法は、被相続人が亡くなる前に遺言書を作成しておくことです。
遺言書には財産の分割方法や、相続分に関する明確な指示を記載することで、遺産分割協議をスムーズに進めることができます。
また、異母兄弟や異父兄弟がいる場合、遺言書を公正証書遺言書として作成することで、遺言書が無効になるリスクを防ぎ、トラブルを回避できます。
遺言書の作成の際は、弁護士や司法書士などの専門家のサポートを受けることで、法的な確実性を担保することも可能です。
専門家に相談する
もし、被相続人が亡くなった後に異母兄弟の存在が発覚した場合、早期に専門家へ相談することが大切です。弁護士や司法書士、税理士といった相続の専門家は、法律や税制に精通しており、複雑な相続問題を円滑に解決するサポートを受けることができます。
特に異母兄弟間での相続トラブルは感情的な対立を招きやすいため、専門家のアドバイスを受けることで、客観的かつ公正な解決策を見出せます。
家族間での話し合いを大切にする
異母兄弟間での相続トラブルを防ぐには、家族間での事前の話し合いも非常に重要となります。特に相続に関しては、異母兄弟間で感情的な対立が起こりやすいため、早期にお互いの意見や希望を共有しておくことで、トラブルの危険性を減らすことができます。
話し合いを行う際には、冷静に事実を共有し、相続に関する法律や遺言書の内容などを確認することが重要です。
よくある質問
以下では、異母兄弟の相続に関するよくある質問をまとめています。
ぜひ参考にしてみてください。
異母兄弟は遺産を相続できないこともある?
異母兄弟は法定相続人に含まれるため、基本的には相続権を持っています。しかし、遺言書で明確に除外されている場合や、特定の理由で相続権が剥奪されることもあります。
また、遺言書がない場合でも、異母兄弟が相続する財産の割合は限られているため、相続できる財産が通常の兄弟に比べて少ないことがあります。
遺言書の内容次第では、異母兄弟が相続権を持たないケースもあるため、事前に遺言書を確認することが重要です。
異母兄弟の存在を知らなかった場合、相続にどう影響しますか?
異母兄弟の存在が相続手続きの中で判明した場合であっても、その異母兄弟も法定相続人として権利を持ちます。
相続財産の分割は法定相続人全員で行われるため、異母兄弟が新たに加わると、それまでの遺産分割協議とは別に、新たに協議を行う必要がある場合もあります。このようなケースでは、相続手続きが長期化する可能性があります。
異母兄弟が外国に住んでいる場合、相続手続きはどうなりますか?
異母兄弟が外国に住んでいる場合でも、相続権は日本の法律に基づき適用されます。異母兄弟が相続手続きに参加するためには、海外から必要書類を取り寄せる必要があります。
また、海外在住者とのやり取りが必要になるため、手続きが複雑化することもあります。そのため、こういったケースでは弁護士などの専門家のサポートを受けることが推奨されます。
まとめ
異母兄弟の相続は、法的な知識だけでなく、感情的な要素も絡むため、トラブルが発生しやすい分野です。遺言書の作成や専門家の助言を活用することで、異母兄弟間の相続を円滑に進めることができます。さらに、家族間での早期の話し合いや、相続手続きを適切に進めることもトラブル防止に有効です。
また、遺言書を作成したい場合は、ぜひお近くの司法書士にご相談ください。さまざまなケースに対応できるプロのアドバイスのもと、法的効力のある遺言書の作成のサポートを受けられます。