民事信託士とは?役割・メリット・選び方をわかりやすく解説

「民事信託士」とは、相続や資産管理の分野で注目されている新しい専門職です。特に、高齢化や資産承継の多様化が進む現代社会では、柔軟で安心な信託契約が求められる場面が増えています。本記事では、民事信託士の役割や利用するメリット、具体的な役割まで詳しく解説します。「信託って難しそう……」と感じている方でも、簡単に理解できる内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

民事信託士とは?

民事信託士とは、民事信託(家族信託とも呼ばれます)の設計や実行をサポートする専門家です。

「一般社団法人民事信託推進センター」(旧:一般社団法人民事信託士協会)の認定資格であり、弁護士や司法書士のみが取得することができます。「民事信託」の担い手を育成するために作られた資格と言えます。

民事信託は、委託者(財産を託す人)が受託者(財産を管理する人)に資産を預け、特定の目的に従って管理・運用する仕組みです。

従来の相続方法や成年後見制度に比べ、より柔軟な資産管理や相続対策が可能という点が注目されています。民事信託士は、こうした信託の設計から実務支援までを行い、委託者の意思を確実に反映させる役割を果たします。

民事信託士の具体的な役割

さまざまな課題を解決する「民事信託」ですが、「民事信託士」はどのような役割を持つのでしょうか。

主な役割として、以下の3つが挙げられます。

信託契約書の設計と作成

民事信託では、「信託契約書」という契約書に具体的な資産の運用方法や条件を記載できます。そのため、まず相談者のニーズを確認し、それに合わせたスキームを作成し、最終的に契約書の形に落とし込むという役割があります。この時、法的な観点を考慮した契約書を作ることで、契約書が無効になることを防ぐことができます。

各種手続きの補助

銀行口座の開設や、各種金融資産の名義変更など、事務手続きの補助も担当します。

また、関連して遺言書の作成が必要になった場合など、遺言執行者として就任する可能性もあります。

家族間の調整役

「民事信託」の契約は、家族間の合意が不可欠です。

そのため、家族間の調整を行い、スムーズな契約締結や運用をサポートします。

また、信託契約が複雑になる場合、法律や税務の専門家とも連携し、全体をサポートするのも、民事信託士の役割です。

このように、民事信託及びその関連業務は司法書士業務や弁護士業務に大変馴染みやすいものであるとともに、専門職として高度な知識と倫理観が求められると考えられます。

民事信託士を利用するメリット

民事信託士を利用することで、以下のようなメリットが得られます。

信託契約を確実かつスムーズに進められる

民事信託の設計には、法的知識や財務の専門知識が必要です。民事信託士はこれらの知識を活用し、委託者の意図を的確に反映した信託契約を作成します。また、手続きの進行中に生じる不明点や問題にも柔軟に対応してくれるため、初めて信託を利用する方でも安心です。

家族間のトラブルを未然に防ぐことができる

相続や財産管理において、家族間で意見の食い違いが発生することは少なくありません。民事信託士は、中立的な立場から適切なアドバイスを提供し、家族間のコミュニケーションをサポートします。これにより、信託契約が原因でのトラブル発生を防ぎ、全員が納得できる形で資産を管理・分配することが可能になります。

他の専門家との連携がスムーズ

民事信託士は、弁護士や税理士、不動産鑑定士など、他の専門家と連携するケースが多いです。これにより、法的トラブルの回避や相続税対策、不動産の評価など、民事信託に関わるさまざまな課題をワンストップで解決できます。

たとえば、複雑な資産構成や事業承継を伴う信託契約でも、民事信託士が他の専門家と協力することで、スムーズな解決が期待できます。

時間と手間を大幅に削減できる

民事信託を個人で進めようとすると、膨大な時間と労力が必要です。法律や財務に関する調査から契約書の作成、運用開始後の管理まで、すべてを自分で対応するのは現実的ではありません。民事信託士に依頼することで、これらの作業を一括で任せることができ、大幅に時間と手間を削減できます。

民事信託を最大限活用できる提案が受けられる

民事信託士は、豊富な経験と事例を基に、最適な信託設計を提案します。たとえば、特定の家族の生活支援を目的とする信託や、事業承継をスムーズに進めるための信託など、目的に応じた柔軟な提案が可能です。個々の状況に合わせたオーダーメイドの信託設計を受けられる点は、民事信託士を利用する大きなメリットです。

民事信託士を選ぶ際のポイント

民事信託の設計や運用を成功させるためには、信頼できる民事信託士を選ぶことが重要です。ここでは、民事信託士を選ぶ際に確認しておきたいポイントを解説します。適切な専門家を選ぶことで、安心して信託契約を進めることができます。

実績と専門性を確認する

民事信託士を選ぶ際には、これまでの実績や専門性を必ず確認しましょう。特に、以下のポイントをチェックすることが重要です。

  • 信託契約の取り扱い件数

経験豊富な民事信託士ほど、さまざまなケースに対応できます。

  • 専門資格の有無

税理士や弁護士などの資格を持っている場合、法務や税務面での知識も期待できます。

  • 所属団体や認定資格

民事信託士として信頼される団体に所属しているか確認しましょう。

分かりやすい説明

民事信託は委託者、受託者、受益者など複数の関係者が関わります。そのため、「法律や契約に関する専門用語を使わず、誰でも理解できる言葉で説明してくれる」民事信託士を選ぶのも大切なポイントです。

他の専門家との連携体制が整っているか

民事信託は、法律や税務、不動産など多岐にわたる知識が必要です。そのため、民事信託士が他の専門家と連携できる体制を持っているかを確認することが重要です。

例えば、法的トラブルの回避のため、弁護士と連携できるかどうか。また、相続税対策や税務申告のサポートのため、税理士と連携できるかどうかなどを確認しておくと良いでしょう。

民事信託士に依頼する際の流れ

「せっかくなら、民事信託士に依頼したい!」という方も多いでしょう。

しかし、実際にはどのように依頼すればいいか分からない、というケースもあるかもしれません。そこで以下では、民事信託士に依頼する大まかな流れを解説します。

1.初回相談を申し込む

まずは民事信託士に相談を申し込みます。この段階では、信託についての基本的な疑問を解消したり、自分の状況で信託が適しているかどうかを確認します。

初回相談を無料で実施している民事信託士も多いので、複数の専門家に相談して比較検討するのも良いでしょう。

2.現状分析と信託設計のプランニング

初回相談後、民事信託士は依頼者の資産状況や家族構成、目的を詳しくヒアリングし、最適な信託設計プランの提案をします。

どの資産を信託に含めるか、誰を受託者にするかなど、民事信託士のアドバイスを基に、具体的なプランを確定していくことが重要です。

3.契約締結する

信託設計の内容が固まったら、民事信託士が法律に基づいた信託契約書を作成します。この契約書は、信託の内容や資産の管理方法、受託者の権限などを詳細に記載する重要な書類です。なお、信託契約書が不十分だと、後々トラブルが発生する可能性があるため、注意が必要です。

4.信託運用を開始、フォローアップを受ける

信託契約がスタートした後は、受託者が契約内容に従って財産を管理・運用します。必要であれば、民事信託士が適宜サポートを行います。

まとめ

民事信託士は、複雑な資産管理や相続対策を柔軟にサポートする心強い存在です。特に高齢化が進む社会では、より重要な役割を担っています。資産の将来に不安を感じている方は、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか?