遺言の預け先はどこがいい?安心して遺言書を保管するための完全ガイド

遺言書は、財産分与や葬儀に関することなど、さまざまな希望を叶えるのに欠かせない存在です。
しかし、せっかく遺言書を作成したとしても、適切な預け先を選ばないと法的に無効になる可能性があります。

この記事では、遺言書を安全に保管する方法や各預け先のメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。「遺言書の預け先に悩んでいる」、「できるだけ確実に遺言を残したい」という方は、ぜひ参考にしてください。

遺言書を預ける重要性とは?

遺言書は、作成だけでなく「どのように保管するか」も非常に重要な要素となります。
以下では、遺言書を適切に預ける重要性について、分かりやすく解説いたします。

遺言書の法的効力と適切な保管の重要性

遺言書は、自分の財産や意思を次世代に正しく伝えるために欠かせないものです。しかし、遺言書がどれだけしっかり作られていても、それが適切に保管されていなければ法的に無効になったり、見つけてもらえないリスクも存在します。

例えば、遺言書の保管状態が悪く、破損したり紛失したりもありえます。そうすると、遺族が遺言の内容を確認できず、遺産分割の際にトラブルになる可能性もあります。

遺言書の法的な効力を最大限活用するには、安全かつ信頼できる保管場所を選ぶことが重要です。

遺言書を失くした場合のリスク

遺言書を失くしてしまうと、遺言者の意思が正しく実現されないリスクがあります。

相続人が遺言書を見つけることができないと、法定相続が自動的に適用され、財産の分配が遺言者の希望通りに行われないことがあります。また、遺言書を失くした場合、相続トラブルが起きる可能性が高く、親族間の関係性が壊れてしまうことも考えられます。

スムーズな相続を実現するためにも、遺言書を適切に保管することは非常に大切です。

遺言書の主な預け先4選

遺言書を安全に保管するための選択肢はさまざまです。代表的な預け先として、以下の4つが挙げられます。

自宅で保管する

最も手軽かつ簡単なのが、自宅で保管する方法です。特に自宅でパソコンなどを使って遺言書を作成した場合、そのまま自宅で保管するというケースも珍しくありません。

保管場所としては自分のデスクに保管する人や、仏壇やタンスに保管する人も多いようです。この時、保管場所を家族などに伝える人もいれば、伝えずに分かりやすい場所に保管しておく人もいるようです。

弁護士や司法書士などの専門家に保管してもらう

弁護士や司法書士などの専門家は、遺言書の作成についてもサポートするサービスを提供しています。同時に、そのまま遺言執行者として指定し、遺言書を預かってもらうこともできます。

遺言書の書式などが法的に問題ないかチェックしてもらえる上、安全に保管できる方法と言えます。

公証役場で保管する

遺言書には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類が存在します。

このうち、「公正証書遺言」を作成することで、遺言書を公証役場で保管ができます。公正証書遺言は原則として公証役場で作成しますが、プラスで費用を支払うことで出張をお願いすることもできます。

法務局での遺言書保管制度を利用する

令和2年7月に、「法務局における遺言書の保管等に関する省令の一部を改正する省令」が公布・施行され、法務局で自筆証書遺言を保管してもらえるようになりました。

保管手数料は申請時の3900円のみで、法務局にて原本は50年、画像データも150年保管してくれる制度です。
注意点として、遺言書のサイズや余白の大きさなどの制度上決められた様式があり、それに沿って作成する必要があります。

各預け先のメリット・デメリット

上記でご紹介した預け先は、それぞれメリットやデメリットが存在します。
以下では、それぞれの預け先のメリット・デメリットを分かりやすくご紹介します。

自宅保管はアクセスのしやすさがメリット

自宅保管は、もっとも手軽かつ相続人にとってもアクセスしやすいのが大きなメリットです。弁護士保管や公証役場保管などは、遺言書を受け取るために手続きが必要となるため、相続人にとって負担となってしまいます。

一方、自宅保管のデメリットとして、遺言書が紛失・改ざん・破棄・隠匿される危険性が挙げられます。さらに、自分で作成する「自筆証書遺言」の場合、方式などに不備があることに気づかれない可能性も無視できません。

さらには、相続人が遺言書の存在に気付かず、被相続人の意思が反映されないケースなども考えられます。

弁護士保管は専門家の助言と安心感がメリット

弁護士などの専門家に保管を依頼する場合、遺言書の内容についてのアドバイスを受けることもできます。大切に保管していても、書式が誤っていたり、必要事項が書かれていなかったりすると、法的な効力も失われてしまいます。そのため、確実な遺言書を作成でき、安全に保管できるのが専門家に預ける最大のメリットと言えるでしょう。

一方、専門家に預けるには費用がかかります。予算に合った費用であれば問題ありませんが、相談の段階でも費用が発生するため、コスト面がデメリットと言えます。

公証役場保管は公的な証明と信頼性がメリット

公証役場での保管は、公的機関での保管となるため、非常に高い信頼性が確保できます。

一方、申請には保証人を立てたり、直接公証役場へ出向く必要があるため、労力がかかってしまうのがデメリットと言えるでしょう。

法務局保管は低コストかつ高い安全性がメリット

法務局保管は2020年に始まった制度で、3900円を払うことでそれ以降は追加費用なしで長期間かつ確実な保管が可能となっています。

一定の手続きは必要ですが、低コストで安全に保管できるところがメリットと言えます。

遺言書保管に関するよくある質問 (FAQ)

遺言書の保管について多くの方が疑問を抱くポイントは、保管方法や費用、また遺言内容の変更や確認に関するものです。

ここでは、遺言書の保管に関して頻繁に寄せられる質問に対して分かりやすく回答します。

遺言の保管にかかる費用は?

遺言書の保管方法により、費用は異なります。

例えば、自宅保管であれば費用は一切かかりません。しかし、盗難や紛失、改ざんなどのリスクがあります。
一方、弁護士や司法書士などの専門家に保管を依頼する場合、年額で一定の金額がかかることが多いです。また、保管だけでなく遺言内容の執行を依頼する場合も、別途費用がかかります。
さらに、公証役場で保管する場合は、作成費用に加えて公的手数料がかかります。そして、法務局で保管する場合、申請時の手数料3900円のみで保管が可能です。

安全性とコストを考えながら、自分に合った保管方法を選びましょう。

保管中に遺言を変更したい場合はどうする?

遺言書の内容は、保管中でも変更することができます。

自宅保管の場合は、新しく遺言書を作り直すか、保管していた遺言書に追記することも可能です。
一方、公的機関に保管している場合、古い遺言書を取り下げて新しいものを作成し、再度保管手続きをする必要があります。

また、弁護士などの専門家に依頼している場合、変更の相談をすることで適切に対処してもらえるでしょう。

遺言の内容はどのようにして確認される?

遺言書の内容は、遺言者が亡くなった後に相続人や関係者が確認します。

自宅保管の場合、遺言書がすぐに発見されるように、保管場所などを共有しておくことが大切です。

また、弁護士などに預けている場合、弁護士が遺言執行者に遺言書を渡すケースと、弁護士がそのまま遺言執行者として相続などの手続きを行うケースがあります。

公証役場に保管している場合、遺言者が保管していた遺言書の写しなどを探したり、公証役場に遺言検索を依頼することで、遺言書の内容を確認することができます。

法務局に保管されている場合、遺言者が指定していた相続人に通知がいくため、確実に遺言書の存在を知らせることができます。その後、相続人などが法務局に遺言書の閲覧を申請することで、内容を確認することができます。

まとめ

遺言書の預け先には、さまざまな選択肢があります。遺言書の作成からアドバイスを受けたい場合などは、一定の費用をかけながら弁護士・司法書士などの専門家の手を借りるのもおすすめです。

本記事を参考に、あなたに合った保管方法を検討してみてください。