【2025年最新】法務局の遺言書保管制度とは?遺言の紛失・偽造を防ぐ仕組み
「せっかく自筆で遺言書を書いたのに、死後、家族に見つけてもらえなかったらどうしよう…」
「自筆の遺言書だと、裁判所の検認手続きが必要で、家族に手間をかけてしまうのが心配だ」
これまで、費用を抑えて手軽に作成できる自筆証書遺言は、紛失・隠匿のリスクや、相続開始後に家庭裁判所の検認手続きが必須となるという、大きな課題を抱えていました。
これらのデメリットを解消し、自筆証書遺言を公正証書遺言並みの安全性で残せる画期的な制度が、2020年7月にスタートした法務局の遺言書保管制度(自筆証書遺言保管制度)です。
本記事では、法務局の遺言保管制度について、分かりやすく解説していきます。
法務局の遺言書保管制度とは?基礎知識と必要性
この制度は、国(法務局)が個人の遺言書を預かり、厳重に管理することで、遺言の効力を確実に実現するための仕組みです。
制度の定義と目的
この制度は、2020年7月に開始された新しい制度であり、自筆証書遺言を法務局が安全に保管することで、遺言の真実性を守り、相続手続きを円滑化することを目的としています。
保管対象となる遺言書
法務局が保管できるのは、以下の種類の遺言書に限られています。
自筆証書遺言のみが対象
この制度は、あくまで自筆証書遺言の抱える問題を解決するために設けられたものです。
公正証書遺言、秘密証書遺言は対象外
公正証書遺言や秘密証書遺言は、もともと公的な手続きを経ているため、この制度の対象外となります。
従来の自筆証書遺言の大きな課題
保管制度ができるまで、自筆証書遺言には以下のような避けられないリスクがありました。
紛失・隠匿のリスク
自宅の金庫や引き出しなどで保管した場合、相続人による発見や、意図的な隠匿・破棄の可能性があります。
家庭裁判所の「検認」が必要な手間
保管制度を利用しない場合、相続開始後に必ず家庭裁判所の検認手続きが必要となります。この手続きには時間と手間がかかり、相続手続きが遅れる原因となっていました。
法務局で保管する3つの決定的なメリット
法務局の保管制度を利用することで、自筆証書遺言の「弱点」をほぼ全て克服できます。
メリット1:紛失・隠匿のリスクがゼロに
遺言書原本は法務局の専門設備によって厳重に保管されます。
原本が法務局に厳重に保管されるため、偽造や変造、相続人による紛失・隠匿の心配が一切ありません。
メリット2:家庭裁判所の「検認」が不要に
この制度最大のメリットの一つは、相続開始後の手続きが大幅に簡略化される点です。
法務局が申請時に遺言書の形式的な要件(自筆であるか、日付があるかなど)をチェックし、不備を防ぐため、相続開始後の家庭裁判所の検認手続きが不要となります。これにより、相続手続きを迅速に進めることができます。
メリット3:相続人に通知される仕組み
遺言書の存在が知られずに終わるという事態を防ぐための仕組みが用意されています。
遺言者が死亡した後、指定された相続人等から遺言書の情報が請求された場合、他の相続人全員に対し遺言書が保管されている事実が通知されます。
法務局での保管手続きの流れと必要書類
保管申請手続きは、遺言者本人が法務局に出頭し、遺言書を提出する必要があります。
保管申請の流れ
申請手続きは、主に以下のステップで進みます。
ステップ1:遺言書の作成
本文、日付、氏名をすべて自筆し、押印が必要です(財産目録についてはパソコン作成も可)。
遺言書は封筒に入れず、そのままの状態で持参します。
ステップ2:事前予約
申請は必ず遺言者本人が出頭して行う必要があるため、法務局の相談窓口で事前に日時を予約します。
ステップ3:申請と審査
申請窓口で、法務局の審査官が遺言書の形式的な要件をチェックします。
この審査により、遺言書の無効リスクを大幅に減らすことができます。
ステップ4:保管開始
申請が受理されると、遺言書が原本のまま法務局で保管されます。
申請に必要な主な書類
申請時には、遺言者本人の確認と相続関係を証明するための書類が必要です。
遺言者本人の書類
遺言書原本(封筒に入れず)、住民票の写し、顔写真付きの本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)、印鑑などが必要です。
相続関連の書類
遺言者の本籍地の表示がある戸籍謄本、推定相続人(相続人となる予定の人)全員の住民票などが必要です。
手数料(費用)
保管申請の費用は、公正証書遺言を作成する場合に比べ、非常に安価に抑えられています。
保管申請の手数料は、一件につき3,900円です。
相続発生後の手続き(遺言情報の確認・証明)
遺言者の死亡後、相続人等は法務局に対して、遺言書に関する情報の提供を求めることができます。
遺言書情報証明書の交付
相続人等は、法務局に対し「遺言書情報証明書」の交付を請求できます。
この証明書は、家庭裁判所の検認済証に代わる公的な証明書として、銀行での預貯金の払い戻しや、法務局での相続登記手続きに利用できます。
遺言書の閲覧
遺言書情報証明書の交付を受けた相続人等は、遺言書の原本の閲覧を請求できます。
通知の仕組み
遺言者が死亡した後、相続人等が法務局に対して「遺言書情報証明書」の請求を行った場合、法務局は、他の相続人全員に対し、遺言書が保管されている旨を通知します。
これにより、特定の相続人による遺言書の独占を防止します。
まとめ:自筆証書遺言の「弱点」を克服する画期的な制度
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、「見つからない」「偽造を疑われる」「検認が面倒」など、死後にトラブルが発生しやすいという弱点も抱えています。
こうした課題を解消する手段として、2020年からスタートした法務局での保管制度は非常に有効です。
この制度を利用すれば、遺言書の紛失リスクを回避できるうえ、家庭裁判所の検認も不要になるため、相続手続きのスピードと正確性が大きく向上します。
さらに、遺言情報証明書を使えば、金融機関や法務局での手続きもスムーズになります。
ただし、制度を利用するには形式要件を満たす必要があるため、専門家(司法書士・行政書士・弁護士)などのサポートを受けながらの作成・保管が安心です。
大切な人への想いを確実に遺すために、そして相続人が迷わずに済むように、法務局での保管制度を前提にした遺言書作成を、ぜひ前向きに検討してみてください。
ゼヒトモ内でのプロフィール: 司法書士法人アレスコ事務所, ゼヒトモの司法書士サービス, 仕事をお願いしたい依頼者と様々な「プロ」をつなぐサービス
