遺留分侵害額請求の手続きを徹底解説|期限・計算方法・請求の流れ

「遺言書の内容が自分の相続分を侵害している…」

「兄弟だけが多くの財産をもらっていて、自分だけ取り分が極端に少ない」

このような状況に直面したとき、相続人が最低限の財産を受け取る権利として認められているのが「遺留分(いりゅうぶん)」です。

そして、その遺留分を侵害された場合に金銭の支払いを求める手続きが、「遺留分侵害額請求」です。

本記事では、2019年の民法改正で金銭請求に変わったこの制度について、最も重要な「請求の期限」や「計算方法」、そして「具体的な請求の流れ」までを徹底的に解説します。

遺留分侵害額請求とは?改正された制度の基本

遺留分侵害額請求は、故人の遺言によって相続財産が偏ってしまった際に、遺留分権利者(相続人)の生活保障と公平性を図るために設けられた制度です。

遺留分とは何か?

遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に保証されている、最低限の相続割合です。

遺言書に「全財産をA氏に遺贈する」と書かれていても、この権利を侵害することはできません。

「遺留分侵害額請求」の定義(旧制度との違い)

この制度は、2019年7月1日の民法改正により、旧制度の「遺留分減殺請求」から名称と内容が変更されました。

以下では、旧制度のとの違いについて、詳しくご紹介します。

旧制度「遺留分減殺請求」との違い

旧制度では、「贈与または遺贈の目的物を現物返還請求する」ことが可能でした。

例えば、遺言によって長男が4000万円相当の不動産と4000万円分の預貯金を全て相続した場合、次男が遺留分減殺請求をすると4分の1が次男のものとして認められます。

その際、1000万円相当の不動産と1000万円の預貯金が次男のものとなるため、不動産の所有権の一部が共用になります。

こうしたケースにおいて、後々の処分や管理にまつわるトラブルが多発したため、新制度では、金銭で2000万円を次男に支払うことで解決できるようになりました。

請求できる人(遺留分権利者)

遺留分を請求できる権利者(遺留分権利者)は、配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属(父母、祖父母など)などの法定相続人に限られます。

ただし、兄弟姉妹には、遺留分がありません。

遺留分侵害額請求の最も重要な期限(時効)

遺留分侵害額請求は、権利が認められているにもかかわらず、手続きをしなければ時効によって消滅してしまうという非常に厳しい期限(時効)があります。

請求権には2種類の時効がある

遺留分侵害額請求権には、以下の二つの時効があります。

特に1年の短期消滅時効は、知らぬ間に過ぎてしまうリスクがあるため、注意が必要です。

時効1:短期消滅時効(1年間)

遺留分侵害額請求は、相続開始および遺留分の侵害を知った時から1年以内に行使しなければなりません。

これを過ぎると、時効により請求権が消滅してしまいます。

時効2:長期消滅時効(10年間)

相続開始の時から10年で完成します。

この期間が経過すると、侵害を知らなかったとしても請求権は消滅します。

期限の重要性

1年の時効は非常に短いため、遺留分の侵害を知ったら、請求の意思を早急に相手に伝えることが最重要です。

請求の意思表示をした時点で、時効の完成が猶予されます。

まずは内容証明郵便などで意思表示をすることが、権利を守るための絶対条件となります。

遺留分侵害額の具体的な計算方法

遺留分侵害額を正確に計算することは、請求手続きの成否を分ける重要なポイントとなります。

計算は、「遺留分算定の基礎となる財産」を確定することから始まります。

遺留分算定の基礎となる財産

遺留分を計算するための基礎となる財産は、被相続人が相続開始時に持っていた財産に、生前贈与された財産を加算し、負債を控除して算出されます。

加算される財産

被相続人の相続開始時の財産(現金、不動産など)に加え、生前贈与された財産が加算されます。

原則として相続開始前1年以内の贈与が対象ですが、遺留分侵害の意図が双方にあったと認められる場合には、それより前の贈与も加算の対象となることがあります。

控除される負債

被相続人の債務(借金、未払金など)は、遺留分算定の基礎となる財産の額から控除されます。

遺留分の割合

遺留分算定の基礎となる財産額が確定したら、次に遺留分の割合を算出します。

総体的遺留分(全体の割合)

相続人全員の遺留分の合計額は、以下の通りです。

  • 直系尊属(父母など)のみが相続人の場合:財産の1/3
  • 上記以外の場合(配偶者や子がいる場合):財産の1/2

個別的遺留分(個々の相続人の割合)

総体的遺留分に、各相続人の法定相続分を乗じて、個々の相続人の遺留分の額を算出します。

侵害額の算定

最終的な侵害額は、以下の計算式で求められます。

  • (個別的遺留分の額)-(実際に受け取った財産の額)=侵害額

この侵害額に相当する金銭を、相手方(受贈者・受遺者)に請求します。

遺留分侵害額請求の具体的な進め方(手続きの流れ)

遺留分侵害額請求の手続きは、話し合いから始まり、決裂した場合は調停、そして最終的には訴訟へと進みます。

ステップ1:内容証明郵便による意思表示(交渉開始)

請求手続きを開始するにあたり、最も重要かつ最初に行うべきステップです。

目的と効果

相手方に遺留分を請求する意思を明確に伝え、1年の時効完成を阻止することが最大の目的です。

内容証明郵便を送ることで、意思表示の証拠を残し、相手方と交渉中であることを明確にしておくことが、将来的な時効主張への防御になります。

記載すべき事項

誰が、いつ、誰に対して遺留分侵害額の請求の意思表示を行ったか、また請求額、支払い期限などを明確に記載します。

ステップ2:当事者間の交渉

内容証明郵便を送付した後、まずは当事者間で遺留分侵害額の支払いについて話し合いを行います。

交渉の結果、合意に至れば、その内容を合意書(公正証書推奨)として作成し、金銭の支払いを受けて終了となります。

ステップ3:家庭裁判所での調停

当事者間の交渉が決裂し、話し合いでの解決が困難となった場合、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申立てます。

調停では、裁判官や調停委員を介して、中立な立場で話し合いを行う手続きです。

ステップ4:地方裁判所での訴訟

調停でも合意に至らなかった場合の最終手段として、地方裁判所に訴訟を提起します。

裁判所が証拠に基づき、遺留分侵害額の有無、金額、支払い方法について判決を下します。

まとめ:期限厳守と正確な計算が成功の鍵

遺留分侵害額請求は、1年の時効という非常に短い期限との戦いであり、スピードが何よりも重要です。

権利を行使するためには、まず内容証明郵便による意思表示を迅速に行い、時効の完成を阻止することが成功の第一歩となります。

また、遺留分の計算は、生前贈与の加算期間や負債の控除など、専門的な知識が必要なため、正確な財産調査と計算が不可欠です。

交渉・調停・訴訟といった複雑な手続きを円滑に進め、遺留分を確実に獲得するためにも、弁護士などの専門家に依頼し、法的サポートを受けることを強くお勧めします。

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