自筆証書遺言と公正証書遺言の違いをわかりやすく解説

「遺言書を書こう」と思ったとき、最初に悩むのが「自分で書く(自筆証書遺言)」か「公証役場で作る(公正証書遺言)」かという選択です。

「手軽に済ませたいけれど、無効になるのは怖い」

「公正証書は安心そうだけど、費用が高いのでは?」

そんな不安を解消するために、本記事では両者の違いを徹底比較しました。

結論から言うと、どちらが優れているかではなく、「あなたの状況にどちらが適しているか」が重要です。

それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、後悔しない選択をしましょう。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを、比較表でわかりやすく解説

日本の法律で認められている遺言書には主に3つの種類がありますが、実務で使われるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つがほとんどです。

まずは、両者の主な違いを比較表で見てみましょう。

比較項目自筆証書遺言公正証書遺言
作成方法本人が全文(財産目録以外)を書く公証人が作成する
費用ほぼ無料(保管制度利用は3,900円)数万円〜(資産額による)
証人の有無不要2名以上必要
確実性形式不備で無効のリスクあり無効になることはほぼない
検認手続き必要(法務局保管なら不要)不要

自筆証書遺言とは?手軽に作成できるメリットと注意点

自筆証書遺言は、その名の通り「自分で紙に書いて作成する」遺言書です。

自筆証書遺言の大きなメリット

最大の魅力は「手軽さ」と「安さ」です。

印紙代や手数料がかからず、思い立ったその日に自宅で作成できます。

また、誰にも内容を知られずに作成できるため、プライバシーを完全に守りたい方にも適しています。

さらに、2019年の法改正により、複雑な「財産目録」の部分についてはパソコンで作成したり、通帳のコピーを添付したりすることが可能になり、作成のハードルが一段と下がりました。

作成前に知っておくべきデメリット・リスク

一方で、法的な不備が原因で「せっかく書いたのに無効になる」リスクが常に付きまといます。

日付の書き忘れや、押印の不備などは典型的な失敗例です。

また、通常は本人が亡くなった後に家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続きを受けなければならず、相続人に手間をかけさせてしまう点もデメリットです。

最新の「自筆証書遺言書保管制度」で弱点をカバー

2020年から始まったこの制度を利用し、法務局に遺言書を預けることで、「紛失・改ざん」のリスクがなくなります。

さらに、この制度を利用した遺言書は裁判所の検認が不要になるため、自筆証書遺言の弱点の多くを解消できます。

公正証書遺言とは?確実性と安心感を重視する方向け

公正証書遺言は、公証役場で「公証人」という法律のプロに作成してもらう遺言書です。

公正証書遺言の大きなメリット

最大のメリットは、「法的な確実性が極めて高い」ことです。

公証人が関与するため形式不備で無効になることはまずありません。

また、原本が公証役場で保管されるため、紛失や偽造の心配がなく、相続発生時には「検認」なしですぐに銀行などの手続きに入れます。

さらに、本人の意思能力(しっかり判断できているか)を公証人が確認するため、後から親族に「認知症だったはずだ」と無効を訴えられるリスクも低減できます。

あらかじめ覚悟しておくべきデメリット

デメリットは、「費用と手間」です。

財産額に応じた手数料を公証役場に支払う必要があり、数万円〜10万円以上の出費になることもあります。

また、作成には2人の「証人」の立ち会いが必要ですが、相続人になる親族は証人になれません。専門家に依頼する場合はその報酬も発生します。

【徹底比較】どっちがいい?あなたに最適な選び方の基準

自筆証書遺言と公正証書遺言、それぞれのメリット・デメリットを理解したところで、次に気になるのは「結局、今の自分にはどちらが合っているのか」という点ではないでしょうか。

どちらの形式を選ぶべきかは、あなたが所有している財産の種類の多さや、家族関係の複雑さ、そして「将来どの程度の安心を確保したいか」という優先順位によって決まります。

ここでは、具体的なケースを想定しながら、最適な選び方の基準を詳しく解説します。

自筆証書遺言が向いている人

自筆証書遺言は、コストを最小限に抑えつつ、まずは自分の意思を形にしたいという方に適しています。

特に、以下のような状況にある方は、自筆での作成を検討してみると良いでしょう。

相続財産がシンプルで整理されている

相続する財産が「自宅と一つの銀行口座のみ」というように、内容が非常にシンプルであれば、書き間違いによる不備が起きるリスクは低くなります。

複雑な条件を付けずに「すべて妻に相続させる」といった明快な内容であれば、自筆でも十分にその役割を果たすことができます。

法務局の保管制度を自分で利用できる

「自筆は紛失が心配」という弱点は、法務局の保管制度を利用することで解消できます。

ご自身で必要書類を揃えて法務局へ足を運ぶ手間を惜しまないのであれば、公正証書よりも格段に安い費用で、検認不要かつ安全な遺言書を残すことが可能です。

まずは仮の形でもいいから、すぐに意思を残したい

遺言書は一度書いたら終わりではなく、何度でも書き直しが可能です。

将来的に公正証書を作る予定はあるけれど、「まずは万が一に備えて、今の気持ちを今すぐ紙に残しておきたい」という方の第一歩としても、自筆証書遺言は非常に有効な手段です。

公正証書遺言が向いている人

一方で、公正証書遺言は「プロによる絶対的な安心」を買うための制度です。費用をかけてでも、残される家族に一切の負担やトラブルを負わせたくないと考えるなら、迷わずこちらを選択すべきです。

親族間に意見の対立やトラブルの火種がある

「前妻との間に子がいる」「特定の子供だけに多く譲りたい」「相続人の中に連絡が取れない人がいる」など、スムーズな遺産分割に少しでも不安がある場合は、公正証書が必須と言えます。公証人が本人の意思を確認して作成した事実は、後々の親族トラブルにおいて強力な盾となります。

不動産や事業用資産など、分割しにくい財産がある

自宅以外に収益物件がある、あるいは自営業で会社の株式があるなど、価値の判定が難しく分けにくい財産がある場合、遺言書の不備は致命的です。名義変更の手続き(登記など)がスムーズに行えるよう、法的プロのチェックを通しておくことが、家族の手間を減らす最善の道です。

高齢や体調不安により、確実性を最優先したい

もし、ご自身で長文を書き上げる体力に不安があったり、万が一にも「認知症で判断能力がなかった」と死後に疑われたりするのを避けたいのであれば、公正証書が最適です。公証人が面談を通じて作成するため、遺言者の意思能力の証明としても強い証拠能力を持ちます。

遺言書作成で失敗しないための共通ポイント

どちらの形式を選ぶにせよ、以下の3点は必ず押さえておきましょう。

「遺留分(いりゅうぶん)」への配慮

最低限受け取れる相続分を無視した内容にすると、後の争いの元になります。

遺言執行者の指定

手続きを主導する人(弁護士や信頼できる親族など)を決めておくと、相続がスムーズです。

「付言(ふげん)事項」の活用

「なぜこのような分け方にしたのか」という感謝や理由をメッセージとして添えることで、家族の納得感が格段に変わります。

まとめ:後悔しない選択のために

自筆証書遺言は「今の思いを安く手軽に残せる」方法、公正証書遺言は「お金をかけてでも確実な安心を買う」方法です。

もし「自分のケースで自筆だとどれくらいリスクがあるのか?」と不安に思われたなら、一度下書きを持って専門家に相談してみるのが一番の近道です。

下書きのアドバイスを受けるだけでも、遺言書の質は劇的に向上し、あなたの安心感はより大きなものになるはずです。

あなたの思いが、最も良い形で大切な家族へ届くよう、まずは一歩、準備を始めてみませんか。

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