法定相続情報証明制度とは?利用するメリット・申請手続きを徹底解説!

相続手続きには、多くの戸籍謄本や住民票が必要で、時間も手間もかかる煩雑なものです。

「急な相続で、親戚の戸籍標本を集めるのに時間がかかってしまう」
「書類の数が多くなって、管理が大変……」
とお困りの人も多いようです。

こうした負担を軽減するために導入されたのが「法定相続情報証明制度」です。この制度を活用すれば、相続手続きが非常に効率的に進められるようになります。本記事では、制度の概要やメリット、具体的な申請手続きについて詳しく解説します。

法定相続情報証明制度とは?

「法定相続情報証明制度」は、2017年5月にスタートしました。

これまで煩雑になりがちだった相続手続きを、必要な情報を一度でまとめることで、大幅に時間やコストを削減することができる、非常に便利な制度です。

以下では、法定相続情報証明制度について、詳しくご紹介します。

制度の概要と仕組み

法定相続情報証明制度は、相続人や相続財産に関する情報を「法定相続情報一覧図」という形で整理し、法務局で認証を受ける仕組みです。この一覧図を使用することで、複数の相続手続きで同じ書類を何度も提出する手間を省くことができます。

一度申請をすると、以後5年間は無料で法務局で一覧図の写しの交付を受けられるため、非常に有用な制度と言えます。

制度が導入された背景

法定相続情報証明制度が導入された背景として、「空き家問題」があります。

不動産の所有者が死亡した際、所有権が他の人に移ったことを登録する「相続登記」という手続きが必要となります。しかし、近年は相続登記がされないまま放置されている不動産が多くあり、これが「土地の所有者が分からない」、「空き家が増えている」という問題に発展していました。

そこで、相続登記の手間を減らし、促進する目的で作られたのが「法定相続情報証明制度」です。また、法定相続情報一覧図は銀行口座の名義変更など、様々な相続手続きに活用でき、大幅に利便性が向上し、透明性の高い制度手続きを実現するための一助となっています。

法定相続情報証明制度を利用するメリット

法定相続情報証明制度には、手続きの簡素化や費用の節約など、多くのメリットがあります。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

手続きの負担を軽減

相続手続きでは通常、複数の機関で同じ戸籍謄本を何度も提出する必要がありますが、法定相続情報一覧図があれば、一度の申請で済みます。この制度により、手続きのストレスが軽減され、スムーズに進められるようになります。

時間と費用の節約

法定相続情報一覧図の発行は、申請後5年間は無料で行えます。また、一覧図をコピーして複数の手続きに利用できるため、戸籍謄本を何部も取り寄せる必要がありません。郵送での手続きにも対応しているため、移動時間や交通費も節約できます。

書類紛失リスクの軽減

通常の相続手続きでは、多数の書類を管理する必要がありますが、法定相続情報一覧図を活用することで、管理がシンプルになります。一覧図を安全に保管しておけば、書類紛失のリスクを大幅に減らせます。

法定相続情報証明制度の具体的な利用場面

法定相続情報証明制度は、さまざまな相続手続きで利用できます。以下では、具体的な活用例を紹介します。

銀行口座の名義変更・解約

銀行口座の名義変更や解約には、通常、多数の書類が必要です。しかし、法定相続情報一覧図があれば、必要書類が簡略化され、手続きが迅速に進みます。

不動産の相続登記

不動産を相続する際には、登記手続きが必要です。法定相続情報一覧図を使用すれば、戸籍謄本一式を提出する代わりに済みます。複数の不動産を相続する場合にも有効です。

株式や有価証券の名義変更

証券会社での名義変更や相続手続きにも、法定相続情報一覧図が利用できます。証券会社への提出が簡素化されるため、手続き全体の効率が向上します。

保険金の請求や保険の名義変更

2020年10月より、法定相続情報一覧図の写しは保険金の請求や保険の名義変更手続きなどにも利用できるようになりました。これにより保険金の受け取りなどがスムーズになるため、大幅に負担を減らすことができます。

法定相続情報証明制度のデメリットや注意点

メリットが多い法定相続情報証明制度ですが、いくつかの注意点もあります。事前に理解しておくことで、スムーズな利用が可能です。

提出先で受け付けられない場合がある

一部の金融機関や証券会社では、法定相続情報一覧図の利用を認めていない場合があります。利用を検討する際は、提出先の機関で使用可能か事前に確認しましょう。

申請内容に不備があると再手続きが必要

法定相続情報一覧図を申請する際、戸籍謄本の記載内容に不備があると、申請が受け付けられません。申請前に、記載内容に誤りがないかしっかり確認することが重要です。

法定相続情報証明制度の手続きの流れ

法定相続情報証明制度を利用するためには、以下の手順を踏む必要があります。

1.必要書類の準備

まずは申請に必要な、以下の書類を用意します。

  • 法定相続情報一覧図
  • 被相続人(亡くなった方)の出生~亡くなるまでの戸除籍
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の現在の戸籍謄抄本
  • 申出人の氏名・住所が確認できる書類(運転免許証など) など

特に、「法定相続情報一覧図」は、法定相続人が誰であるのかを一覧にしたもので、法務局のサイトにて記載例を確認できます。

2.法務局での申請方法

必要書類が揃ったら、申出書を作成し、管轄の法務局に提出します。申請は直接持参するほか、郵送でも対応可能です。また、申請内容に不明点がある場合は、窓口で相談することもできます。

3.一覧図の発行・受け取り

申請が完了すると、法定相続情報一覧図が発行されます。この一覧図は無料で発行され、複数のコピーを利用可能です。発行までの所要時間は、およそ1週間ほど見ておきましょう。詳細は、申請時に法務局に確認すると良いでしょう。

法定相続情報証明制度を利用する際のよくある質問(Q&A)

法定相続情報証明制度について、よくある質問を以下にまとめました。

Q1. 法定相続情報一覧図の有効期限はありますか?

法定相続情報一覧図は、5年間は保存されますので、その間であれば再交付の申請をすることができます。

Q2. 誰が申請できますか?

相続人本人または相続人から委任を受けた代理人(弁護士や司法書士など)が申請できます。

Q3. 証明書の発行は費用がかかりますか?

無料で必要な数だけ発行できます。

まとめ

法定相続情報証明制度は、相続手続きの簡素化に役立つ便利な仕組みです。申請手続きを正しく行えば、銀行口座の解約や不動産登記など、煩雑な手続きがスムーズになります。 しかし、「自分で申請するのが大変」「専門家のアドバイスがほしい」といった方は、司法書士などの専門家のサポートを受けながら、効率的な相続手続きを進めるのもオススメです。