生前対策で養子縁組を活用するメリットと注意点を解説!
生前対策を考える際、「養子縁組」を活用することで、相続税対策や財産承継の選択肢を広げることができます。
しかし、法律や税制のルールを知らずに養子縁組を行うと、思わぬトラブルに発展する可能性があり、大変危険です。
本記事では、生前対策としての養子縁組のメリット・デメリット、注意点を詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
生前対策とは?養子縁組を活用する前に知っておきたい基礎知識
相続や財産承継をスムーズに進めるためには、「生前対策」をしっかり行うことが重要です。特に「養子縁組」は、相続税の軽減や事業承継の手段として活用されるケースが増えています。
しかし、養子縁組には法律上の要件やリスクも伴うため、基礎知識をしっかり理解した上で進めることが大切です。
以下では、まず「生前対策」や「養子縁組」についての基礎知識をご紹介します。
生前対策とは?
生前対策とは、自分が亡くなった後の財産分割や相続税対策を考え、事前に準備をしておくことを指します。家族間のトラブルを防ぎ、スムーズに財産を承継できるようにするための手段です。
主な生前対策の方法には、以下のようなものがあります。
遺言書の作成
最も代表的な生前対策の方法は、遺言書を作成することです。遺言は、亡くなった後の財産分割を明確にし、スムーズな相続を実現できる手段として、広く用いられています。
生前贈与
生前贈与は、生きている間に財産の一部を贈与し、相続時の財産を減らすことです。
こうすることで、相続税の節税が可能となる一方、相続人は相続まで待たずに財産を活用することもできます。
生命保険の活用
よく用いられる方法として、生命保険の活用も挙げられます。遺産は遺産分割協議や遺言に従って分割されますが、死亡保険金は受取人が手続きをすることで受け取ることができます。そのため、相続税の支払い資金としても活用でき、相続人にかける負担を最小限に抑えることができます。
養子縁組
養子縁組は、法律上の親子となる手続きのことです。血のつながりがなくても、養子になると法律上は実子と同じように扱われます。この制度を用いることで、血縁者ではない人にも相続の権利を与えることが可能となります。
養子縁組とは?法的な仕組みを理解しよう
養子縁組は、血縁関係のない者同士が法律上の親子関係を結ぶ制度です。養子になることで法定相続人となり、財産を相続できるようになります。
養子縁組には、以下の2種類があります。
普通養子縁組
実親との親子関係を残したまま、新たな親子関係を築く養子縁組です。生前対策として活用されるのは、主にこちらの養子縁組制度となります。
養子縁組を結ぶと、法律上の法定相続人と認められるため、親となった人の財産を相続することができます。
普通養子縁組では、成人でも養子になれるのが特徴です。養子になるのが未成年の場合は一部例外を除き、家庭裁判所の許可が必要となります。
特別養子縁組
特別養子縁組は、実親との関係を完全に解消し、新たな親子関係を結ぶものです。こちらは15歳未満の子どもが対象で、主に児童福祉の目的で用いられます。こちらも家庭裁判所の許可が必要です。
養子縁組を活用した生前対策のメリット
養子縁組を生前対策として活用すると、相続税の軽減や事業承継のスムーズ化など、さまざまなメリットがあります。
ここでは、代表的なメリットを3つ紹介します。
① 相続税が軽減できる
養子縁組を行うことで法定相続人の数が増え、相続税の基礎控除額を引き上げることができます。
基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるため、養子を迎えることで相続税の課税対象額を減らし、税負担を軽減することが可能です。また、法定相続人が増えることで生命保険の非課税枠も拡大し、より有利な相続対策を行うことができます。
② 事業や財産を確実に承継できる
実子がいない場合や、特定の後継者に事業を引き継ぎたい場合に、養子縁組が有効な手段となります。血縁関係がなくても正式な後継者として養子を迎えることで、相続の順位を変更し、財産を確実に承継できるようになります。
特に家業を持つ家庭では、事業承継をスムーズに進めるために養子縁組を活用するケースが増えています。
③ 老後のサポートを期待できる
養子縁組を行うことで、養子には法的な扶養義務が発生します。そのため、養親の介護や生活支援を受けやすくなる点もメリットの一つです。親の病院での手続きや財産管理のサポートを頼むことができ、老後の安心材料として活用されることも少なくありません。
生前対策で養子縁組をする際の注意点
養子縁組にはメリットが多い一方で、適切に進めないと相続トラブルや税務リスクが発生する可能性があります。
以下では、養子縁組を行う際に注意すべきポイントを解説します。
① 遺産分割での争いを防ぐ対策が必要
養子が増えることで、他の相続人との間で遺産分割に関するトラブルが生じる可能性があります。そのため、養子を迎える前に家族と十分に話し合いを行い、養子縁組の目的を明確にすることが重要です。
さらに、遺言書を作成し、財産の分割方法を具体的に定めておくことで、不要な争いを防ぐことができます。
② 養子縁組の要件を満たしているか確認する
養子縁組には法的要件があり、適切に進めないと無効になる可能性があります。養親は成人している必要があり、未成年の養子を迎える場合には家庭裁判所の許可が必要となります。
要件を満たしていない養子縁組は相続対策として認められないことがあるため、慎重に手続きを進めることが求められます。
③ 相続税の課税対象として認定されるケースも
税務署が「相続税の節税目的のみの養子縁組」と判断した場合、相続税の課税対象となるリスクがあります。
例えば、養親と養子が実際には親子としての関係を持たず、同居していない場合などは、相続税の軽減措置が適用されない可能性があるため、注意が必要です。
養子縁組を活用した生前対策の流れ
養子縁組を生前対策として活用する場合、スムーズに手続きを進めるために、以下の流れを押さえておきましょう。
① 養子縁組の目的を明確にする
相続税の軽減を目的とするのか、事業承継を円滑に進めるためなのか、養子縁組を行う理由を明確にすることが重要です。目的をはっきりさせることで、適切な手続きを進めやすくなります。
② 家族・関係者と十分に話し合う
養子縁組は、実子や他の親族との関係に影響を与える可能性があるため、十分な話し合いを行うことが不可欠です。事前に親族間で理解を得ておくことで、後々のトラブルを回避できます。
③ 法的手続きを進める(役所・公証人相談)
養子縁組の手続きを正式に進めるためには、市区町村の役所での届出が必要です。また、遺言書を公証役場で作成しておくことで、財産承継をより確実に行うことができます。
まとめ
養子縁組を生前対策に活用すると、相続税対策・事業承継・老後の支援など、多くのメリットがあります。
ただし、法的な要件や家族の合意を慎重に確認しながら進めることが重要です。 養子縁組を検討する際は、弁護士や税理士などの専門家に相談しながら、最適な方法を選びましょう!