尊厳死宣言書とは?メリット・デメリットと作成手順もご紹介!

「尊厳死」は、望まない延命治療を受けることなく、自然死を迎えることです。

「尊厳死宣言書」は、その名の通り人間としての尊厳を守るため、尊厳死を望む意思を表明するため、大切な書類です。「自分らしい最期を迎えたい」、「家族に負担をかけたくない」などの想いがある方にとって、この書類は欠かせないものとなります。

本記事では、尊厳死宣言書の基本的な概要、作成手順、メリット・デメリットなどについて詳しく解説します。

尊厳死宣言書とは?その基本を徹底解説!

「尊厳死宣言書」は、自分が望む形で最期を迎えたいという意思を表明するため、大切な書類となります。

まずは、尊厳死宣言書の目的や役割について解説していきます。また、併せてこの書類がどのような場面で役立つかも見ていきましょう。

尊厳死宣言書の目的と役割

「尊厳死宣言書」とは、延命治療を望まないという意思を生前に明確に表明するための書類です。この書類を作成することで、医療機関や家族に対して、延命治療の中止や実施を希望しない旨を伝えることができます。

特に、人工呼吸器や経管栄養などの医療行為が必要になる場面では、患者本人が意思を示せないことも多いため、事前に意思を文書化しておくことが重要です。こうした書類を残しておくことにより、医療側も家族も適切な対応をとることができます。

日本における尊厳死宣言書の位置づけ

「尊厳死宣言書」は、遺言書などのように法的効力が保証されていると考える人も多いかもしれません。しかし、日本では尊厳死に関する法律はまだ整備されておらず、尊厳死宣言書に法的効力があるかどうかは明確ではありません。

しかし、家族や医療機関が患者の意思を尊重する際の重要な指針となるため、多くの医療現場で活用されています。

尊厳死宣言書を作成するメリットとデメリット

尊厳死宣言書の作成には明確な利点がある一方で、注意が必要な側面も存在します。作成に際しては、それぞれをしっかりと理解しておきましょう。

メリット

まずは、尊厳死宣言書を作成するメリットをご紹介します。

1.自分の意思を尊重できる

自分の意思がはっきりしているうちに尊厳死宣言書を作成することで、自分の意思を尊重した最期を迎えることができます。「ただ死期を引き延ばすための延命治療は断りたい」という方にとって、非常に大きなメリットがあると言えるでしょう。

2.家族の負担軽減

延命治療の中断を決断することは、家族にとって非常に大きな精神的負担を伴います。

一方、「尊厳死宣言書」をあらかじめ作成しておくことで、家族が判断を迫られる状況を避けられるのも大きなメリットと言えるでしょう。

3.医療費の削減

延命治療や終末期医療には、当然ながら医療費が発生します。「経済的な観点から、不必要な延命治療は望まない」という意思を示しておくことで、医療費を抑えることも可能です。

デメリット

次に、尊厳死宣言書を作成するデメリットをご紹介します。

1.法的拘束力が限定的

日本では尊厳死が法律で定められておらず、尊厳死宣言書に関しても法的拘束力が不明確です。そのため、医療機関が必ずしも書類通りに対応するとは限りません。医師や家族の判断で延命治療が行われることもあるため、100%希望が叶うわけではないことは念頭に置いておきましょう。

2.家族の反対が起きることがある

事前に本人の意思を示していた場合でも、家族は延命治療を希望するケースもあります。家族間の意見が対立し、トラブルになる可能性があるため、事前に内容を共有しておくことも大切です。

3.適用範囲が曖昧

書類の内容が不十分だと、どの医療行為を拒否するのかが明確でない場合があります。内容を十分に確認し、事前に医師とも連携しておくと安心です。

尊厳死宣言書の作成手順と必要書類

尊厳死宣言書を正しく作成するための基本手順を解説します。また、必要な書類についても確認しましょう。

作成の基本手順

尊厳死宣言書は、特に決まったフォーマットはありません。しかし必要な項目を記載しておかないと、いざという時に医師や家族が判断に迷う可能性があります。

以下では、それぞれのステップについて詳しく見ていきます。

1.書類の雛形を準備する

弁護士や司法書士などの専門家に依頼するか、公的機関やインターネットで雛形を取得します。

2.内容を記入

延命治療を拒否する具体的な意思や、適用する状況(例えば、末期がんや脳死状態など)を明記します。

3.署名・押印

本人が署名・押印することで、書類の有効性が高まります。

4.証人の署名(必要に応じて)

信頼できる証人に署名を依頼し、書類の信頼性を確保します。必要であれば、公証役場にて必要な手続きを行います。

5.家族や医療機関に共有

作成後は家族や主治医に意思を伝え、書類を適切に保管します。

必要な書類

上記で記載があるように、尊厳死宣言書は公証役場にて手続することで、より法的に効力が強い「尊厳死宣言公正証書」を作成することができます。

公正証書を作成する際に、必要な書類は以下の通りです。

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
  • 証人の署名が必要な場合、その身分証明書

また、公正証書として作成する場合、作成手数料がかかりますので、その分の料金も持参しましょう。

尊厳死宣言書を作成する際の注意点

尊厳死宣言書の作成は、自身の尊厳を守るためにも大切なことです。しかし、作成にあたっては注意すべきポイントがいくつかあります。

法的効力を高める方法

尊厳死宣言書を公証役場で公正証書として作成することで、法的効力を高めることができます。公正証書は、第三者が確認した書類として信頼性が高まるため、医療機関でも受け入れられやすくなります。

信頼できる証人を用意する

尊厳死宣言書だけを作成する場合、必ずしも証人は必要ありません。

しかし、公正証書として作成する際に、書類の真実性を担保するために証人を立てることができます。特に家族に証人を依頼すると、より書類の有効性が高まります。

家族との合意を得る重要性

尊厳死宣言書を作成する際には、家族との話し合いを十分に行い、意思を共有することが不可欠です。家族からの合意が得られない場合、トラブルや感情的な対立が発生する可能性があるため、慎重に進めましょう。

尊厳死宣言書に関するよくある質問(FAQ)

尊厳死宣言書について、よくある質問をまとめました。法律や医療現場の実情を踏まえ、しっかりと確認してみましょう。

Q1. 尊厳死宣言書は必ず守られるの?

医療機関や家族の同意が得られていない場合、尊厳死宣言書がそのまま実行されるとは限りません。

患者の状態や緊急性により、医療行為が優先される場合もあります。事前に主治医と相談し、共有しておくことで、尊厳死宣言書が実行される可能性が高まります。

Q2. どこで作成すればよい?

弁護士や司法書士などの専門家に依頼するか、公証役場で公正証書として作成するのが一般的です。また、インターネット上で提供される雛形を活用することも可能です。

また、作成する際には必ず家族に情報を共有しておくことも大切です。

まとめ

尊厳死宣言書は、自分の最期に関する意思を明確にし、家族や医療機関との間でトラブルを回避する重要なツールです。早めに書類を準備し、家族や医師と共有することで、安心して人生を送ることができます。

遺言書と違って、尊厳死宣言書はまだまだ一般的に普及しているとは言えません。 だからこそ、自分らしい選択を進めるためにも、本記事を参考にしながらじっくりと向き合ってみてはいかがでしょうか。