不在者財産管理人とは?必要なケース・申立方法・費用をわかりやすく解説

「相続手続きを進めたいのに、不在の家族がいて困っている…」

「相続人が行方不明のまま、手続きを止めたままになっている…」

そんな状況を解決するのが「不在者財産管理人」の制度です。

本記事では、不在者財産管理人の意味や手続きの流れ、申立ての注意点をわかりやすく解説します。

不在者財産管理人とは?まずは基礎知識をチェック

「不在者財産管理人って何のための制度?」という疑問をお持ちの方へ。

まずは、不在者財産管理人という制度の概要や、制度が用意されている背景について理解していきましょう。

そもそも「不在者」とは?

まず「不在者」とは、住所・居所が長期間わからず、連絡が取れない状態にある人のことを指します。

生死が不明というほどではないものの、通常の生活や法律行為において影響が出る場合、法的に「不在者」と認定されるケースがあります。

不在者財産管理人の役割と目的

不在者が所有する財産を、勝手に他人が管理することはできません。

そこで、家庭裁判所の許可を得て「不在者財産管理人」を選任することで、その財産を適切に保全・運用することが可能になります。

たとえば、不動産の管理や、遺産分割協議への参加、財産目録の作成などが主な役割です。

不在者財産管理人が必要になるケースとは?

不在者財産管理人の選任は、誰にでも関係する可能性があります。ここでは、どのような場面で選任されるのかを見ていきましょう。

① 相続人の一部が不在の場合

相続人の中に長期不在者がいると、遺産分割協議が進められなくなります。この場合、不在者の財産権を保護しながら、他の相続人との話し合いを進めるために、不在者財産管理人を立てる必要があります。

② 共有名義の財産がある場合

不動産や預金口座などの共有名義財産において、共有者の一人が不在となった場合も、不在者財産管理人の選任が検討されます。勝手に処分・移動ができないため、法的な管理人が必要になるのです。

不在者財産管理人の申立て方法と手続きの流れ

ここでは、不在者財産管理人を選任するための具体的なステップを説明します。

① 家庭裁判所へ申立て

まず、利害関係人(相続人や共同名義人など)が、家庭裁判所に対して申立てを行います。申立て先は、不在者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

② 必要書類の準備

申立てには以下のような書類が必要です。

  • 不在者財産管理人選任申立書
  • 不在者の戸籍謄本や戸籍附票
  • 利害関係人の関係を示す資料(戸籍、登記簿謄本など)
  • 不在者の財産状況が分かる資料(登記簿、預金通帳など)
  • 不在であることを証明する資料

③ 申立て~審理・選任までの流れ

書類審査のうえ、裁判所が適任と判断すれば、不在者財産管理人が選任されます。

その際、ケースによっては、家庭裁判所の書記官や裁判官から申立人へのヒアリングや事情聴取が行われることがあります。特に、申立ての理由や不在者との関係、不在の経緯などについて詳しく聞かれるケースもあります。

不在者財産管理人に選ばれるのはどんな人?

不在者財産管理人は、単に「不在者の代わりに財産を預かる人」ではありません。家庭裁判所に選任されるためには、一定の条件を満たす必要があります。では、どんな人が選ばれるのでしょうか?

一般的には弁護士や司法書士が選任される

不在者財産管理人に選ばれる人は、通常、弁護士や司法書士といった法律の専門家です。理由は、財産管理には法的な判断や手続きが必要な場面が多く、専門知識が求められるからです。

もちろん、本人や家族が希望した人物が選ばれる場合もありますが、家庭裁判所の判断により、より中立的で適切な人物として専門家が選ばれるケースが多くなっています。

利害関係のない第三者であることが基本

重要なのは「利害関係がないこと」です。不在者と金銭的なトラブルがある人や、財産を私的に利用する恐れがある人物は選ばれません。家庭裁判所は中立的な立場から、信頼できる第三者を管理人として選任します。

不在者財産管理人の権限とできること

選任された不在者財産管理人は、どんなことまでできるのでしょうか?単に財産を保管するだけではありません。法律で定められた範囲内で、さまざまな行動が可能です。

財産の保存行為(預金管理・固定資産税の支払いなど)

まず不在者財産管理人は、不在者の財産が失われないように「保存行為」を行う義務があります。たとえば、以下のような行為です。

  • 預金口座の管理
  • 公共料金や固定資産税の支払い
  • 不動産の修繕や維持管理

これらは家庭裁判所の許可なしでも実行できます。

家庭裁判所の許可を得れば処分も可能

財産を売却したり、大きな契約を結んだりといった「処分行為」には、家庭裁判所の許可が必要です。例えば、以下のような行為です。

  • 不動産の売却
  • 高額な物品の売却
  • 不動産賃貸契約の締結

このような処分は、あくまで「不在者の利益」を守ることが前提となっており、勝手に行うことはできません。また、申請を行っても必ず許可を得られるわけではありません。

不在者財産管理人に関する注意点

不在者財産管理人は、非常に重要な役割を担う一方で、注意すべき点も多く存在します。申立ての際は、費用面や選任の条件、業務範囲などをしっかりと確認しておくことが大切です。

費用は申立人の負担となることもある

不在者財産管理人の選任にかかる費用は、原則として申立人(家族や利害関係人など)が一時的に負担する必要があります。家庭裁判所への申立費用に加え、管理人の報酬も発生します。最終的に不在者の財産から支出されることとなりますが、後々に金銭トラブルに繋がることもあります。

不在者の意思確認が不要=トラブルに発展することも

不在者財産管理人は、不在者本人の意思を確認することなく財産の管理・保存・処分を行うことができます。そのため、のちに不在者が戻った場合、「勝手に処分された」「思い通りの管理がされていなかった」などのトラブルにつながる可能性があります。手続きに入る際は、周囲の関係者とも丁寧に説明し、透明性を保つことが重要です。

定期報告などの負担がある

不在者財産管理人になった場合、財産を適切に管理し、定期的に家庭裁判所へ報告を行う義務が発生します。

特に親族が管理人に選ばれた場合、想像以上に責任が重く感じられるケースもあります。そのため、候補者を指定する際は、負担の大きさも踏まえて慎重に検討することが大切です。

まとめ:不在者財産管理人を活用して、法的トラブルを回避しよう

相続や不動産の処理を進める中で、「連絡が取れない家族」 がいると、思わぬトラブルや手続きの停滞につながります。

そんなときに活用できるのが、不在者財産管理人制度です。

家庭裁判所を通じて正式に選任することで、法的にスムーズな対応が可能 になります。 「どうしたらいいかわからない…」というときは、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。