相続財産清算人とは?基礎知識から手続きまでを徹底解説

「身寄りのない親族が亡くなったけれど、財産の行方がわからない…」

「知人が亡くなって、借金の取り立てが来た。相続人がいないと聞いているがどうすればいい?」

もし、あなたがこのような状況に直面しているなら、相続財産清算人という制度が鍵を握るかもしれません。

これは、相続人がいない場合に、故人の財産を管理・整理するための重要な役割を担います。

本記事では、相続財産清算人の役割から具体的な手続きまで、わかりやすく解説します。

相続財産清算人とは?基礎知識をわかりやすく解説

2023年4月の民法改正により、従来の「相続財産管理人」という名称は「相続財産清算人」へと変わりました。

この役割は、被相続人の財産を適切に管理・清算し、利害関係者の権利を守るために不可欠なものです。

相続財産清算人の定義

相続財産清算人とは、相続人が一人もいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合に、故人の財産を管理・清算する役割を家庭裁判所から選任された人のことです。

主な職務は、故人の借金(債務)を返済し、特別縁故者による申立てがなければ最終的に国庫へ帰属させる手続きを行うことです。

なぜ相続財産清算人が必要なのか?

相続財産清算人が必要とされる主な理由は、以下の3つです。

相続人がいない

亡くなった方に、戸籍上相続人となる人がいない場合や、全員が相続放棄をした場合に財産が放置されるのを防ぐためです。

H4/利害関係者の保護

故人の債権者(お金を貸していた人)や、遺贈を受けた人、特別縁故者といった人々の権利を守るためです。

H4/財産トラブルの整理

故人の借金などのマイナス財産が放置されると、社会的な混乱を招く可能性があります。相続財産清算人は、これらのトラブルを法的に整理する役割を担っています。

相続財産清算人の選任手続き

相続財産清算人は、家庭裁判所に申し立てて選任してもらう必要があります。この手続きは複雑なため、一般的には弁護士などの専門家に依頼することが多いです。

申立ての要件と申立人

相続財産清算人の申立てができるのは、利害関係者または検察官です。

利害関係者とは、故人の債権者や遺贈を受けた人、特別縁故者といった、相続財産に何らかの利害関係を持つ人を指します。

申立てから選任までの流れ

申立てから選任までには、いくつかのステップがあります。

家庭裁判所への申立て

申立書と必要書類を揃えて、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

官報による公告

裁判所は、相続人捜索のため、官報に「相続人捜索の公告」を掲載します。

この公告から6か月間は、相続財産の清算は開始されません。

選任審判と通知

公告期間満了後、相続人が現れなければ、家庭裁判所は相続財産清算人を選任する審判を行います。

必要となる主な書類

申立てには、以下のような書類が必要となります。故人の戸籍謄本など、ご自身で取得が難しい書類もあるため、早めの準備が必要です。

  • 故人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)
  • 故人の住民票除票
  • 相続財産に関する資料(不動産登記簿謄本、預貯金通帳の写しなど)
  • 申立人の利害関係を証明する書類(金銭消費貸借契約書など)

相続財産清算人の主な職務内容

相続財産清算人は、選任された後、家庭裁判所の監督のもとで、故人の財産に関する一連の業務を行います。

財産の調査と管理

まず、故人の財産と借金をすべて洗い出し、財産目録を作成します。不動産や預貯金など、故人の財産を適正に管理します。

相続債務の弁済と清算

官報に「債権申出の公告」を掲載し、故人に債権を持つ人に申し出るよう促します。

申し出があった債務については、相続財産の中から支払いを行います。

特別縁故者への財産分与

債務の弁済が終わった後、財産が残っている場合、故人と特別に密接な関係にあった特別縁故者からの申立てがあれば、家庭裁判所がその人物を認定し、財産を分与します。

相続財産清算人の報酬と費用

相続財産清算人の活動には、報酬と費用が発生します。

これらが誰によって、どのように支払われるのかを理解しておくことが重要です。

報酬は誰が支払う?

相続財産清算人の報酬は、原則として相続財産から支払われます。もし相続財産が不足する場合は、申立人が負担することになります。

報酬額の目安

報酬額は、相続財産の金額や管理の複雑さなどを考慮して、家庭裁判所が決定します。

相場として、10万円~100万円程度が多いですが、親族が相続財産清算人に選ばれた場合は報酬は発生しません。

申立てにかかる費用

申立て時には、裁判所に支払う申立費用として、収入印紙800円分が発生します。

その他に、官報公告料が5000円、書類送付のための郵券代が2000円程度発生します。

また、ケースによっては追加で予納金を求められることもあります。

相続財産清算人に関するよくある質問(FAQ)

以下では、相続財産清算人についてよく聞かれる質問をQ&A形式でまとめました。

Q1:相続財産清算人と遺産整理業務は何が違うのですか?

遺産整理業務は、相続人がいる場合に、相続人に代わって財産を整理するサービスです。

一方、相続財産清算人は、相続人がいない場合に、裁判所によって選任される公的な役割を担います。

Q2:相続財産に借金しかない場合でも、選任してもらえますか?

はい、選任してもらえます。

ただし、相続財産から報酬や費用を賄えない場合、申立人がそれらを負担することになります。

Q3:相続財産清算人には誰が選ばれますか?

通常は、弁護士や司法書士といった法律の専門家が選任されます。

Q4:相続財産清算人の選任にかかる期間はどのくらいですか?

申立てから選任までは、官報公告の期間を含めて6か月以上かかります。

また、清算が完了するまでには、さらに時間がかかる場合があります。

まとめ

相続財産清算人制度は、相続人がいない場合の故人の財産整理において、非常に重要な役割を担っています。

これにより、放置される財産から生じるトラブルを防ぎ、故人の債権者や特別縁故者の権利を守ることができます。

しかし、この手続きは複雑で、法的な知識が不可欠です。

申立てから清算までの一連のプロセスを適切に進めるためには、弁護士や司法書士といった専門家のサポートが欠かせません。

身寄りのない方の相続財産でお悩みの方は、まず専門家に相談し、状況に応じた最善の策を検討することをお勧めします。

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