相続放棄とは?手続きの流れや注意点をわかりやすく解説!
相続をする際には、不動産や預金といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産が存在するケースもあります。
「親の借金を相続したくない…」
「相続放棄したいけど、手続きがわからない…」
そんな悩みを抱えている方へ向けて、相続放棄の基本知識から具体的な手続きの流れ、注意点まで詳しく解説します。
相続放棄は、一定の期間内に正しく手続きを行わなければ成立しません。この記事を参考に、相続放棄をスムーズに進めるためのポイントを押さえましょう!
相続放棄とは?基礎知識を分かりやすく解説!
相続放棄は、故人(被相続人)の財産や借金を一切受け継がないという選択です。
特に、借金や負債が多い場合に、相続放棄を選択する方が増えています。
ただし、相続放棄にはルールや期限があるため、事前にしっかりと理解しておくことが大切です。まずは、相続放棄の基本的な仕組みを理解しましょう。
相続放棄の基本的な仕組み
相続放棄をすると、被相続人の財産(プラスの資産・マイナスの負債)を一切受け取らないことを意味します。
相続放棄をすると、マイナスの遺産も引き継ぐことはありませんが、プラスの遺産も全て受け取れなくなります。一部だけ放棄することはできず、「全て放棄する」または「全て相続する」かのどちらかとなります。
相続放棄をするのに必要なのは、家庭裁判所へ申し立てをし、認められることです。単に「相続しない」と口頭で伝えたり、遺産分割協議で放棄すると決めただけでは、正式な相続放棄にはなりません。
相続放棄できる人と優先順位
相続人には優先順位があり、相続放棄をすると次の順位の相続人に権利が移ります。相続人の順位は以下の通りです。
- 第一順位:子(直系卑属)
- 第二順位:親(直系尊属)(子がいない場合)
- 第三順位:兄弟姉妹(子も親もいない場合)
たとえば、長男・長女がいる家族の父親が亡くなった場合、長男が相続放棄をすると、次に相続する権利が長女に移ります。全員が放棄すれば、次は親や兄弟姉妹などに相続権が移動します。
そのため、家族で事前に話し合っておかないと、意図しない相続トラブルが発生する可能性があります。
相続放棄のメリットとデメリット
相続放棄にはメリットだけでなく、デメリットもあります。
「放棄すれば安心!」と思っても、思わぬリスクがあるため、事前に確認しておきましょう。
相続放棄のメリット
相続放棄をすることで得られるメリットには、以下のようなものがあります。
①借金や負債を引き継がなくて済む
被相続人に借金などのマイナスの財産がある場合、相続放棄をすることで被相続人の借金を引き継がなくて済むのが、メリットと言えます。
相続人は債権者から返済を求められた場合、法定相続分に応じた借金を返済する必要があります。そのため、プラスの遺産よりもマイナスの遺産が多い場合、相続財産から借金の返済を行います。
②相続トラブルを回避できる
相続の手続きにおいて、親族間などでトラブルに発展するケースは少なくありません。
相続放棄をする場合、遺産を一切引き継がないため、他の相続人とそれ以上のやりとりをする必要がなくなります。
また、相続放棄の手続きは、他の相続人の同意は不要なため、相続放棄をすることで相続トラブルに巻き込まれる可能性が低くなります。
③特定の相続人に財産を集中させられる
「自分よりも、別の相続人に遺産を相続させたい」というケースにおいても、相続放棄は有効です。例えば、祖父が亡くなり、祖父の子ども(息子)と孫(息子の子)のケースにおいて、「息子は既に高齢なので、最初から孫に財産を遺したい」という場合、息子が相続放棄することで孫に直接相続できます。こうすることで、余計な相続税を払うことなく、スムーズに財産を受け継ぐことができるというメリットがあります。
相続放棄のデメリット
相続放棄には、メリットだけでなくデメリットもあります。
①財産も一切受け取れなくなる
相続放棄の最大のデメリットとして、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産も一切受け取れなくなるというものがあります。
例えば、「借金は放棄したいが、土地や家などの不動産は引き継ぎたい」ということはできないため、「思い出の詰まった家を相続したい」等の場合は、慎重に考える必要があるのです。
また、遺産の中に先祖代々引き継がれているものなどが含まれる場合、その遺産を親族で管理できなくなることも考えられます。
②他の親族に負担が移る可能性がある
相続放棄をすると、相続の優先順に権利が移るため、他の親族に相続の負担がかかる可能性があります。
特にマイナスの遺産の相続放棄をする場合、返済の金額が増えたり、別の相続人に借金の返済義務が移る可能性があるため、事前に家族と話し合い、手続きの流れを理解しておくことが重要です。
③手続きの期限があり、放棄しないと借金を背負うリスクがある
相続放棄の手続きには、「熟慮機関」と呼ばれる期限があり、この期間を過ぎてしまうと相続放棄の手続きができなくなってしまいます。
もし財産に借金などのマイナスの遺産があった場合、それらの返済義務を背負うことになるため、注意が必要です。
相続放棄の手続きの流れ
相続放棄の手続きは、亡くなったことを知ってから3カ月以内に行う必要があります。
具体的な手順を解説します。
① 必要書類を準備する
まずは以下の書類を用意します。
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本(死亡の事実を証明するため)
- 相続放棄申述書(家庭裁判所に提出する書類)
- 申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本
相続放棄申述書は、裁判所のホームページなどからテンプレートをダウンロードできるため、適切なものを選びましょう。
② 家庭裁判所に相続放棄を申述する
上記で用意した書類を記入の上、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申請を行います。約1~2週間で裁判所から「照会書」が送付されます。
③ 照会書に回答し、受理されれば完了
照会書(質問書)と一緒に「回答書」という書類が送られてくるため、この書類に正しく回答し、返送します。この回答書が受理されると相続放棄が成立し、「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これを受け取れば手続きは全て完了です。
相続放棄をする際の注意点
相続放棄をする際には、「これを知らなかったせいで失敗した…」 というケースもあります。
以下のポイントには特に注意しましょう。
① 3カ月を過ぎると相続放棄できなくなる
相続放棄の手続きは、「相続開始を知った日」から3カ月以内に手続きを完了させる必要があります。この期限を過ぎてしまうと、負債を含めてすべての相続を承認したとみなされるため、注意が必要です。
「3カ月以内に手続きする必要があるのを知らなかった」場合であっても、例外はありません。
② 相続財産を処分すると、放棄できなくなる
相続放棄を考えている場合は、故人の財産に手を付けないことが大切です。葬儀費用などの一部用途を除き、一度でも財産を使用してしまうと、「単純承認(相続を受け入れた)」とみなされる可能性があり、相続放棄ができない場合があります。
③ 他の相続人との話し合いが必要
相続放棄は正当な権利ですが、自身が相続を放棄すると、次の優先順位の相続人が相続することになります。「借金や相続したくない財産があることを知らずに相続してしまう」リスクがあるため、相続放棄の際は事前に親族との話し合いをするのがおすすめです。
相続放棄のよくある質問(FAQ)
相続放棄について、よくある質問を以下にまとめました。
Q:相続放棄をしたら、他の相続人に迷惑がかかる?
相続放棄をすると、次の順位の相続人(親や兄弟姉妹)に相続権が移ります。知らせずに手続きを進めてしまうと迷惑がかかる可能性があるため、借金の有無や相続放棄する旨など、事前に相談しておくと良いでしょう。
Q:相続放棄した後、撤回できる?
相続放棄は一度認められると撤回できません。「やっぱり財産だけ受け取りたい…」ということはできないため、財産をしっかりと調べ、慎重に判断しましょう。
まとめ
相続放棄は、借金や負債を引き継がないための有効な手段ですが、期限内に正しい手続きを行うことが重要です。
また、他の相続人に負担がかかるケースもあるため、事前にしっかりと話し合いましょう。 「手続きに不安がある」「専門家に相談したい」という方は、弁護士や司法書士に相談するのもおすすめです。