生前対策はいつから必要?元気なうちにできる相続対策

「相続対策なんて、もっと先の話でいいだろう」 そう考えているうちに、取り返しのつかない状況になってしまうケースが後を絶ちません。

実は、2024年の税制改正により、相続対策は「時間をかけて早く始めること」がこれまで以上に重要になりました。

本記事では、生前対策を今すぐ始めるべき理由と、元気なうちにしかできない具体的な対策について分かりやすく解説します。

生前対策はいつから始めるべき?結論は「今すぐ」な理由

生前対策の開始時期に「早すぎる」ということはありません。

なぜなら、対策の選択肢は健康状態と時間の経過とともに減っていくからです。

認知症リスクへの備え(意思能力の問題)

意外と知られていないのが、「認知症になると相続対策ができなくなる」というリスクです。

銀行口座の凍結や不動産の売却、遺言書の作成などは、本人に十分な「意思能力」があることが前提となります。

判断能力が低下した後では、たとえ家族であっても資産を動かせなくなり、施設入居費のための自宅売却すら困難になるケースがあるのです。

相続税の改正と早めの対策の重要性

2024年1月からの税制改正により、生前贈与を相続財産に加算する期間が「亡くなる前3年分」から「7年分」へと延長されました。

つまり、亡くなる直前に慌てて贈与を行っても、節税効果が得られにくくなったのです。

1年でも早く対策を始めることが、そのまま大きな節税につながる時代になりました。

家族の「争族」を避けるため

相続トラブル、いわゆる「争族」は、決して他人事ではありません。

実は相続争いの約8割は、遺産総額が5,000万円以下の「ごく普通の家庭」で起きています。

元気なうちであれば、親自身の言葉で「なぜこの配分にするのか」を説明し、家族全員が納得できる円満な解決策を模索できます。

相続対策の「3つの柱」を理解しよう

相続対策を効率的に進めるには、以下の3つの視点からバランスよく考えることが大切です。

1.節税対策(資産を減らす・評価を下げる)

支払う税金を抑えるための対策です。

現金を不動産に組み替えて相続税評価額を下げたり、生前贈与で将来の課税対象となる資産をあらかじめ減らしたりする手法が代表的です。

2.納税資金対策(現金を確保する)

「相続税を払うための現金」を準備することです。

相続財産の大部分が不動産だと、税金を払うために先祖代々の土地を売らざるを得なくなることも。

生命保険などを活用し、納税用のキャッシュを確保しておく必要があります。

3.遺産分割対策(争いを防ぐ)

「誰に、何を、いくら残すか」を明確にすることです。これが最も重要です。

不公平感をなくし、残された家族がスムーズに財産を引き継げるように道筋を作ります。

元気なうちにできる具体的な5つの生前対策

ここからは、健康で判断能力がしっかりしているうちに検討すべき具体的な5つの手法を紹介します。

1.遺言書の作成

遺言書は最も確実な争族対策です。

近年では、法務局で保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」もあり、以前より手軽に、かつ紛失のリスクなく作成できるようになりました。

2. 生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税制度)

年間110万円までの非課税枠を利用する「暦年贈与」や、2,500万円まで非課税で贈与できる「相続時精算課税制度」などがあります。

法改正の影響もあり、どちらが有利かは個別の状況により異なるため、早めのシミュレーションが必要です。

3. 生命保険の活用

生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。

現金を保険に変えるだけで節税になるほか、受取人を指定できるため、特定の子供に確実に現金を残したい場合にも有効です。

4. 家族信託の検討

認知症対策として近年注目されている仕組みです。

信頼できる家族に資産の管理権限を託しておくことで、もし本人の判断能力が低下しても、家族が代わりに不動産を売却したり預金を管理したりすることが可能になります。

5. 不動産の活用・組み換え

更地にアパートを建てて評価額を下げたり、分けにくい広大な土地を売却して現金化・小口化したりする対策です。

不動産対策は完了までに時間がかかるため、余裕を持った計画が欠かせません。

生前対策をスムーズに進めるためのステップ

まずは以下の3ステップから始めてみましょう。

財産目録の作成

まずは「何がどこに、どれくらいあるか」を書き出しましょう。

預貯金だけでなく、不動産、有価証券、さらには借入金などの負債もすべてリストアップします。これがすべての対策のスタート地点です。

家族会議を開く

自分の死後について話すのは気が引けるかもしれませんが、家族の意向を確認することは非常に重要です。

「介護をしてくれる子に多く残したい」といった本音を共有することで、後のトラブルを未然に防げます。

専門家に相談する

相続は、税金(税理士)、登記(司法書士)、法的な紛争(弁護士)と、多岐にわたる知識が必要です。

自分たちだけで判断せず、一度専門家の意見を聞くことで、最適なプランが見えてきます。

よくある質問(FAQ)

生前対策を検討する際によく寄せられる疑問にお答えします。

Q. 財産が自宅(不動産)しかなくても対策は必要?

はい、むしろ不動産しかないケースこそ対策が重要です。

理由は、不動産は現金のように「1円単位で分けることができない」からです。

例えば、子供が2人いて遺産が自宅のみの場合、どちらか一方が住み続けると、もう一方は何ももらえず不公平になり、トラブル(争族)に発展しやすくなります。

Q. 2024年の改正前に贈与した分はどうなる?

2023年以前に行われた贈与については、従来の「3年ルール」が適用されます。

2024年の税制改正で「生前贈与の加算期間」が3年から7年に延長されましたが、これには経過措置があり、2023年12月31日までに行った贈与が、後から「7年分」として遡及(さかのぼり)されることはありません。

まとめ

生前対策は「残される家族への最後のプレゼント」です。 元気なうちに準備を始めることは、単なる節税だけでなく、家族の絆を守ることにもつながります。

まずはエンディングノートを一冊用意して、財産の書き出しから始めてみませんか?「いつか」ではなく「今」動くことが、最高の相続対策への第一歩です。

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