自筆の遺言書が出てきたら?家庭裁判所での“遺言検認”とは

「自筆証書遺言が出てきたけど、どうすればいいの?」

そんなときに必要になるのが「遺言検認」という手続きです。

特に、自宅で保管されていた手書きの遺言書などは、家庭裁判所で検認を受けなければ効力を持ちません。

本記事では、遺言検認の意味や手続きの流れ、必要書類、注意点などを初心者にもわかりやすく解説します。

遺言検認とは?

遺言書を見つけたとき、「これってすぐに使えるの?」と疑問に思う方も多いはずです。

とくに自筆で書かれた遺言書は、そのままでは法的な効力を持ちません。ここでは、「遺言検認」という手続きがどんなもので、どのような場面で必要になるのかを解説していきます。

遺言検認はどんな手続き?

遺言検認とは、家庭裁判所が自筆証書遺言を開封し、その内容や状態を確認する手続きです。

これは、遺言書の偽造や変造を防止し、相続人に遺言の存在と内容を知らせることを目的としています。

ただし、検認では遺言の有効性そのもの(例えば遺言能力や形式的要件の有無)については判断されません。形式に不備があった場合、後日別途「遺言無効確認の訴え」などを通じて争われる可能性があります。

検認が必要なケース・不要なケース

遺言書にはさまざまな種類があり、場合によっては検認が必要でないケースも存在します。ここでは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

検認が必要なケース

検認が必要となるのは、たとえば「自筆証書遺言」や「秘密証書遺言」などの、作成後に公的なチェックを受けていない遺言書です。

自宅や貸金庫などで保管されていた自筆の遺言書は、本人が書いたものであるかどうか、偽造や変造がないかなどを家庭裁判所で確認する必要があります。

また、秘密証書遺言も同様に、遺言内容は非公開であっても封印された状態で保管されていたため、開封と同時に検認を受けることが求められます。

いずれも、検認を経なければ法的な手続きには使えないため、見つけた際には速やかな対応が必要です。

検認が不要なケース

一方、検認が不要となるのは、公正証書遺言や法務局に保管されている自筆証書遺言です。

公正証書遺言は、公証人が関与して作成されているため、その内容や存在がすでに公的に認められており、検認手続きを省略できます。

また、2020年から開始された「法務局の遺言書保管制度」を利用して作成・預けられた自筆証書遺言も、すでにその真実性や原本管理が確保されていることから、家庭裁判所での検認は不要とされています。

これらの形式の遺言書であれば、検認を飛ばしてすぐに相続手続きを開始することが可能です。

遺言検認をしないとどうなる?

「検認って面倒そう…」「やらなくてもいいのでは?」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、遺言検認を行わずに遺言書を使おうとすると、さまざまなトラブルや手続きの行き詰まりを招く可能性があります。

ここでは、検認を怠ると具体的にどのような支障があるのかをご紹介します。

不動産登記や預金解約ができない

検認を受けていない自筆証書遺言では、不動産の名義変更や銀行口座の解約などの相続手続きを進めることができません。

金融機関や法務局は、検認済みの遺言書の提出を求めるため、検認を受けることが不可欠です。

検認せず開封すると過料の対象に

家庭裁判所での検認を経ずに自筆証書遺言を開封した場合、民法第1005条により5万円以下の過料が科される可能性があります。

また、遺言書の内容に疑義が生じ、相続人間でのトラブルの原因となることもあります。

遺言検認の手続きの流れ

実際に遺言検認を進めるには、どんな準備が必要で、どのようなステップを踏むのか。

この章では、申立てから検認完了までの一連の流れを、具体的に解説していきます。

申立てに必要な書類

検認の申し立てに必要な書類は、以下の通りです。

  • 検認の申立書
  • 遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書の原本
  • 申立人の印鑑
  • 収入印紙(800円分)
  • 連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって異なる)

これらの書類を準備し、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。

検認の実施と期日の流れ

実際に遺言検認を進めるには、どんな準備が必要で、どのようなステップを踏むのでしょうか。ここでは、申立てから検認完了までの一連の流れを、具体的に解説していきます。

1.申し立て

まず、遺言検認の手続きは、相続人や遺言書の保管者が家庭裁判所に対して「検認申立書」を提出するところから始まります。

必要書類が揃ったら、収入印紙や郵便切手などの費用を添えて提出し、正式な申立てを行います。

2.通知の送付

申立てが受理されると、家庭裁判所から検認期日(=遺言書の開封・検認を行う日程)の通知が、相続人全員に対して郵送されます。

これは、遺言の存在や内容を他の相続人にも知らせるという重要な目的があるため、相続人全員への通知は法律上の義務とされています。

ただし、当日に出席が必要なのは申立人のみで、相続人は任意参加となります。必ずしも全員が立ち会わなければならないわけではありません。

3.開封・内容の確認

検認当日は、原則として申立人が遺言書の原本を家庭裁判所に持参し、裁判官の立ち会いのもとで封を開けます。

すでに開封されている場合でも、家庭裁判所が遺言書の現物を確認し、その状態や内容を記録する「検認調書」を作成します。

検認済証明書の取得とその後の手続き

検認後、希望すれば家庭裁判所から「検認済証明書」を発行してもらうことができ、それを添付することで不動産登記や金融機関での手続きに利用できます。

この証明書の取得には、遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。

遺言検認に関するよくある質問(FAQ)

初めて検認に取り組む方から寄せられることの多い疑問を、Q&A形式でまとめました。

手続きを進めるうえで迷いやすいポイントを事前に確認しておきましょう。

Q1. 遺言検認はどの家庭裁判所に申し立てるの?

遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

例えば、遺言者が東京都に最後に住んでいた場合は、東京家庭裁判所が管轄となります。

Q2. 遺言が複数出てきたらどうすれば?

複数の遺言書が見つかった場合、原則として最新の日付の遺言書が有効とされます。

すべての遺言書について検認を受け、内容や日付を確認した上で、どの遺言が有効かを判断する必要があります。

Q3. 検認にはどれくらい時間がかかる?

申立てから検認期日まで、通常1ヶ月程度かかります。

ただし、実際の検認期日は、家庭裁判所の混雑状況や必要書類の不備によって前後するため、余裕を持ったスケジュール管理が必要です。

まとめ|遺言検認は“最初の一歩”。確実に手続きを進めよう

自筆証書遺言が見つかった場合、家庭裁判所での検認手続きを行うことは相続手続きの第一歩です。

検認を受けることで、遺言書の内容が正式に確認され、相続手続きを円滑に進めることができます。

手続きには時間がかかることもあるため、早めの対応が重要です。少しでも不明点がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。