遺言による遺産分割の仕組みとは?トラブルを避けるためのアドバイスもご紹介!

遺言で指定できるものの代表として、「遺産の分け方」があります。遺言書を作成しておくことで、遺言者の希望に沿った相続が可能になるだけでなく、遺産分割に関するトラブルを避けることができます。

本記事では、遺言書を使った遺産分割の基本的な仕組みや注意点、よくあるトラブルの回避方法について詳しく解説します。遺産分割で悩んでいる方や、円滑に相続を進めたい方はぜひ参考にしてください。

遺言による遺産分割とは?

遺言による遺産分割は、相続人間でのトラブルを避けるために、遺言者が事前に財産の分け方を明確に指定する方法です。

法定相続に任せると、法律に基づいた分配が行われます。しかし、遺言書を残すことにより、遺言者の希望に沿った分割が可能となります。たとえば、特定の相続人に多くの財産を残す、または慈善団体に寄付するなど、個々の事情に合わせた柔軟な遺産分配が実現します。

遺言がない場合、相続は法定相続分に従って行われますが、遺言による指定があれば、法定相続分に優先してその内容が尊重されます。

遺言で指定できる遺産分割の方法

遺言を作成する前に、自分の資産状況に合わせた遺産分割の方法を知ることが大切です。

遺産分割の主な方法は3つあり、「現物分割」、「換価分割」、「代償分割」に分けられます。以下では、これらの方法について具体的に説明いたします。

現物分割

「現物分割」とは、土地や家、株式などの形のある財産をそれぞれの相続人に分ける方法です。

例えば、不動産は長男、預貯金は長女、株式は次男、というように、財産の種類ごとに相続人を指定するケースがこれに当たります。

非常に明快かつ、手続きが簡単に進められるというメリットはあるものの、それぞれの資産価値が異なるため、公平に分けにくいというデメリットがあります。

換価分割

「換価分割」は、財産を全て売却して現金化し、相続人間で分配する方法です。

現金化することで、相続人が多くても公平に分割できるのが最大のメリットです。一方、現金化する際に手間やコストがかかることや、売却によって得られた利益に住民税や所得税がかかるのがデメリットです。

代償分割

「代償分割」は、特定の相続人が財産を相続し、残りの相続人には代償として金銭を支払うという分割方法です。

例えば、長男が自宅を相続し、長女と次男には長男が現金で支払います。

自宅に住み続けたい相続人がいる場合や、できるだけ公平に財産分割したい場合におすすめの方法ですが、現物の財産を相続する人が、一定の財力を持っていることが条件となります。

遺産分割協議との違いとは?

「遺産分割協議」とは、相続人全員が集まり、遺産をどのように分けるか話し合う手続きのことです。一般的に、遺言書がない場合は遺産分割協議を経て、全員の合意を得た上で遺産の分割について決定します。

しかし遺言書がある場合は、遺産分割協議を省略し、遺言に沿った遺産分割を行うケースもあります。

一方、遺言書があっても、相続人全員が同意することで協議によって分配を決定することも可能です。

とはいえ、遺言書の内容は遺産分割協議よりも優先されます。こうしたルールは、遺産分割協議の後に遺言書が発見された場合であっても同様で、遺言書の内容が優先されます。しかし、相続人全員が遺言書の内容を確認した上で合意すれば、遺産分割協議で決定した相続内容のままでも問題ありません。

遺言による遺産分割でよくあるトラブル

遺言による遺産分割は、故人の遺志が反映されるため公平性がある一方で、トラブルになるケースもあります。

以下では、よくあるトラブルの事例についてご紹介します。

遺言の内容が不明瞭なケース

遺産分割の際に発生しがちなトラブルの一つに、遺言の内容が不明確であるために、分割の割合などでもめるケースが挙げられます。

例えば、「生前お世話になった長男に財産のことは任せる」とだけ書かれていた場合、「長男だけが財産を相続し、他の兄弟は相続してほしくない」と解釈することもできます。一方、「あくまでも割り振りを長男に任せるだけで、他の兄弟に相続してほしくないわけではない」という解釈をすることもできます。

このように、遺産分割の割合や方法があいまいな場合、相続トラブルに発展しやすくなります。

意思能力に問題があると疑われる場合

法的に有効な遺言書は、その内容を理解している等、遺言者に一定の意思能力があることが条件となっています。そのため、「遺言者が遺言を作成した際に、意思能力がなかった」と主張されるケースがあります。

特に、法的に定められた遺留分の相続を、遺言書によって侵害されている場合、遺留分権利者が訴訟を起こすこともあります。

遺言による遺産分割のトラブルを避けるポイント

遺言は、本来遺産分割の際のトラブルを避けるために必要なものですが、いくつか気を付けなければならないポイントがあります。

以下では、上記で紹介したようなトラブルを避けるポイントをご紹介します。

明確な内容の遺言書を作成する

まず大切なことは、遺言書の内容を具体的かつ明確にしておくことです。どの財産を、誰に、どのような割合で相続させるかをハッキリと記載することで、トラブルが起きにくくなります。

また、法的なことに詳しい専門家に相談し、遺言書の内容に関してアドバイスをもらうのもおすすめです。

遺留分への配慮

遺言書を作成することにより、法的に定められた相続だけでなく、故人の意思を反映した相続も実現できます。しかし、相続人全員の感情や遺留分に配慮することも大切なポイントです。

遺留分を侵害するような遺言は、相続人間で訴訟に発展するリスクもあるため、法的なアドバイスを受けながら、遺留分を考慮した遺言書を作成しましょう。

また、公正証書遺言を作成することで、法的な効力を高め、相続時のトラブルを回避しやすくなります。

遺言書の種類と遺産分割への影響

遺言書には3つの種類があり、それぞれ遺産分割に対する法的効力やプロセスが異なります。

各遺言書のメリット・デメリットを理解した上で、適切なものを選びましょう。

自筆証書遺言

「自筆証書遺言」は、遺言者が自ら記述して作成する遺言書です。

手軽に作成できるというメリットがある一方、形式の不備や紛失のリスクがあり、確実に遺言の内容が実行されない可能性があります。法的な効力が無効になりやすい傾向があるため、遺産分割においてトラブルが多いのが特徴です。

公正証書遺言

「公正証書遺言」は、公証役場で公証人の前で作成される遺言書です。

証人を用意する手間がかかったり、作成に費用がかかるというデメリットがある一方、法的に無効になりにくく、紛失の恐れなどがないのがメリットです。

3つの手段の中では、最も法的な効力が強く、争いの種になりにくい遺言の形式です。

秘密証書遺言

「秘密証書遺言」は、公正証書遺言と同様に交渉役場で作成する遺言書です。

公正証書遺言との違いは、遺言の内容が公開されないことです。遺言内容を秘密にしたい場合に用いられますが、実際はあまり使われません。

まとめ

遺言による遺産分割をスムーズに行うためには、法的に有効かつ、相続人全員が納得できる内容にすることが大切です。また、財産の分配方法なども明確に記載することで、相続人がトラブルなく手続きしやすくなるでしょう。

遺言書を作成する際は、弁護士や司法書士などの専門家のアドバイスを受けることで、トラブルを回避しやすくなります。さらに、遺言書の存在を家族などに伝えること、事前に相続に関する話し合いをしておくことも、円滑な遺産分割のカギとなります。