財産管理委任契約書とは?作成手順と注意点を徹底解説!

高齢化社会が進み、近年、「老い支度」として関心が高まっているのが「財産管理委任契約」です。

この財産管理委任契約書は、財産を安全に管理し、トラブルを未然に防ぐための大切な書類です。特に、高齢者や将来的に財産管理が難しくなる可能性がある方にとって、安心して生活を送るための頼れるツールとなります。

本記事では、財産管理委任契約書の基本的な概要や作成手順、注意点について詳しく解説します。

財産管理委任契約書とは?基礎知識を解説!

「財産管理委任契約書」を作成する前に、その目的や役割を理解することが大切です。この契約書がどのような場面で役立つのか、基本的な知識を深めていきましょう。

財産管理委任契約書の目的と役割

財産管理委任契約書とは、委任者(財産の所有者)が、自分の財産の管理や処分について第三者(受任者)に権限を委任するための契約書です。これは、委任者が病気や高齢などの理由で財産管理や入院の手続き、介護保険などの行政手続きができない場合でも、受任者が代理で適切に対応するために作られます。

財産管理委任契約書は、認知症や突発的な病気、入院など、一時的に判断能力が低下する場合であっても、活用されることが多いのが特徴です。

「成年後見制度」との違い

財産管理委任契約とよく間違われる制度として、「成年後見制度」があります。

成年後見制度は、認知症や精神疾患といった、精神上の障害により判断能力が低下している場合に用いられる制度です。

一方、財産管理委任契約書はこうした縛りはなく、作成することができます。例えば、判断能力に問題はないものの、病気などの理由で体が不自由で支払いや財産管理が難しくなるケースにも用いられます。また、財産管理委任契約は、「いつから財産管理を行う」など、時期を自由に決めることができるなど、自由度が高いのが特徴です。

利用される具体的なシーン

財産管理委任契約書は、以下のような状況で役立ちます。

  • 高齢の親が自分の財産管理を子どもに依頼する場合
  • 長期出張や留学などで日本を離れる間、財産を信頼できる第三者に管理してもらう場合
  • 認知症や病気による判断能力の低下が懸念される場合

財産管理委任契約書は、手順を守れば特に作成に制限などはないため、上記以外の状況で利用が可能です。

財産管理委任契約書の作成方法と必要書類

実際に財産管理委任契約書を作成するには、どのような手順が必要なのか、気になる方も多いかもしれません。ここでは具体的な手順や、必要となる書類について、詳しくご紹介します。

契約書作成の基本の手順

財産管理委任契約書の作成の流れは、以下の通りです。

1.事前相談

専門家(弁護士、司法書士、行政書士)などに相談し、契約内容を整理します。

専門家の介入がなくとも、契約書を作成することはできますが、トラブルを避けるためにも専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

2.契約内容の明確化

委任する財産の範囲や、管理・処分の具体的な権限を明確にします。

3.契約書の作成

上記で決めた情報を基に、契約書を作成します。

4.署名・押印

委任者と受任者が契約書に署名・押印します。

5.公証役場で手続きをする

公証役場に契約書を持参し、本人確認後に公正証書として完成します。

必要な書類リスト

契約書作成時には、以下の書類が必要です。忘れずに用意しておきましょう。

  • 本人確認書類:委任者・受任者の運転免許証、マイナンバーカードなど
  • 財産関連資料:預貯金通帳、年金に関する書類など
  • 印鑑証明書:委任者および受任者のもの
  • 委任契約に関する書面:事前に契約内容をまとめておくと良いでしょう

契約書作成時のポイント

契約書には、以下の事項を詳細に記載することが重要です。

  • 委任者と受任者の指名や住所、連絡先、日付を記入
  • 委任する財産の範囲(預貯金、不動産、証券など)
  • 財産の管理・処分に関する具体的な指示
  • 具体的な期限や契約終了の条件
  • 受任者への報酬(必要であれば明記)

記載が不十分だと、後々のトラブルの原因となるため注意しましょう。

財産管理委任契約書の費用と相場

契約書作成にはどの程度の費用がかかるのでしょうか。ここでは、費用の内訳や相場感、費用を抑える方法について解説します。

作成にかかる費用の内訳

財産管理委任契約書の作成には、以下の費用がかかります。

  • 公証人の手数料:契約書1通につき約1万円~2万円
  • 専門家への依頼費用:司法書士や行政書士に依頼する場合、5万~10万円が相場

合計で6万円~12万円程度かかる計算となります。ただし、これは契約内容や専門家によっても異なるため、比較検討してみると良いでしょう。

費用を抑える方法

財産管理委任契約は、特に決まった形式はないため、自分で作成することもできます。

ただし、不備の心配がある場合や、信頼性を高めるためには、専門家に相談するのがおすすめです。費用対効果をよく考え、慎重に検討しましょう。

財産管理委任契約書を作成するメリットとデメリット

財産管理委任契約書には多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。これらを正しく理解しておくことが大切です。以下では、具体的なメリット・デメリットをご紹介します。

メリット

まずは、財産管理委任契約書を作成することで得られる主なメリットを見ていきましょう。

財産管理がスムーズになる

委任者が判断能力を失った場合でも、スムーズに財産管理が継続できます。

財産管理委任契約書がない場合、各金融機関や役所ごとに委任状を作成する必要がありますが、その手間がなくなるのが最大のメリットと言えるでしょう。

財産トラブルを未然に防止できる

例えば、委任者の子どもが複数いる場合、特定の子どもだけに財産管理を委任するケースも考えらえます。その際、こうした契約書がないと、後々に相続トラブルになってしまうことも考えられるでしょう。しかし、明確な契約内容があれば、相続人同士の争いを防ぐことができます。

自由度が高く、委任内容や時期などを決められる

必要に応じて契約内容を盛り込むことができるため、「入院期間中のみ」、「特定の金融機関の預金引き出しのみ」など、必要な範囲で委任内容を決められます。

デメリット

一方で、作成にあたって注意しておきたいデメリットについても、具体的に解説します。

受任者の監督機関がない

財産管理委任契約は、弁護士や裁判所といった専門機関や第三者が介入しなくても結ぶことができます。このため、管理すべき財産を使ってしまうなど、不正リスクが生じる可能性があるのがデメリットと言えるでしょう。

受任者には、委任者が強く信頼している人物や、弁護士や司法書士といった専門家を選ぶのがおすすめです。

費用が発生する

契約書の作成や公正証書化には費用がかかるため、初期費用の負担があります。

さらに、専門家に依頼する場合は、別途相談費用や契約書の作成手数料もかかるため、念頭に入れておきましょう。

財産管理委任契約書を作成する際の注意点

スムーズで安心な契約手続きのためには、どのような点に注意すべきでしょうか?以下では、受任者の選び方や契約内容の明確化について確認していきましょう。

信頼できる受任者を選ぶポイント

受任者には、委任者の財産を適切に管理・運用する責任があります。親子関係がなくてはならないなどの縛りもないため、どなたでも受任者にすることができます。

とはいえ、受任者は「誰でもいい」という訳ではありません。以下のような基準で選定しましょう。

  • 長期的に信頼できる人物であること(親族や専門家)
  • 財産管理の経験や知識があること

専門家を受任者とする場合は、月額報酬が必要なため、よく考えて選ぶ必要があります。

トラブルを避けるための契約内容の明確化

契約書を作成する際、「財産のどこまでを管理するか」、「いつまで管理を続けるか」といった条件を明確にしておかないと、委任者が望んでいない範囲まで管理が及ぶ可能性があります。

また、あいまいな表現では受任者が困惑し、トラブルに繋がることも考えられます。契約内容は、具体的かつ詳細に記載することがポイントです。

まとめ

財産管理委任契約書は、委任者の財産を安全に管理し、トラブルを防ぐ重要なツールです。早めに契約内容を整理し、公証人や専門家と相談することで、将来的な不安を減らすことができます。ぜひこの記事を参考に、第一歩を踏み出してください!