成年後見と任意後見の違い|どちらを選ぶべき?

「親の物忘れがひどくなってきたけれど、後見人制度を検討すべき?」

「将来に備えて、自分で後見人を決めておくことはできるの?」

認知症などによる判断能力の低下に備える「後見制度」には、大きく分けて「成年後見(法定後見)」と「任意後見」の2種類があります。一見似ているようですが、その中身や「いつ申し込むべきか」というタイミングは全く異なります。

本記事では、両者の決定的な違いを比較し、あなたの状況に合わせた最適な選び方を分かりやすく解説します。

成年後見と任意後見の違いとは?基本の仕組みを比較

最大の違いは、「誰が後見人を選ぶか」と「いつ手続きをするか」という点にあります。

  • 成年後見(法定後見): すでに判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所が後見人を選びます。
  • 任意後見: まだ元気で判断能力があるうちに、自分で後見人を指名して契約を結びます。
比較項目成年後見(法定後見)任意後見
開始時期判断能力が低下した「後」判断能力がある「うち」に契約
誰が選ぶか家庭裁判所が決定本人が自由に選べる
自由度裁判所の監督下で厳格契約内容で自由に決められる
後見人の資格親族以外(弁護士等)も多い親族や信頼できる人を指定可

成年後見(法定後見)の特徴|急いで対策が必要な方向け

すでに口座が凍結されている、あるいは本人が自分一人で契約手続きを行うのが困難な場合に利用されるのが法定後見です。

成年後見を利用するメリット

最大のメリットは、「今すぐ資産凍結を解除し、本人を守れる」点です。

後見人には、本人が不利益な契約(高額な商品の購入など)を後から無効にできる「取消権」があります。悪徳商法などの被害から本人の財産を強力に守ることができます。

知っておくべきデメリットと注意点

家庭裁判所が後見人を選ぶため、必ずしも家族が選ばれるとは限りません。

近年では、親族間のトラブル防止のため、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれるケースが約8割にのぼります。

また、一度始めると本人が亡くなるまで原則辞められず、節税対策や資産運用などの柔軟な財産活用も制限されます。

任意後見の特徴|将来の不安に備えたい方向け

「将来、認知症になったとしても自分の意思を尊重してほしい」と考えるなら、任意後見が適しています。

任意後見を利用するメリット

最大のメリットは、「信頼できる人をあらかじめ指名できる」安心感です。

子どもや親族はもちろん、信頼できる専門家を自分で選べます。

また、何をどこまで任せるかを自由にカスタマイズできるため、法定後見よりも本人の希望を反映した生活が送りやすくなります。

知っておくべきデメリットと注意点

任意後見人には、法定後見のような「取消権」がありません。

そのため、本人が勝手に行ってしまった契約を後から無効にすることができず、詐欺被害などの対策としては不十分な面があります。

また、公正証書での契約が必要なため、元気なうちに手間と費用をかけて準備しておく必要があります。

【診断】あなたはどちらを選ぶべき?判断基準を解説

現在の本人の状況によって、利用できる制度は自動的に決まります。

任意後見を選ぶべきケース(まだ元気な方)

任意後見が向いているのは、以下のようなケースです。

自分の将来を自分でデザインしたい方

「この施設に入りたい」「この人に財産を管理してほしい」という明確な意思がある場合は、任意後見がおすすめです。

家族の負担を減らしたい方

あらかじめ契約しておくことで、いざという時に家族が裁判所での複雑な手続きに追われるのを防げます。

成年後見(法定後見)を選ぶべきケース(既に判断能力が不十分な方)

成年後見(法定後見)が向いているのは、以下のようなケースです。

緊急の手続きが必要

銀行口座が凍結され、施設費用が払えない方や、不動産を売らなければ生活が立ち行かない場合は、成年後見がおすすめです。

法的トラブルを抱えている

本人が不当な契約を繰り返しており、法的な力で契約を取り消す必要がある場合も、成年後見を選んだ方が良いでしょう。

後見制度を利用する際にかかる費用の目安

後見制度には、初期費用だけでなく、月々のランニングコストがかかる点に注意しましょう。

初期費用(申し立て・契約時)

法定後見の場合、申し立ての実費や鑑定料などで5万~15万円程度かかります。

任意後見の場合は、公正証書の作成費用などで数万円、専門家に文案作成を依頼する場合は別途報酬(10万~20万円程度)が必要です。

月額費用(ランニングコスト)

専門家が後見人や監督人についた場合、報酬として月額1万~6万円程度が発生し、本人が亡くなるまで続きます。

これは本人の財産から支払われます。

成年後見と任意後見に関するよくある質問(Q&A)

どちらの制度が今の状況にふさわしいか、よくある疑問から解決のヒントを探しましょう。

Q.家族が後見人になれば、費用はかかりませんか?

家族が後見人になる場合、後見人への報酬を0円に設定することは可能です。ただし、家庭裁判所の判断により報酬が認められることもあります。

任意後見の場合は「監督人」が必ずつくため、その報酬(月1~3万円程度)は避けられません。

Q.任意後見を契約したあと、気が変わったら解約できますか?

実際に制度が始まる前(認知症になる前)であれば、公証役場で手続きを行うことで契約を解除できます。

ただし、一度制度が始まってしまった後は、正当な理由がない限り解任は難しくなります。

Q.どちらの制度も使わずに済む方法はありますか?

「家族信託」という選択肢があります。

財産管理のみに特化するのであれば、家族信託の方が自由度が高く、裁判所への報告義務もないため、検討する価値が十分にあります。

まとめ:状況に合わせた「早めの相談」が家族を救う

成年後見と任意後見、どちらを選ぶべきかの最大の分かれ道は「本人の現在の判断能力」です。

しかし、それ以上に重要なのは「誰が主導権を握るか」という点にあります。

任意後見は、あなたが人生の主役として「最期まで自分らしくありたい」という願いを叶えるためのセルフプロデュースです。

元気なうちにしか結べない「期限付きの特権」であり、これを用意しておくことは、将来、家族を「どうすればいいかわからない」という迷いから解放することに繋がります。

成年後見(法定後見)は、家族が直面している「凍結された日常」を動かすためのレスキュー(救済)です。

本人の意思を確認することが難しくなった今、法的な後ろ盾を得ることで、大切な財産を適切に守り、必要な介護サービスへと繋げる唯一の手段となります。

「まだ早い」と思っているうちに、選べる選択肢は刻一刻と減っていきます。

もし、あなたやご家族が今、将来の不安を少しでも感じているのなら、それは対策を始める「最後の適齢期」かもしれません。

後見制度は、家族の絆を壊さないための防波堤です。

まずは、ご家族で「これからの生活で何を一番大切にしたいか」を話し合うことから始めてみてください。

その一歩が、将来の大きな安心へと繋がるはずです。

ゼヒトモ内でのプロフィール: 司法書士法人アレスコ事務所ゼヒトモの司法書士サービス仕事をお願いしたい依頼者と様々な「プロ」をつなぐサービス