相続手続きに外国人登録原票は使える?要件・注意点を徹底解説
一般的に、日本の相続手続きにおいては戸籍謄本や住民票などで、故人の出生~死亡までの戸籍を提出する必要があります。
これらを参照することで、婚姻歴や子供の有無などの情報が証明できるため、相続人や相続の優先順位が確認できるのです。
一方、外国人が関わる相続手続きでは、場合によっては戸籍謄本などが存在せず、手続きがスムーズにいかないことがあります。
そこで注目されるのが「外国人登録原票」です。相続で使うためにはどのような条件があるのか、注意点とともに詳しく解説します。
結論:外国人登録原票は相続手続きで使える?
外国人登録原票は正式な戸籍に代わる書類ではありませんが、相続に必要な身分関係や在住歴の補完資料として 補助的に活用できる場合があります。
ただし、必ず提出先(例:登記所、金融機関、裁判所等)に事前確認することを忘れないようにしましょう。
原則:正式書類としては難しいが補助資料として使える場合がある
まず、外国人登録原票は戸籍とは異なり、身分証明として単独では不十分です。
しかし、在留歴や家族関係を裏付ける情報が記載されているため、他の証明書が揃わない場合の補助資料として利用されることがあります。
使用の可否は提出先と手続き内容による
提出先によって求められる書類は異なり、登記所では「本国の家族関係証明がまず必要」とする場合もあります。ただ、家族関係証明が揃わない場合、補完資料としての登録原票の提出を求められることもあります。
そもそも外国人登録原票とは?
ここからは制度や仕組みについて整理し、理解を深めます。
2012年までの外国人登録制度とは
2012年7月9日の法改正までは、外国人は「外国人登録制度」に基づいて住民票とは別に登録が義務付けられており、氏名・国籍・住所・在留歴などが記録された原票が市区町村に保管されていました。
現在の制度との違い
2012年7月9日以降、外国人登録制度は廃止され、日本人と同様、住民基本台帳法の適用対象に加えられました。
そのため、現在では市区町村で外国人登録原票を管理していません。
制度改定以降、外国人登録原票は出入国在留管理庁(法務省)が保存・管理しています。
現在の外国人登録原票の特徴
現在、新たに外国人登録原票は発行されてはいないものの、2012年7月9日以前に日本に移住していた方は、移住時~2012年7月9日までの期間の戸籍の代わりとして、「死亡した外国人に係る外国人登録原票の写し」などの申請が可能です。
配偶者や親族・法定代理人等が請求でき、受け取りには1~2カ月ほどかかります。
相続手続きに必要な書類と外国人登録原票の立ち位置
では、実際に日本に移住(帰化)した元外国人が亡くなった場合、相続手続きはどのように進めればいいのでしょうか。
ここでは、必要な書類を整理し、その上で外国人登録原票の位置づけを理解しましょう。
外国籍被相続人に必要な書類(出生・死亡・婚姻証明)
2012年7月9日以降に帰化・移住した外国人は、そのまま日本での戸籍を取得できます。
また、それ以前の戸籍についても、外国人登録原票の写しを出入国在留管理庁に申請することで、戸籍の代わりとなります。
しかし、それ以前の戸籍が日本にない場合、以下のような書類が必要です。
戸籍制度がある国の場合
韓国や台湾など、戸籍制度がある国の場合は、移住以前の翻刻での戸籍を取り寄せることで相続手続きに使用することができます。
ただし、韓国は日本の領事館で戸籍謄本の取り寄せが可能ですが、台湾は現地で取得する必要があります。そのため、台湾現地に赴くか、台湾在住の親戚などに取得を依頼するなどの手段が必要です。
戸籍制度がない国の場合
移住前の国がアメリカなど、戸籍制度のない国の場合は以下のような証明書を取得する必要があります。
- 出生証明書 / 死亡証明書
- 婚姻証明書
- 宣誓供述書(証明書類が不十分な場合)
国によって取得できる証明書の種類が異なるため、各国の制度を調べた上で申請する必要があります。
注意点と準備すべきこと
外国人の相続手続きを行う際に該当しやすいのは、以下の3点です。
翻訳の必要性と認証・公証について
本国から取り寄せる出生証明書や宣誓供述書は、その国の言葉で記載されています。
そのため、相続手続きに用いるには、原本と共に翻訳したものを添付する必要があります。
外国人登録原票の写しの取得手続きの流れ
死亡した外国人に係る外国人登録原票の写しは、出入国在留管理庁で交付申請をすることができます。
以下では、申請ができる人や、提出書類について解説します。
交付申請ができる人
交付請求ができるのは以下の方に限られます。
- 死亡した外国人の死亡当時の同居親族
- 死亡した外国人の死亡当時の配偶者・直系尊属、直系卑属又は兄弟姉妹
- 上記が未成年または成年被後見人の場合、その法定代理人
- 任意代理人
申請に必要な書類
交付申請時に必要な書類は、以下の通りです。
- 交付請求書(出入国在留管理庁ホームページからダウンロード可能)
- 請求者の本人確認書類
- 返信用封筒やレターパック、郵送用切手 など
手数料はかかりませんが、交付までには1~2カ月程度かかる場合があります。
よくある質問(FAQ)
外国人の相続手続きにおいて、よくある質問を以下にまとめました。
Q1. 外国人登録原票の取得に期限や条件はある?
申請期限は特にないですが、請求から交付まで1~2カ月かかるのが一般的です。相続の手続きが必要になった時点で、早めに手続きを進めておきましょう。
Q2. 翻訳は自分でしてもOK?公的翻訳が必要?
例えば相続登記などで使用する場合、自分で翻訳することもできます。
しかし、法的な文章の訳文となるため、専門家やプロの翻訳者に依頼した方が手続きがスムーズに進むでしょう。
まとめ:相続手続きで外国人登録原票を使うには?
外国人登録原票は戸籍の代わりにはならないものの、相続人・身分関係・居住歴を示す補足的資料として活用できます。
使用には以下の対応に気を付けることが重要です。
- 提出先への事前確認で必要要件を把握
- 国外から取り寄せた証明書は翻訳し、内容を整える
- 専門家に相談してスムーズな手続きを進める
これらを押さえれば、相続手続きにおける登記・裁判所・金融機関などへの提出にも十分対応できるでしょう。
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