後見制度支援信託とは?後見人の財産管理に新たな選択肢
「家族の財産がかなりあるけど、後見人として管理しきれるか不安…」
「後見制度を利用したいけど、財産管理の負担をできるだけ減らしたい」
もし、あなたがそうした悩みを抱えているなら、「後見制度支援信託」が解決策になるかもしれません。
「後見制度支援信託」は、後見人の負担を大きく軽減し、大切な財産をより安全に守るための仕組みです。
本記事では、この後見制度支援信託のメリットや手続き方法について、専門的な知識がない方にもわかりやすく解説します。
後見制度支援信託の概要
成年後見制度を利用する際、被後見人の財産をどう管理するかは大きな課題です。
後見制度支援信託は、この課題を解決するための、非常に有効な手段として注目されています。
後見制度支援信託が注目される背景
後見制度支援信託とは、後見人が被後見人の財産のうち、日常生活に必要な資金を除いた高額な財産を信託銀行に信託する制度です。
家庭裁判所が関与して信託契約を結び、財産の管理は専門家である信託銀行が行います。
後見人は、生活費などの必要に応じて、家庭裁判所の許可を得て信託銀行から払い戻しを受けることになります。
後見制度支援信託のメリットとデメリット
後見制度支援信託は、被後見人の財産を安全に守り、後見人の負担を減らすという大きなメリットがありますが、利用前に知っておくべきデメリットも存在します。
メリット:なぜ利用すべきなのか?
後見制度支援信託は、後見人と被後見人、双方にとって大きな安心をもたらします。
高額な財産も安全に管理
信託銀行という専門機関が財産を管理するため、後見人による不正や管理ミスを防ぎ、より確実に財産を保全できます。
財産管理の負担を大幅に軽減
日々の金銭管理、通帳の記帳、複雑な裁判所への報告などが簡素化され、後見人自身の負担が大幅に軽減されます。
後見人の法的リスクを低減
財産管理の透明性が高まるため、親族からの疑義を避けられ、後見人自身の法的リスクを低減できます。
デメリット:利用前に知っておくべきこと
一方で、後見制度支援信託には、利用前に考慮すべきいくつかの注意点もあります。
信託報酬が発生する
信託銀行に財産を管理してもらうため、契約内容に応じて信託報酬が発生します。財産額やサービス内容によって費用は異なるため、事前に確認が必要です。
解約が簡単ではない
原則として信託契約は被後見人が亡くなるまで続くため、後見人や親族の都合で自由に解約することはできません。
ただし、裁判所の許可を得れば例外的に解約できる場合もあります
後見制度支援信託の具体的な手続きの流れ
後見制度支援信託の利用を検討する際は、以下のステップで手続きが進められます。
家庭裁判所の関与が不可欠であることを理解しておきましょう。
ステップ1:後見人の選任
まずは、家庭裁判所に後見制度開始の申立てを行い、後見人として選任される必要があります。
ステップ2:家庭裁判所への申立て
後見人として選任された後、財産目録などを提出し、後見制度支援信託の利用について家庭裁判所に申立てます。
この際、なぜ信託が必要なのか、その理由を明確に伝えることが重要です。
ステップ3:信託銀行との契約締結
家庭裁判所の審査・指示に基づき、信託銀行と信託契約を締結します。
この手続きには、専門的な知識が必要になるため、弁護士や司法書士のサポートを受けるのが一般的です。
ステップ4:定期的な報告
信託銀行は、信託した財産の運用状況や収支について、家庭裁判所に定期的に報告を行います。
後見人は、家庭裁判所を通じてこの報告内容を確認することができます。
後見制度支援信託と後見制度支援預金:どちらを選ぶべき?
後見制度支援信託と後見制度支援預金は、どちらも後見人の財産管理をサポートする制度ですが、利用するべきケースが異なります。
利用対象者の違い
財産の金額や種類によって、どちらの制度が適しているかが異なります。
後見制度支援信託
高額な財産(例えば数千万円以上)を管理する場合に適しています。
専門家による管理で、より安全に財産を保全できます。
ただし、信託できるのは原則「金銭」のみであり、不動産や有価証券は対象外であることは理解しておきましょう。
後見制度支援預金
比較的少額な財産を管理する場合に適しています。
信託報酬がかからないため、費用を抑えたい場合に有効です。
費用と手続きの比較
後見制度支援信託は信託報酬が発生しますが、手続きが複雑で負担が大きい高額な財産を管理する上で、その費用は安心への対価と考えることができます。
一方、後見制度支援預金は費用を抑えられますが、手続きの簡便さや専門的な管理という点では、信託に劣ります。
後見制度支援信託のよくある質問(FAQ)
以下では、後見制度支援信託についてよく聞かれる質問をQ&A形式でまとめました。
Q1:信託報酬はどれくらいかかりますか?
信託報酬は、信託銀行や信託する財産の金額によって異なります。事前に複数の金融機関に相談し、見積もりを取ることをお勧めします。
Q2:途中で信託契約を解約できますか?
原則として、信託契約は被後見人が亡くなるまで解約できません。
ただし、家庭裁判所の許可があれば例外的に解約が認められるケースもあります。
Q3:信託銀行は自由に選べますか?
家庭裁判所への申立ての際、後見人の意向を伝えることはできますが、最終的な判断は裁判所が行います。
Q4:被後見人が亡くなった場合、どうなりますか?
信託契約は終了し、信託財産は信託銀行から相続人へ引き継がれることになります。
まとめ
後見制度支援信託は、後見人の負担を大きく減らし、被後見人の財産を確実に守るための強力な選択肢です。特に、高額な財産を管理する必要がある場合には、専門家である信託銀行の力を借りることで、より安心した成年後見制度の運用が可能になります。
ただし、後見制度支援信託はメリットも多い反面、家庭裁判所への申立てや、信託銀行との契約締結など、複雑な手続きが伴います。
また、信託報酬や解約の制約といったデメリットも存在します。
大切な家族の未来のために、この制度が本当に適切なのか、迷うことも少なくないでしょう。
そのような時は、一人で抱え込まず、後見制度を専門とする弁護士や司法書士に相談することを強くお勧めします。
専門家は、あなたの状況に合わせて、後見制度支援信託が最適な選択肢かどうかを判断し、手続きを円滑に進めるためのサポートをしてくれます。
ゼヒトモ内でのプロフィール: 司法書士法人アレスコ事務所, ゼヒトモの司法書士サービス, 仕事をお願いしたい依頼者と様々な「プロ」をつなぐサービス